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8話_恐怖

 …そうか。私はあれから気絶したのか。

 …にしてもこの赤い血で染まった世界は黒い血で満ちた食堂によく似ていた。


 しばらくすると私は気が付く。

 足がしっかりと動いたのだ。

 腹の痙攣もおさまっている。

「流石にこの世界にはあの化け物…。いや、邪慈子は現れないか。」


 私の声が聞こえる。


 別にこの世界に私が2人いてもう1人の自分が、私に話しかけてるわけではない。


 ただ、自分の夢の中で自分が声を出せる、ということに驚いたのだ。

 以前見た夢では一言も口に出さなかったし、話せること事態知らなかったし考えなかった。


 とにかく今は先に進もう。


 私はそう、心の中でつぶやく。


 歩き続けないと足元から【恐怖】が沸いてくる。


 人の気配は全く感じなかったが、なんとなく目線を感じ辺りを見回してみる。

 しかし案の定、誰もいない。


 いつの間にか自分の息が荒くなっているのを感じる。


 もう3日は何も口にしないでただ止まることなくひたすら歩いている。

 どのくらい進んだのだろう。百キロは軽く超えているはずだ。


 それなのにまだこの世界が続く。


 全く、いつになったらこの世界が終わるんだ。


 私は心の中でそう叫ぶ。


 しかしその声を聞いてくれる人もいなければ聞こえる人もいなかった。

 この世界には私以外の人間はいなかった。


 怖い

 怖い!

 怖い!!

 怖い!!!


 【恐怖】


 この2文字が私の頭を荒らす。

 消える事はない。

 

 すると、金属がお互いに交ざりあう音が聞こえた。


 ちりっ、と光が見える。

 火花であろうか?


 でも確かにそこに人の気配を私は感じた。


 惇?竜であろうか、それとも楓?

 いや、この際、誰でもいい。

 とにかくあの人達に話をきいて・・・み・・・。


「あ、起きた」


 ・・・あれ?ここは?


「柊さん!起きました。来てください!」


 目の前がぼやけて景色が見れない。


 私は辺りを確認しようとあやふやに手を挙げてみた。


 私の手にはとても長く、細い物がスルッとすり抜けていった。


 ばんやりと見えなかった景色が、はっきりと見え始めた。


 目の前には黒髪のロングヘアの少女がいる。

 その髪の黒さはとても美しかった。

 ただ一つ、はっきりと言えるのは、この髪の黒さと邪慈子じゃじしという化け物の黒い体液の色は全く別のものだった。同じ黒とは思えないほどだ。


 私は立ち上がり、命を救ってくれたことに感謝しようとした。


 しかし、布団の外はとても寒く足の親指をそとに出した瞬間身震いした。

 とても布団から出る気などしない。


 ふと、気づけばここは、以前私が目覚めた。私の部屋ではなかった。


 やはり私は無理して立ち上がることを決める。

 自分の部屋で無いのに、じっくり寝てなどいられなかった。

 私は、まずは、体を起こす。


「あ、瑠璃さん!起きたんですね。よかった。」


 突然の柊の声に体を振るわせた。


「ああ、そういえば彼女は、西・・・」


 黒髪の少女はとっさに柊の口を塞ぐ。『彼女』とは黒髪の少女のことを指していたらしい。


「ね、あなた竜さんと知り合い?」

「ええ、まぁ。竜って西村竜って・・・人ぉ・・・」


 私は語尾をにごらせた。竜の苗字がなかなか浮かび上がらずに少々悩んでいたのだ。


「そう、やっぱり知っているんだ。」


 ほ、よかった。竜の名前を間違えなくて本当によかった。


「・・・私は西村馨にしむらかおるって言うの。竜さんと苗字は同じだけどあの人とは知り合いってだけで全く関係ないからね!無縁よ!わかった?」


 馨は私に強くネンを押す。

 私はそれに頷くことしかできなかった。

 それしかさせてもらえなかったのだ。


 あの必死な馨の姿に、私は馨と、竜が無関係とは、とてもじゃないが、思えなかった。


「そういえばあなたの名前は?」


 ・・・私の名前?

 え・・・と、なんだったけ?

 瑠璃っていってたよな。るり、るり、るり、るり、るり、るり、るり、るり・・・んー?


「馨さん、起きたばかりの人が無理に話させようとしないでくださいね。」


 柊・・・。一応は感謝するが、私は普通に話せるよ。どうせなら君が私の自己紹介をしてくれよ。


「でも名前は知るべきですね。瑠璃さん、話せますか?」


 はい、話せます。しかし名前は言えません。名前、忘れましたから。


「え・・・と、この人の名前は椎名瑠璃さんです、新しく三番隊で働くことになりました。ナンバーは81です」


 ナイスだ!柊。感謝する!そうだ、『椎名』だ。椎名瑠璃だ。思い出したぞ、しかし、柊の名前を忘れてしまった。・・・まぁいいか。


「え?」


 馨は柊の声が聞き取れなかったのか、何?と柊に耳を傾けた。


「椎名瑠璃さんです」


 馨の顔色がみるみる変わった。


「椎名?」


 馨は再度私の名前を確かめる。そして柊と私は頷く。


「ちょっと、漢字で書いてもらえますか?」


 柊は、馨の焦りようを不思議に思いつつ、私の名前を漢字で書いた。


 馨はその漢字を見て、すでに青白い顔がもっと青白く変わっていく。


 何かあったのだろうか?


 馨は柊の顔をじっと見つめる。

 どうやら馨は柊にしばらくの間出て行ってほしいと願ったようだ。

 柊はそれに気づき、部屋を後にした。


 しばらく、重たい空気が周囲を包んでいた。


 それを振り切ろうと声をだそうとするが、話す内容が思いつかない。


 すると、馨が私をみて、口を開けた。その言葉の内容は少ないが、かなり私を焦らせた。

 その内容とは・・・。


「あなたは・・・。森神ですね?」


 私は戸惑いの色を隠せずに馨を見ていた。

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