殺人鬼サンタ
仕事が忙しくて久しぶりに短編を書いてみました。
内容は雑な部分が多いかもしれません。
クリスマスイブの真夜中。
オレはこの日、一人の命を奪った………。
クリスマスなんて家族と過ごしたり、男女が乳繰りあう大嫌いな日だ。
そんなムカムカする日は殺人するのが楽しい。
もちろん、殺人と言ってもオレは正義の味方として殺人するんだ。
悪人をぶっ殺し、苦しんでるやつを助ける。
今まで殺してきた人間は数え切れないほどだが、奴らの顔は全員覚えている。
怯えた顔、怒り狂う顔、精神がおかしくなって笑った顔、泣きじゃくる顔。
今までそんな顔を何度も見てきたぐらい飽きていたその時、オレは初めて見た死に顔を目にする。
彼はまるで何かから解放されたかの様な幸せそうな顔をしながら死んでいる。
服装はクリスマスの定番のサンタのコスプレか。
入った家屋にいきなり後ろに現れたからびっくりして殺してしまったが、まさか父親だったか。
それは済まない事をしたかもしれないな。
オレは子供の居る家での殺しは自分の信条に反する事だからなぁ。
まあ、とりあえずコイツの手にあるプレゼントを取り上げ、子供の場所に届けよう。
オレは綺麗にラッピングされたプレゼントの箱を掴み、子供部屋へと向かった。
オレは子供部屋を見つけると、音を立てずに部屋に入り、プレゼントを枕元に置いておく。
すると子供が突然目を覚ます。
「…………ん?サンタさん?」
ヤバいと思ったオレはすぐにサンタのモノマネをする。
「ホッホッホッ、ワシはサンタだよ。君の家にもプレゼントを持って来てあげたよ」
「ホントにサンタさんだ!」
「しっ!静かに!!親には内緒で来たから。とりあえずワシは帰るから良い子はゆっくり寝てな」
「はーい」
オレは静かに部屋から去ると、急いで死体のある部屋へと向かう。
オレは証拠隠滅で今までの殺人はバレて来なかったんだからな。
そして部屋に着いた瞬間、オレは目を疑った。
その死体が綺麗さっぱり無くなっていた事に………。
「う、嘘だろ!?まさか生きていやがったのか!!?」
だが何かおかしい。
あまりにも綺麗過ぎる
もし逃げたのなら、床に血痕や血溜りがあるはず。
振り返った時の首の頸動脈とトドメとして腹辺りにナイフで一撃を食らわせているから出血多量で死んだと思ったからな。
とりあえず生きてるなら通報されるかもしれない。
オレはそう思って急いでその家から出ていった。
次の日の朝。
オレは会社に出勤する為に、支度をする。
裏では確かに殺人鬼かもしれないが、オレは普通の会社員、営業マンだ。
オレは髭を剃って、歯を磨き、朝食を食べて、そして会社に向かう。
いつもは極力目立たないように過ごしているが、何故か今日はこちらへの視線が目立つ………。
「先輩!おはようございます!!」
すると部下が後ろからこちらに向かって走ってくる。
「朝から元気だな、お前は………」
オレは呆れながら後ろを振り向くと、その部下は目を丸くし、口を開く。
「あ、えっと先輩ですよね?」
「ああ、それがどうした」
「せ先輩、その髭どうしたんですか………?」
「髭だァ?」
オレは部下にそう言われて顎を触るとフワフワした髭が顎から生えていた。
「は?」
いやいやいや、今朝髭を剃ったばかりだぞ?
なんでこんなモサモサな髭が生えるんだよ!?
しかも、白ッ!
まるでサンタみてぇな髭じゃねぇか!!
「先輩、そんな髭じゃあ今日の商談無理じゃないっすか?」
「………そうだな、部長に連絡する。今日は休むって」
「休む!?コンビニで髭剃り買ってきたらいいじゃないっすか?」
「今朝髭剃ったんだよ!とりあえずオレは帰るからな!」
「あっ、先輩………まったく」
オレは風邪と偽って、会社を休んだ。
そして急いで家に帰るが、何故か身体が重い。
疲れているとかではなく、身体に重りが付いたかの様な重たさだ。
オレは家に着くと、鏡の前に立つ。
すると、オレの身体がまるでオレでは無い様な身体と化していた。
白くフワフワした長いヒゲ、スーツがパツパツになるほどのだらしない中年太りの様な膨れた腹。
「これが……オレ!?」
オレは自分の姿が信じられなくて、その場で気絶しぶっ倒れる。
目を覚まし、時計を見ると数時間が過ぎていた。
鏡を見てもやはり何も変わってない………。
「これは、完全にサンタみてぇな見た目じゃねぇか………勘弁してくれよ……………」
鏡の前で落ち込んでいると、インターホンの音が部屋に鳴り響く。
オレはゆっくりと玄関に向かうと、一人の外国人の男が立っている。
「誰だよ、今それどころじゃねぇんだよ。帰ってくれ!」
オレはイライラしながらそう叫ぶと、その外国人は笑顔で話し始める。
「今、貴方の見た目が変わった様なのでそれを確認しに参りました」
「なんだと!?」
オレはすぐに扉を開け、その外国人の胸ぐらを掴む。
「教えろ!オレのこの見た目を治す方法をよ!!」
「残念ながらそれは出来ません、私はそんなことの為に派遣されたのではありませんから………」
「ふ、ふざけるな!じゃあてめぇは一体何の為に来たんだよ!!」
「仕事を誘う為です、まあ拒否権はありませんけどね?」
拒否権が無いってどういう事だよ……ふざけんじゃねぇよ!
「とりあえず眠って下さい」
そう言われた瞬間、首元に何かを突き刺す。
オレは首を両手で抑えたが、力が失うかの様に足から崩れ、そして床に倒れた瞬間、オレは再び気を失ってしまった。
目を覚ますと寒くて薄暗い倉庫の中でオレは木製の椅子に両手と身体を縛り付けられている。
「ここはどこだよ!早く誰か解けよ!!」
すると一人の男がやって来た。
あの時の外国人だ。
「おやおや、お目覚めですか?」
「テメェ、何がお目覚めですか?だ!早く縄を解けこの野郎!」
その外国人は落ち着かせようと、オレの身体を押さえるが、コイツ、
強いぞ!?
「まあまあまあ、落ち着いて下さい。我々は貴方にお仕事の依頼をしに来ました」
「はあ?仕事の依頼ってなんだよ!それよりも縄を解けェ!!」
「………とりあえず仕事内容をお伝えします。貴方にサンタクロースになって欲しいのです」
「……………今なんて???」
「ですから、貴方様にサンタになって欲しいのですよ」
俺は耳を疑った。
このオレがサンタだと?
あまりにも馬鹿馬鹿しい………。
「ハハハ、サンタなんて居る訳ないだろ?お前頭大丈夫か??」
「そんな事を言ってるからサンタは来ないのですよ。サンタがやって来る家は極少数の良い子で、大半の家には来ないんですよ」
「………あっそ、んでそのサンタの仕事は拒否出来るのか?」
「貴方には拒否権なんて無いのですよ、何故なら貴方はサンタを殺したんですから」
サンタを殺した………?
そりゃいつの話だ………って、あの昨夜の家に居た赤い服の野郎か!?
「あ、あれは事故だ!俺は知らねぇぞ!!」
「ですが、神は貴方を選んだのですよ。現に貴方の身体に変化が見られる、そうでしょう?」
変化ってこのモジャモジャの髭と中年太りの腹か?
確かに信じられない………。
「………本当にオレはサンタに選ばれたのか?」
「はい、ですから貴方には拒否権はありません」
「それはもう分かった………信じられないが、オレはこんな姿で会社には出勤出来ない。ここで雇ってくれるなら働いてやるよ」
「………そ、それは良かったです!多分クリスマスシーズンを除いて暇ではありますが、衣食住と給与は世界一のホワイトだと約束します。では、最後に我々からの大事な約束です。『お客様からの願望は絶対』です」
「そりゃ、サンタは子供が求めるものを与えないといけないからな」
「はい!あ、申し遅れました。私、営業エルフのロキと申します」
エルフってあのトラッ……いやいや、あの架空の種族ってやつか?
確かに言われてみれば髪も長いし、耳もとんがっている。
「エルフってあの異世界とかに居るエルフか?」
「はい、あのエルフでございます。我々ははるか昔、人間に迫害されて北の大地にまでやってきましたが、ここまでの間に逃亡を手助けした人間に恩返しをする事が我々のクリスマスプレゼントの文化の始まりです」
「そうなのか、それは知らなかった………」
「まあ、そんな話は置いておいて、ようこそ新しいサンタクロース様!子供たちに素晴らしい夢を与えましょう!」
そうロキは不気味な笑みを浮かべながらこちらを見ている。
オレは嫌な予感がしたが、サンタクロースだ。
有り得ないだろう。
ーーー1年後
なーにががホワイトだよ。
一日中仕事している状況で頭がおかしくなるぞコレ。
子供の部屋を一日中監視し、悪い子はブラックリストで記録。
外交官からの謁見と寄付を貰う式典に参加し、おもちゃの生産を管理、ゲーム機会社への営業や買取など、前の仕事の方が完全に楽だったぞ。
まあ、配達は大半が下請けで自分はその国での最優秀な良い子にプレゼントを送るだけの簡単な仕事かな。
「サンタクロース様、こちらが今回配達するリストとプレゼント袋です」
そうロキから渡されたプレゼント袋は異様に軽く、よく見るあのデカい袋がサンタの特徴なのに………。
「本当にこれで間違いないのか?」
「はい、問題ありません。なんなら逆に膨らませる方なので」
「は?」
「とりあえず早く向かって下さい!遅れますよ!!」
オレはそう急かされ、赤い鼻のトナカイの空飛ぶソリに乗る。
「サンタさん、今年も大変な日が来ましたね」
赤い鼻のルドルフはそうため息を吐きながら、話しかけてくる。
「プレゼント渡すだけでしょ?あとは用意された食べ物を手に取る。フランスはワイン、アメリカはミルクとクッキーを、簡単だね」
「おや?サンタさん。プレゼントの中身をご存知無いのですか?」
「へ?中身??」
中身ってどういう事だ?
リストだって普通に問題ないはず。
そう思いながらリストを開くと、中身は衝撃的な内容だった。
子供の名前や住所などは普通のリストとは変わらないが、プレゼント内容は明らかに異様である。
刺殺、撲殺、溺死、凍死、落下死など………これは完全に。
「殺人リストじゃないか!なんでこんなものが………」
「その子供が親や家族、友達、知り合いなどに理不尽な恨みや虐待、イジメを受けている人達です。そんな彼等が望んだのはその加害者への殺人を望んでいるならサンタは彼等の要望を叶えてあげるのです」
「そんな………」
「サンタさんには大変かもしれませんが、頑張りましょうね!」
そんな………殺人を合法に出来るなんて!
なんと素晴らしいんだ!!
しかも相手から喜ばれるなら本望、頑張れるねぇ!
「じゃあプレゼント袋の中にあるのは?」
「武器類です。あとはその袋に死体を入れて運ぶのです。そしてサンタの服が赤いのは血が飛んでも気付かれないようにするものです」
サンタってある意味怖いなぁ………
とりあえず殺人が楽しめるならオレには嬉しい限りだぜ………
「ホッホッホ!さあ、プレゼントの時間だ!行くぞ、ルドルフ!!」
「は、はい!サンタさん」
ルドルフにそう言うと、オレはウキウキに合法な殺人をしに行く。
クリスマス、なんて素晴らしい日なんだ!
PVが高ければ長編を書く予定です。