表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
92/142

3ー16・三人の腕(空の欠片3)

 自分たちの船を閉じ込めた隔絶された空間。それのコントロールコンピューターを探すためには、ミズガラクタ号からおりる必要があった。

 ルカは元の宇宙から閉ざされている空間と理解したわけだが、実際のところは単にそれだけでなく、船が動くことができる時空経路もかなり操作されている。ようするに自由に動くことができないようにされていた。少なくとも、目指すべきコンピューターにたどり着くことができないようにされているだろう。だがそのスケールの大きさを捕捉するための代償として、ある程度以上小さなものに関しては大した干渉ができないことは、すぐにわかった。

 つまり、ヒトそれぞれくらいなら、その中で自由に動くことができる。

 だがもちろん敵(?)も、小さなものに対して完全に無防備のままでよしとしているわけではない。まず空間の全範囲に、緑液系にも適応が難しいp(ロー)パターン化学物質(大災害以前の元素含む化合物)が充満させられているから、事前調整も不可能で、携帯生命環境(ライフパック)が必須。


 ジオ生命が、自分にとって有害な状況の中でも活動できるようにしてくれるライフパックという道具は、"世界樹"では、多くの研究に役立つものとして重宝されている。それ自体にも様々な付属特殊機能が開発されていて、この場合はむしろ好都合かもしれなかった。

 ようするに敵は、その環境を(内部に存在するコントロールコンピューターを探そうとする)探索者の弱体化のために用意したのだろうが、そうはならないどころか、部分によっては強化となるのである。


 実質的に彼女自身がいない間の指揮をリーザに任されたルカは、探索チームを3つに分けることにした。それぞれ、ザラとルカ、アーシェとエクエスとテレーゼ、エルミィとアイヤナとフラッデというメンバー構成。いずれのチームも、どこでどのように存在してるかわからないコントロールコンピューターをしっかりと見分け、そしてそれを適切に扱う役を任された技術者(ザラ、アーシェ、エルミィ)と、予想されるセキュリティの攻撃を退けるための護衛係。

 他の者たちは船に残って、探索チームのサポート。


ーー


 ミズガラクタ号が補足されて、その巨大な隔絶空間に閉じ込められてしまう前にいたのは、銀河フィラメント"空の欠片"の、いくつもの一族がそれぞれに管理する小世界群のどこにも含まれていない空洞領域。しかしそうとは思えないほど、その外に広がる光景は視覚領域にある物質で溢れていた。

「みんな。空間の広さは、予測できてた程度ではあるけど、その中でもかなり狭い方だと思う。多分、物質の密集度を高めるためだと思う。だからさがしもの、コントロールコンピューターは、どこかに紛れ込ませることで隠してるかも」

〔「はい」〕

〔「了解じゃ」〕

〔「わかった」〕

 スブレットの言葉に、それぞれ返事してくるザラ、アーシェ、エルミィ。


p(ロー)の化合物ばかりかな」

 ルカたちそれぞれの様子こそ直接見れないが、船から見た、それぞれのチームの者たちの方向と距離なら確認できる。ミーケ、スブレット、メリシア、ミルル、ミシェリの5人は、それらの情報を、文字情報とともに立体映像で表現していたモニターを見ていたが、リセノラは大きなゴーグルのようなものを付けて、あさっての方向を向いていた。

「わりと重要かも」と、外部を確認するためのものらしいが、彼女以外の者には何も見ることができないだろうというそのゴーグルのような装置を外して、リセノラもミーケたちの見ていたモニターに目を移す。

「何が? ここの物質?」

 自身も、ミーケたちとも出会う以前から、そもそもいくらか関心があって、pパターン物質のことを学んでいたスブレットだが、少なくとも今、得られている情報からして、特にそのような物質群と、それらを維持している隔絶空間内の環境に関して、それほど異常さを感じたり、興味深いようなことはなかった。

「きみの、非緑液系の関係? それとも《ルビリア》の?」

 そういうことではないかと推測したミーケ。

「わりと当たり。《ルビリア》は、本来わたしみたいな旧式のジオ系、エルディクたちがそれを用意した時には、緑液の知識も少なかったろうから当然だろうけど。とにかくあそこは古いジオ系のための領域で、実のところね、あなたたちには関係なかったのだろうけど、わたしにとってはとても優れた、恒久的なサポートがいくつもあったの。例えば私の目でも、視覚が効きにくい場所で普通に見ることができたりとかできるように」


 実のところ、エクエス以外は、リセノラに聞くまで当たり前すぎて考えもしなかったことなのだが、緑液系を有するヒトは、そうでない、つまりリセノラのような大災害以前の化学構成のヒトに比べて、その視覚能力がカバーできる光学的な強弱のスペクトル範囲がかなり広い。ようするに、今のヒト(というかリセノラを除く全員)は、リセノラからすると、相対的にかなりの暗闇でも物をよく見れる。


「だけどここはそういうつくりにはなってない。どう考えても大災害の後の誰かが用意したもの。まあそれも当たり前の事なんだけどね。多分現存する一番昔のジオ系がエクエスで、すでに大災害後な生まれの訳だし。けど」

 だからこそ、そのことを最も強く実感できるだろうリセノラは、そのことの奇妙さをよく認識できた。

「これ、pパターンはわたしにとってももともと関心事で、わたしは、"世界樹あなたたちのせかい")でのこれの研究成果も結構知ってる。ここは多分あなたたちが実現できたことない空間場と思う。昔の〈ジオ〉とは違う、けど昔の〈ジオ〉と物質システム的にかなり近いもの」

 少なくとも安定物質リストを用意して比較したとしたら、現在よりもはるかに、昔、つまり大災害前の方が項目重複が多いと考えられる。

「みんな、というか、ザラ、エルミィ、エクエス」

 自分の疑問に答えられるだろうと判断した3人の名前を、リセノラは呼んだ。

「実際、あなたたちの周囲の環境はどう? 確かめられる? そこが今どのくらい物質環境的に以前に近いと考えられるか」

〔「確かに安定したp物質は多く思う」〕

〔「今より昔の方が近い性質が多いことは間違いないと思う」〕

 すぐに返ってきたエクエスとエルミィの返答。

 ただエクエスはさらに付け加えた。

〔「だがこれは明らかに副次的効果だぞ、探索者に対するセキュリティの。それに表面的にはともかく本質的に昔の〈ジオ〉にここが近いかと言うとおれにはかなり疑問だ。《ルビリア》でミーケたちは平気だったろう。大災害以前の〈ジオ〉の環境は、少なくとも分子個体が大きく安定できるような、ようはここみたいなところが緑液系に攻撃的だったはずがない。大災害の時代、たとえ宇宙領域全体から見てどれだけ縮小してようが、それでもまだ大きいといえる時間と人数が共存していた時が長くあったんだから」〕

「あまい、肝心なのはここから」

 そしてリセノラは笑みを浮かべ、言葉の爆弾を落とした。

「あなたのさ、『水文学会』の研究。水が存在しない世界ってほとんどありえないんでしょう。でも、pパターンの多くが安定してる隔絶空間で、今そこでは水がないんじゃない?」

〔「その通りですね。ここには水の素材である水素と酸素分子が見られません」〕

 ザラは、実のところそこまで聞くまでもなく、同じ疑問を浮かべていた。


ーー


「それが、でも何か意味が?」

 荒れ地のような光景を進みながら、小さな山からむしり取った岩石を手に、指輪コンピューターを使って何か計算していたザラの隣で、ルカはいまいちリセノラたちが何に驚いてるのかがわからない。

 ザラは、ライフパックを搭載した気密性の高い防護服みたいなのを着ているが、ルカは特に普段と違うような服装ではない。戦闘時に、戦う役割であるルカがなるべく自由に動けるように彼の分のライフパックを、同調モードという(ようするに遠距離操作)機能を利用して、ザラが持っているから。

「もう少ししっかりと考える必要があるでしょうが、今の時点でもいくつかの可能性が出てきてます。つまり」


 そしてザラは、リセノラも重要と考えた理由である、そのいくつかの可能性を順に説明した。

 まず、おそらくは"世界樹"よりも、隔絶された系に何らかの環境を再現する技術に関してかなり上である《ヴァルキュス》が、緑液系であろう敵に対して用意したのが(見いだしたのが)、pパターンの多くが安定してはいるが、やはり水は安定しない環境であったことの意味。

「かなり特異的で、おそらく1番ありえないような環境です。似たパターンがない。つまりここは最後に、発見されたものな可能性が高いです。緑液系の敵に対する有効な場として」

 そのことはそのまま、緑液系に対し最大に攻撃的な環境がそれであることを示唆している。

「この環境は、大災害以前以後どちらも含めた全てのわたしたちの時間の中で、おそらくはほとんど作られた事がないです。《ヴァルキュス》のこれが初めてであっても、わたしは驚きません」

〔「少なくとも、大災害前には理論上にすらなかったはずだ。メリセデル、アルヘン生物がそれをもたらすまで、あるいは開発してみせるまで、スフィア粒子を知ってる者がいなかったなら。水が存在しないpパターン場、こんなものを考えれるくらいに実用的な基底物質変換理論があったなら」〕

 エクエスがはさんできた(意味があるのかわりと謎な)補足。

「しかしアルヘン生物は、作っていたかはともかくとして、知っていたのでしょう。今わたしたちが知っていることからして、〈アルヘン〉は水のある宇宙領域だったはずですから、ここが〈アルヘン〉の本来の環境というわけではないはず。ただ、知っていたかどうかはあまり問題ではないかもしれません。重要なのは、緑液系は珍しい環境にこそもっとも弱い。逆に非常に多くの環境に適応できるようなものであるということです。昔のジオ生物の記録、ネーデ生物やロキリナ生物の現状。それにアルヘン生物やエルレード生物が、おそらくこの宇宙で最もありふれてはいても、結局は代用品を作れるはずの水という物質が失われることが、守ろうとしていた生物群自体の破滅に繋がるかもしれないと考えていたこと。そして錬金術師、ウンディーネ、ミーケが思いだしたこと」

 これまでの多くの情報は示している。

「アルヘン生物。それより大災害の時を知っていた誰かと言うべきかもしれません。とにかくわたしたちが意図的に強くされたことは、もうかなり間違いないことでしょうが、今やその方向性もかなりはっきりしてきたかもしれません」

〔「緑液を持たない身のわたしとしては、きっとあなたたちよりも強く実感できてる。もうかなり確実なことだと思う、アルヘン生物も、わたしたちが他の宇宙領域に向かうことを望んでたこと」〕

〔「改造のしやすさも、いろいろな環境に対応するためなのかも」〕

 唯一の赤い血のリセノラに続いて、大災害後の〈ジオ〉で造られたものであるアイヤナもそんなふうに言った。

〔「偶然とは思えない。本当は生き残るためじゃなく、やっぱり強くなるためにわたしたちは改造されたのかも。あ、いえ、あなたたちが」〕

 簡単に結論をまとめたリセノラ。

「それに」

 持っていた石を捨てて、また別のものを拾ったザラ。

「スブレット、ちょっとサンプルを送ります」


ーー


 ミーケたち側。

「へ、はい」

 理由はわからなかったが、とりあえず「送る」と言われたので、送られてきた石を、なるべくその状態を壊さないように、特殊環境を発生させている透明なケースとともに、そこに出現させたスブレット。

〔「ちょっと、ケイシャたちを」〕

「ん、わかった」

 ザラの要望通り、ネーデ生物であるケイシャと通信を繋げたミーケ。

〔「ケイシャ。聞きたいのですが、昔の、大災害前のジオ宇宙のこと、どのくらい覚えてますか? どれくらいかデータはありますか?」〕

 すぐにザラは聞く。

〔「何か聞きたいことが?」〕とケイシャ。

〔「そこの石のい化学組成を見てくれません。それは、ありえるんですか? 要素質量が少なすぎでないかと思います」〕

〔「〈ジオ〉の物質、アミアルン」〕

〔「悪いけど、おれにも何とも言えない。以前の記録は断片的すぎて参考にほとんどならないし、実際問題、以前の物質はすべて失われているから、核力の挙動に関しては確認しようもないことが多すぎる」〕

 そもそも話を聞いていたのか、即座にその情報が伝えられたのかは謎だが、立体映像で姿を見せるや、そう告げたアミアルン。

〔「スブレット」〕

 その時、急に割り込んできたのはエクエス。


ーー


「その石をすぐこっちに送ってくれ。維持装置はいらない。環境的にはザラたちの方と、ここも変わらないはずだから」

「エクエス、でも石とかならこ」

「はやく」

 テレーゼの疑問も続けさせず、叫んだエクエス。

〔「はい」〕と、スブレットもさっさとそれを送ってきた。

「これは」

 すぐに、見た目は球体の半分が半透明な解析装置で、それを調べるエクエス。

「ザラ、ルカ。今すぐ」

 しかし気づくのが遅すぎた。


ーー


「ザラ」

 目にも止まらぬ速度で、ザラがまた手にしていた欠片を取って、蹴飛ばしたルカ。

 それは攻撃の第一弾だった。その欠片から伸びて、蹴飛ばされてなかったとしたら、ザラの体を貫いていたろう針が。

「や……あ……ああ」

 ザラにはあまり聞き取れもしなかった、叫び声を発しながら、さらに四方八方から2人のどちらかめがけて飛んでくる石を、ルカはおそらく、直接的には触れないで、動きによって発生させた周囲大気の加速による衝撃波で、それらを自分たちに近づけさせないようにしていた。


「エクエス、いったい、どうしたら」

 自分にはまったくついていけない速度で、自分のことを必死で守ってくれてる少年の助けにもなれず、とにかく何かに気づいたらしい仲間に助けを求めるザラ。

〔「すまん、それも忘れてたんだ。特殊な生物だ。水のないp物質の時点で気づくべきだった。そんなもの普通はありえないんだから。ありえるとしたらそれを維持する生物系があるか」〕

 エクエスも、かなり焦っているのが、恐ろしかった。

〔「ここは随分時間をかけて作られた、閉鎖された系だ。最初から意図していたわけではなかったと思うが、とにかくこの特殊環境に適応したのでなく、この特殊環境のために、この特殊環境を用意させた生物が。いや、生物というか、システムと言った方がこの場合は近い。心層空間も多分ない。つまり、特殊生物というか特殊な機械というか」〕

「なんとかする方法を教えてください」

〔「理屈はどうでもいいから何とかしてあげなよ」〕

 ザラと、エクエスの方にいるテレーゼの声が重なる。

〔「壊すしかない。どこか特定の場所か、全部か」〕

「スブレット、わたしたちをそっちに戻せますか」

〔「もう戻そうとしてるけど、けど転送通路が」〕

 スブレットはもう涙声。

〔「逃がさないように。おそらくコントロールコンピューターの近くで守ってたんだろう。《ヴァルキュス》の妨害技術があるし」〕と、そこまでエクエスが言った時。


「見切った」

 どこかでルカはそう言った。ザラにはそう聞こえた。そして実際に彼はそう言っていた。

「と思ったけど」

 急に、石群の攻撃が止んだらしい時、ルカはあちこちに細かい傷をおっていただけじゃなく、左手の肘から下がなく、左目も潰れたのか閉じていた。

「エクエス、今攻撃を止めたのはなぜ? 大した量は破壊してはいないけど、もう重要機構(メイン)を壊せたとか」

 そうであってほしい気持ちがよく伝わってくるような、ルカの早口。

〔「一番考えられる可能性としては解析中だ。多分、おまえの動きを、次は確実に止めれるように」〕

 エクエスにも、そのどうしようもない事実を正直に言うしかなかった。

「ザラ。そういう事なら」

 さすがに、ミーケたちと出会う以前、長い間孤独で残酷な戦いを経験してきたことだけのことはある。こんな時でも無理して見せる彼の笑顔は、ザラにはそれほどの無理には見えなかった。

「ルカ、だめ」

 その彼が何を言おうとしてるのか、言われるまでもなくザラにも予想つく。

「次動き出した時でもさ、まだ自信はある。ぼくが、本気で捨て身で、粒子加速法を使ったら、時間なら稼げる。こいつはひきつけるから、そのうちにおまえは」〕

「だめですルカ、そんなの」

〔「ザラ」〕と、その時に聞こえてきたミーケの声。

「ミーケ、どうしよう」

 そう、別に一か八かでもない。彼は"世界樹"の者の中では、リーザと生きてきた時間が1番長いし、そして彼もまた、pパターン物質を研究してきた科学者だ。


ーー


「ザラ、落ち着け。こっちで必ず助けてやる」

 そう言いながら、いつもはザラが使っているシミュレーションソフトを起動して、何か物質と物質がぶつかった時の反応のようなシュミレーションを、同時進行でいくつか繰り返していたミーケ。

「ミーケくん」とミシェリもかなり心配そうにする。

「でもミーケ、ほんとどうするの?」

 スブレットにもまだ見当つかなった。

「これを使う。この力」と、自分の手を見たミーケ。

「そ、そっか」

 リセノラはそれで、彼の考えていることが推測できたようだった。

「でもうまくいく。やれるの?」

 メリシアも、すでに気づいていた。

「確実にできる。ただ問題は、おれの体はもとは緑液系だから」

「そっか、水」

 スブレットも気づく。同時に問題点にも。

「でもそれをやろうとしても、安定してる時間が短すぎて、減速させる通り道がきっと」

 だが、とても幸運と言うべきか、解決できる人物がまさしく1人いる。

「「テレーゼ」」と、完全に重なったスブレットとメリシアの声。

〔「わたし?」〕と、名前を呼ばれた彼女は、いったいどういうことなのかまったくわかっていない。

 そしてミーケは言った。

「テレーゼ、痛いとおもうけど、それはごめん。きみの腕、もらう」


ーー


「腕?」

「ああと、テレーゼ、つまり腕だけもらうてことだな、手袋は外して、左手上げてじっとしてろ、その低温が必要なんだ」

 もう、エクエスもミーケの考えがわかっていた。

「わしにもどういうことかわからんのじゃが」

 まだミーケの水を操る能力について聞いていなかったから、ある意味でテレーゼ以上に意味がわかっていなったアーシェ。

「後で説明する。ただ、お宅から来たリーザほどじゃないが、おれたちの方にもそれなりに化物がいるってことだ」

 実のところエクエスは、特別な誰かを化物と表現するのが好きだった。


ーー


「みんな、いけるの?」と、まだまだ緊張感はしっかり維持しているルカ。

〔「ルカ、こっちが攻撃をするから、その照準ポイント送る」〕とミーケ。

〔「1秒でいい、そこで止められる?」〕

「1秒、いける」

 スブレットの問いに、ルカはすぐに頷く。

〔「動き出した瞬間から後、敵が動かせる要素、だから石の1つでもあればいい」〕

「うん」

 ミーケの言葉にも頷き、まだ肘より下が残っている右手の拳を握りしめるルカ。

「ルカ、あの、がんばってください」

 まだ完全に安心できるわけではないが、しかしザラも、今回自分がまったく役に立てなかったということを気にするくらいの余裕はできていた。


 そして、石群がまた動き始めて、ほんの少しだけ後。

 ザラには何も見えなかった。ただ、気づいたらいくつかの石の塊がルカに足蹴にされていた。

「ル」

 その名を呼ぶまでもなかった。ただ言われなくても、ルカにはわかっていた。

 2つの腕がその塊と重なるように送られてきたのと同時に、そこから離れて、風圧でよろけそうになったザラの体を支えたルカ。

「ありがとうございます」

「う、うん」

 全然気にしていないようなザラだが、見た目的には同年代くらいに見える異性の彼女を、ほとんど抱きしめるようになったことが、少し恥ずかしいようだったルカ。


 そして、ミーケの計画通り。

 どんな環境においても、調整なしに直接そこに存在出来るはずのない物質が投入されれば、それは実質的に、全てを切り裂く障壁となる。

 ミーケは自分の腕に水を含ませて、それが敵の石群の破壊をするように、早い話が、自分の腕を有効な水爆弾へと改造した。ただ、ミーケの能力の発動時、そのための緑液の動きが非常に高い温度に繋がり、肝心の水が、無干渉時の運動自由性が高いためにコントロールがしにくい気体となり、個体である敵に到達させ溶け込ませることが、非常に難しいものになるかもしれなかった。そこで、必要な緑液系の動きを代用できるだけ、また別の特殊な理由で冷たいテレーゼの腕で代用し、液体としての水を必要な時間維持させたのだった。

 結果は、異質な組み合わせを強引に用意したための、崩壊的化学反応の連鎖により、石群、その特殊機械は一瞬の間にこの上なく壊れた。


「エクエス、さっき、コントロールコンピューターはすぐ近くにあるかもっていましたね」

 落ち着いたところで、ザラは聞いた。

〔「ああ、ほぼ間違いなく」〕


 そしてエクエスの予想通り、お目当てのそれは、もうすぐ近くにあった。


ーー


小宇宙卵(エッグス)を、破った、もう?」

 いくらかトゲがついたロケットみたいな時空間戦闘機のモニター、その名前通りに卵のような何かが消滅する映像を見ていたメイリィ。

「リーザ、あなたいつもいつも早すぎなのよ。わたしのこと、もう少しだけ待ってくれたらよかったのに」

 誰も聞いてないからひとりごと。怒っているよう言葉だが、その表情はかなり気遣わしげだった。

「あなたの友達くらい、わたしが守ってあげるのにさ。誰も死んでないよね、そういうのやだよ」

 まさにどうせ誰も聞いてないから、メイリィは素直に本音も口にした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ