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神々のガラクタ船 ーWater alchemist and the Worldtree’s landsー  作者: 猫隼
Ch1・宇宙から失われたもの
43/142

43・動物たちがいた頃(冷たい手の修道女9)

 リーザ。

 この名前は忘れないぞ。

 覚えたぞ。


 水の錬金術師ミーケ。

 だがほとんどのことを忘れている。

 それにたった1人。

 最後の……



 《虚無を歩く者》は、たとえもはや物質には干渉できずとも、自分だけが使える特殊な、そして人などには絶対に理解できないであろう方法で、いくつかの情報を得た。

 そしてそれから、ジオの宇宙を見るのを、またやめた。


ーー


「ん」

 目覚めた時、リーザはミズガラクタ号に連れ戻されていた。

 カルキレやテレーゼも含め、ワープで別れた時の全員そろってもいる。


「完全に眠りについてたわ。久々」

 しかしもう起き上がるのにも、何の支障もなかった。

「でも、ほんと信じられないよ、やっぱり凄いよ、リーザ」


 別に、何か変わった様子もないミーケの様子。


「さすがに無謀な戦いではあったけどね」

 正直なところ、リーザはとてもほっとしていた。

「エクエスさんのおかげよ、完全な作戦勝ちだった」

「いや、あれはおまえが強すぎたよ。人の一撃で、あそこまで徹底的に物質を破壊できるなんて、おれだって知らなかった。長く生きてても、まだまだわからないことがあるもんだ」

 そんなふうに言葉を返しはするものの、何か別のことを考えているようだったエクエス。


「リーザ」

 もうとりあえずは一件落着した雰囲気のミーケに比べ、結構落ち込んでいる様子だった、同じように気絶させられたルカ。


「ルカくん」

 リーザも彼に対しては、ばつが悪そうだった。


 当然といえば当然であろう。

 リーザは、覚悟を決めて一緒に戦いに臨もうという、彼の勇気も、プライドも、優しさも、すべてあっさり踏みにじったのだ。


「えっと、ぼく、足手まといだったよね、あんなんじゃ」


 落ち込む彼に、ミーケとザラは声をかけようとするも、結局やめて、リーザの方を見た。


「リーザ」

 落ち込む気持ちをがんばって振り払って、その場で一番幼い見た目の彼は決意を表明した。

「強くなりたい。リーザ、ぼく、どんなことだってするから、ぼくを強くしてほしい」

「うん」


 ルカのその、自分より小さな手と、自分の手を重ねて、リーザは続ける。

「約束する。あなたを強くしてあげる」


(ほんと、厄介なお二人様ですね)

 リーザとルカ、2人の様子に、嬉しそうではあるが、どこか複雑そうなミーケを横目で見て、ザラはそれで口元を緩ませる。


「ところで、やっと全員起きたわけだし、歴史のお勉強といくか」

 そんなふうに言って、いよいよ全て集まった、『水文学会』の記録レコードの断片3つをくっつき合わせて、1つにしたエクエス。


「それじゃ起動するぞ」

 当然、それを止める者などいない。


 それは文字情報だけという実にシンプルな記録だった。

 エクエスは、その場の全員のすぐ前に出現させたモニターに、それを表示させる。


 エクエスは歴史の勉強なんて言ったが、それはあながち間違っていないだろう。

 それは単に水に関する研究記録というより、ジオ族が水を失ってしまうまで歩んできた歴史記録の概要であった。

 そして、それはもはやこの宇宙に、この唯一の宇宙(ユニバース)の、他のどこにも残されていないだろう、文字通りに封印されていた記録。

 かつて最も愚かとされた、そしてその後は身勝手とされた、ずる賢きジオ族の視点での歴史。


ーー


 惑星《ジオ》。いわゆる《地球》に生命体が誕生してから、どれくらいの時間が経ってからだろうか。

 最初のフィラメント国家《フィデレテ》が建設された時代には、もう《地球》は記録データに残っているだけの遥か過去の存在。

 そして水は、この宇宙で最もありふれた物質であった。

 もうひとつ重要なこととして、この時代には、人工的でなく、人でない動物が豊富だったという。


 そもそも人とは、「ヒト型と呼ばれる基本設計で、一定以上の知能と言語能力を有し、人工的形質なしの遺伝子戦略生物」という定義に当てはまるジオ系生物にすぎない。

 意図的な操作なしに生じうる形体がヒト型のみである今では、信じ難いことではあるが、かつて多様性はジオ系生物の特徴の1つだったのである。


 《フィデレテ》は、それから後の多くの時代において、ずっと共通して、平和と自由の理想国家とされていた。それの建国者たちが、あの『ミュズル』、ジオの最大の悪魔たちの手の者だったという、エクエスたちの仮説は、事実ならとんだ皮肉である。


 『ミュズル』は、まだ(なぜそう呼ばれていたかはわからなかったが)暗黒時代と呼ばれていた最初の銀河系《アマノガワ》の時代の頃から存在していたという科学結社。

 かなり間違いない事として、彼らがかなりの期間、ジオ族を導く案内役となったこと。

 そしていつからか、もしかしたら最初からかもしれない。彼らの知的生物としての異質な欲望は、後には〈ジオ〉どころか、〈ネーデ〉、〈ワートグゥ〉、〈ロキリナ〉、いくつかの別の領域までも伸びることになる。


 フィデレテ建国の時から……

 ジオに生命が誕生してから、フィデレテまでより長い時間がまた経った。

 まだ正確な年代は不明だが、とにかく、この領域〈ジオ〉は、 果てから果てまでバラバラになってしまっていた。

 ずっと長い間団結を続けたのは《ミュズル》のみ。

 彼らによる第一次支配が始まったのは、かなり必然的であった。

 そしてジオ族の誰もまだ、この領域、この宇宙しか知らなかった。


 《ミュズル》の支配を終わらせたのは外部からの力だった。

 正確には隠されていた領域部分の存在。


 それも生命体だった。

 〈ジオ〉の領域にジオ族より前からいた、今の時代の知見的にも、かなり奇妙で、限りなく異常といえるような生命体。

 それはリリエンデラと呼ばれた。

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