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神々のガラクタ船 ーWater alchemist and the Worldtree’s landsー  作者: 猫隼
Ch1・宇宙から失われたもの
35/142

35・親善大使は表向き(冷たい手の修道女1)

 まさしくかなり唐突に、銀河フィラメント"世界樹"における最大国家となった《アズテア》。

 しかし、新しく得られた、《ルセドラ》と呼ばれていた領域に関しては、元々の国家領域から距離がありすぎるので、代理の副王が立てられることになる。

 開戦を決めた本人である、ザラの従姉シェアラは、最初ザラを推薦したが、当然彼女は断ったので、結局シェアラ自身が副王となった。


 そのシェアラの住まうことになった、人工惑星《ミルテール》に、ミーケたち、ミズガラクタ号の一行が招待されたのは、ルカが加わった時からちょうど1日後くらい。


 だだっ広い中に、いかにも趣味がいいというような、綺麗な星系や、豊かな自然のホログラム作品が飾られている。

 ザラと同じ黒髪だがそんなに似ている訳ではない、見かけの年代はやや上のシェアラは、部屋の奥の大層な椅子に座って待っていた。


「お姉様。お久しぶりです」

 その丁寧な口調はいつも通りではあるが、いつもよりも明らかに厳格な雰囲気のザラ。

 後ろについてきていた中に、スブレットとルカはいなかった。


 どっちにしてもこういう場は久々であろうに、実に優雅で上品な立ち振舞いに慣れたものである他2人の連れに比べ、自分で自分のぎこちなさもよくわかっているミーケ。


(やっぱりおれも船に残っとけばよかった)といくらか思うが、もうここまで来ては手遅れであろう。


 別に従姉は気にしないだろうとザラは言ったが、それでも堅苦しい礼儀などは知らないスブレットやルカは、宮殿たる惑星なんて、緊張しすぎるからと船に残ることにした。

 ミーケも似たようなものなので、一緒に残ろうとも考えたのだが、別に彼はスブレットほど引きこもり気質ではないし、ルカほどこの世界自体に慣れていないわけでもない。好奇心もあったし、軽い気持ちでついて行こうと思ったのだが、どうも上級貴族の作法というのは想像以上に多いようで、軽い気持ちで決断するべきではなかったと、後悔する羽目になったわけである。


「お久しぶり、ザラ。それで、あなたたちが噂の研究仲間さんたちですね。今回の件はお世話になりました。とっても感謝感謝」

 どういうわけだか、ザラよりも言葉遣いの砕けた正当王位継承者。


 それから椅子から立ち上がった彼女は、ザラたちのすぐ前まで来る。


「エクエスさんに、リーザちゃんに、で、あなたがミーケくんですね」

「は、はい」

 意外にゆるい印象のシェアラに対し、少なくとも表向きは、別に驚きとかも見せないエクエスとリーザに比べ、ちょっと混乱したようなミーケ。


「エクエスはともかく、ミーケやリーザのことも、もう知っているのですね。自己紹介はいらなそうですね」

 そこは少し不満そうであるザラ。

「まあね。ついでに言うならスブレットちゃんのことももう知ってるから」

 しかしどうやらさすがに、ルカのことまでは知らないようであったシェアラ。


「それでお姉様、ただ直接感謝を言いたいから呼んだわけではないのでしょう」


 ミーケたちは事前に聞いていたが、シェアラの母、つまり《アズテア》の現在の女王その人は、出生の関係もあって、ザラのことをあまりよく思っていない。そこでなんだかんだ野心高いシェアラも、母の機嫌取りのために、本当はそれなりに尊敬心すら抱いているザラと、表向きはあまり馴れ合わないようにしている。


「うん、それだけど、実はあなたたちにね……」


ーー


「わ、わたしたちが、《レダトロン》への親善大使に」

 ザラたちが船に持って帰ってきたシェアラの頼みを聞くや、最初にそれを聞いた時のミーケと同様、とてつもなく驚きながら、しかし相当に嬉しそうにもするスブレット。


 《レダトロン》は、"世界樹"では唯一、"聖霊界"のレトギナ教会本部と直接に繋がっている、《シーム》という銀河系の中心の惑星。

 熱心なレトギナ教信者であるミーケとスブレットにとっては、いつかは行きたかった憧れの地でもあるわけである。


「まあ、親善大使というのはあくまで表向きの話です」


 シェアラが、ザラたちに頼んだ本命の任務は、ここ最近、《シーム》に現れ、レトギナ教とは別の勢力として台頭している、不思議な力を使うらしい何者かたちに関する調査。


「彼らは、『水文学会』を名乗っているそうなんです」

 さらにザラは続ける。

「加えて、彼らが使う不思議な力というのは、物質の変換能力らしいんです」


 だからこそシェアラは、かつて存在した本当の、あるいは最初の『水文学会』の創立者であったエクエスと、水限定ではあるが物質に関する不思議な力を有しているミーケを仲間にしているザラに、今回の話を伝えたのだった。


「時期を考えると、ザラの研究を知った何者か、もしかしたら『学術委員会』の誰かが絡んでいる可能性もある。あのレコードのガセも、そいつらが関係してるかもな」

 エクエスがそう指摘する。


 そう、本来ミーケたちが探している3つのレコードの最後の1つ。

 《ルセドラ》の件が終わってから、ミーケたちはあらためて《ケルベル》で、隠されていたそれを見つけたのだが、 見事に高水準な偽物であったのである。

 おそらくは所有者であるラリーが、また別の場所へと持っていく際に、何かの目的で残したもの。

 だが、『水文学会』を名乗る怪しい連中がいるというのなら、そっちが関係してる可能性も、確かにあるだろう。


「まあ、どっちみち、そいつらのことを調べるのがいいでしょう。ちょうど手がかりもなくなったところなんですし」

 ザラの言葉に全員が頷く。


 そうして、一行は、レトギナの持つ惑星《レダトロン》へと向かうことになったのだった。


ーー


 《レダトロン》は、意外といかにも人工惑星という感じの人工惑星である。

 その表面から地下深くまで、色合い的には味気ないとも言えるような、人工物質ばかりで作られた都市ばかりの風景が広がっている。しかし都市といっても、人はそれほどいるわけではなく、大きな建物が立ち並んでいて、メンテナンス係のロボットがあちこちにいる程度のもの。


 《レダトロン》に暮らしている者は、1人残らず、修道士と呼ばれる、レトギナ教会本部直属の幹部信者たちである。

 修道士には、単に信仰だけでも、知識だけでもなれるものではない。

 レトギナの教義の上での、正しい行いを何度も何度も積み重ねた後。その功績が、修道士たちの上に立つ司教たちより、さらに一握りの者たちとされる数人程度の大司教の誰か、あるいは教会の最高指導者たる法王に、資格ありと認められなければならないのである。


 テレーゼは、ほんの100年前。

 1200歳程度と、歴代でもかなり若い年齢で修道士となった女性。

 白色の修道服を着ているが、頭巾はつけていないので、ポニーテールにしているオレンジ色の髪の毛は露出している。


「テレーゼ、テレーゼよ」

 人工的な産物ではあるのだが、ちゃんと色まで再現された森のような場所で祈りを捧げていた彼女に声をかけたのは、見た目的には、彼女よりやや年老いているくらいの男。

「カルキレ様、何でしょうか?」

 かなりの驚き顔で、テレーゼは、自分よりずいぶん先輩な修道士の方へと振り向く。


 カルキレは、《レダトロン》に在中している唯一の司教であるエメーレを除けば、実質的な最高権力者と言えるくらいの立場の修道士。


「《アズテア》が《ルセドラ》を取り込んだことは知っているか?」

「親善大使が派遣されていることも知ってますよ」

 ちょっと得意気に、テレーゼはそう返す。

「それなら話は早い。実はその件に関して、きみに頼みたいことがあるんだ」

「わたしに、ですか?」


 また、それは意外な申し出であった。

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