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神々のガラクタ船 ーWater alchemist and the Worldtree’s landsー  作者: 猫隼
Ch1・宇宙から失われたもの
32/142

32・玩具の強奪(悪党星系の少年9)

 《ケルベル》だけではない。明らかに接続(リンク)された全ての惑星に対して、種まきの切り裂きサイボーグたちは放たれている。


(クラーケ)

 サイボーグたちを放ってきた戦艦の名前。

 それはやはり《ヴァルキュス》で造られたものであり、リーザはよく知っている。

 だから、すぐに結論できる。

 それを使うのが一番早くすむ。


(急ぎだし、仕方ないか)

 ブックキューブにいれておいた、《ケルベル》のデータの内、いくらか、今必要なものをチェックする。


(なら、これくらい)

 そして、必要なだけ力を込めたその拳で、リーザは惑星の地面に衝撃を与えた。


ーー


「どうやら」

 ミズガラクタ号の方で、そのことに真っ先に気づいたのはザラだった。

「惑星を、揺らしたみたいです。軽くといえば軽くですけど」


 誰がやったかまでは、言わなくても全員わかった。


「どうやって?」

 とりあえず聞いたスブレット。

「多分叩いて、いや、殴ってですかね 」

 とりあえず答えはするものの、自分でちょっと信じきれていない様子のザラ。


「でもさ、それはもうその、何と言うか、力がどうたらって次元じゃなくて、その、物理的に不可能じゃない? 質量比率的に」

 もっともであったミーケの疑問。

構成粒子加速法こうせいりゅうしかそくほうを使ったんだろう。そういう技があるんだ。極めれば、生身の拳で星を粉砕することもできると聞いたことがある」

 エクエスだけはやはり驚きもしない。


「まあ、それができるって事はいいとして、なんでそんなことをしたのかな?」

 またスブレットの問い。

「それはおれにもわからん」とエクエスはまた即座に答えた。


ーー


 そんなことをしたのは、お目当ての戦艦、クラーケの位置を正確に特定するためだった。

 惑星を揺らすほど、構成粒子加速法を派手に使えば、それの警戒システムが作動すること。そして自分なら、その警戒システムの作動を感覚で逆探知できることを、リーザはよく理解していたから。


(見つけた)


 すぐに、常人の目では確認できないような速度で、あっという間にそこへとたどり着くリーザ。


 惑星の空に浮かぶその戦艦の下。

 一旦立ち止まるや、さらに空を覆い尽くすような大量のミサイルが放たれてくる。しかしリーザは、それらが自分の所へと到達するよりも前に、さっさと跳び上がり、一見は扉には見えないような扉から、それの中へと入っていった。


ーー


 《ヴァルキュス》の軍人相手に、《ヴァルキュス》産の兵器で戦いを挑むのは、とても愚かなことだ。

 《ヴァルキュス》で造られる全ての兵器には、他国の者には決して明らかにされない、コントロールを乗っ取るためのものを含む、いくつもの特殊機能が存在している。

 それら全兵器の全機能の全知識の把握は、兵士と認められる最低条件。

 ようするに、そういう強力な武器の配布自体が《ヴァルキュス》という国の防衛戦術なのである。いざ相手に回した時に、戦う前から勝利する戦法だ。


 最も、《ヴァルキュス》軍の兵がまさか"世界樹"にいて、しかも敵対するなんて、それを使ってる者たちも夢にも思っていなかったのだろうが。


「あなたは誰ですか?」

 その中で部屋といえる唯一の部屋に入ってくるや、艦内に響き渡った人工知能の声。


「排除を」

「わたしは《ヴァルキュス》軍『アシェレ』、第3大部隊、第2小部隊のリーザよ」


 それは彼女が《ヴァルキュス》を発った140年ほど前まで、副隊長の地位についていた部隊。さすがに副隊長の席は別の誰かに譲られているだろうものの、リーザは今でもそこに所属している扱いのはずなのである。


「し、失礼しました。リーザさま。ご命令をどうぞ、それとも操作権限を使いますか?」

 ただリーザの素性を、その声で聞いただけで、一気に従順になる人工知能。

「操作権限を使うわ。α(アルファ)マニュアルモードにして。その後は、わたしが自分で全部やるから」


(ありがとう、フラゴさん、みんな、兄貴)

 今必要な操作をしながらも、 軍隊内の自分の席を確保し続けてくれているのだろう、かつての部隊の部下たちや上司のことも、リーザは思いだし、感謝しておく。


ーー


「ザラ、ミーケ、リーザ。おまえたちなの?」

 ルカにはまったく意味がわからなかった。

 わかったのは、おそらく自分たちが助けられたということだけ。


 唐突にどこかから、一斉に放たれてきた大量のビーム。それらは、細かく適切に、切り裂き魔たちをすべて、少なくともルカが確認できる限りは、すべての切り裂き魔たちを貫き、その勢いなのか、別の効果なのか、粉々にしてしまった。


「正確にはわたしだけよ」

 いつの間にか、すぐ近くの空に来ていた、本来は敵のものなはずな戦艦から、飛び降りてきたリーザ。


 そしてリーザは、唖然とするルカに説明するより先に、その戦艦クラーケの通信システムを介して、ミズガラクタ号とネットワークを繋げる。


「ザラさん、エクエスさん、クラーケという戦艦を1つ奪ったわ。それに関するデータ送るから。内部に今の持ち主に関する情報もあったからそれも一緒に」

〔「《ヴァルキュス》の玩具だったわけか?」〕

 さすがにそういうことなのだろうと、よくわかっているようであったエクエス。

「まあそういうことね。あと、とりあえず今はもう終わったから、迎えに来て」


 それから、通信を終えるや、ルカとあらためて向き合ったリーザ。

「何か質問があるなら答えるよ」


 もちろんあるというか、ルカからしてみれば、聞きたいことばかりであった。

「あ、あのさ」

 しかし、まずは一番気になっていることを聞いた。

「あんた、何者なの?」

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