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神々のガラクタ船 ーWater alchemist and the Worldtree’s landsー  作者: 猫隼
Ch1・宇宙から失われたもの
30/142

30・勝算は彼女次第(悪党星系の少年7)

 『キルディ』のボス、ドロワーが、ルカに与えたのは、《RR114》銀河系に、極秘に仕掛けられていた監視装置の反応についてであった。

その文字と数字の暗号文。正確には監視装置の記録データを、ルカは自分の部屋で1人だけで確認したが、どのみちそれを説明なしに理解できる者など、『レデン』の中でも彼だけだっただろう。


「ボス」

 どこかに隠れていて、タイミングを見計らっていたかのようだった。データ表示を停止した途端に、部屋に現れたミリル。


「そういえばな、今日1つ面白いことがわかったぞ」

 ルカとしては、監視装置の情報を話す気にはなれなかった。


 どの道、知っていようと知っていまいと意味がないことだから。

 自分たちにはどうしようもないことだから。


「ぼくらは病気っていうよりも、特異体質らしい。ネオテニーって言うらしいぞ」


 それはどのくらいの確率だろうか。

 本当に珍しいことだ。

 ミリルは昔からルカの身近な存在で、そして同じくネオテニーだった。


「あのリーザって人たちに聞いたの? やっぱりあの人たちは国外から」


 ミリルも、ルカほど詳しくはないが、宇宙に関して、真の世界に関して、そんな存在を知ってはいる。


「ああ、《アズテア》という国らしい」

「ねえ、ルカ」

 ボスでなく、名前を出したミリル。

「あの人たちに」

「無理だよ。《アズテア》は小国だって言ってた。《ルセドラ》の方が、やっぱり確実に強力だって」

「で、でもあの人、あのリーザって人、ロタレイを壊したんでしょう。1人で。あの人なら」

「1人でなんてどうにかできるもんか。そもそもぼくたちなんて何も知らないんだぞ。何も」


(「わたしは交渉する気なんてないわ。要求は変わらない、わたしの仲間を解放しろ」

「覚えとけばいい。人は鍛えれば、人を感知することができるようになるのよ」

「1秒もあれば、あなたも含めて皆殺しよ」)


 しかし、ルカもどうしても考えてしまう。

 あんな強さ、化け物じみた強さ。

 もしかしたら、もしかしたら彼女なら……。


ーー


 《ルセドラ》の無法銀河は確かに"世界樹"においても、必要悪として容認されてきた。しかし、いくらなんでも限度はある。

 実のところ、少なくとも《RR114》の状態に関しては、ありえないはずのもの。

 まず、本来なら非公式の援助が、もっとあっていいはずであった。特にレトギナ教の影響が大きい国家からは。しかし実際には、そういう形跡がないどころか、星系同士の繋がりすら意図的に封じられている。


「内部側での情報操作まで行なっている理由に関しては、相当に違法的な、例えば個人単位での奴隷売買のようなことが行われているからだと思います。そしてそうだとしたら、取引相手は確実に"世界樹"外です。他フィラメントの兵器の獲得ルートが、『学術委員会』にも把握されていないことからも明らかです」

「そういうルートの問題からいっても、四大国の繋がりは、おれたちが予想してたよりもずいぶん強いだろうことは間違いないな。そしてこんなこといつまでも隠し続けれるものじゃない、にも関わらず、そういうことを遠慮なく続けてて、そして手に入れているのが武器。別に大げさな見方とかじゃなく、おそらくは"世界樹"自体を狙っているな」

 ここまでに得られたすべての情報から、そういう事情だとすぐに悟ったザラとエクエス。


「でもそういう事なら今からでも。他の国家と『学術委員会』に報告すれば」

「ミーケ、あのね、もしそうしたとして、あなたが今予想してるような展開にならないことだけは間違いないわ」

 ミーケに対し、すでに彼よりは現実を理解していたリーザ。

「ですね」

「だろうな」

 ザラもエクエスも、もちろんそういうことに関して、よく理解している。


「何でよ。だってさっきから聞いてたらさ、情報の選択完全無効化とか、他のフィラメントからの武器の入手とか、わたしみたいな素人が聞いても、かなりやばげなことばかりなんですけど」

 スブレットも、ミーケ同様、そういう国家間の政治とかの話には疎い。

「そうだよ。さすがにそんなの、"世界樹"の他の勢力全部で潰そうってくらいの話じゃ」

 ミーケとしては、そうなるだろうとしか思えなかった。


「おそらく潰されるのは無法銀河だけですよ。そうとだけ言ったら、あなたたちにもわかるでしょう。このフィラメントの住人なのですから」

 確かに、ザラのその言葉で、ミーケとスブレットもやっと理解した。


 もし四大国の現状を"世界樹"中に広めれば、まず間違いなく大きな問題となる。そして、ことをなんとかするために、"世界樹"単位での大規模な動きがあることだろう。

 だが、それに関して間違いなく、善悪論も感情論も全く考慮はされない。

 四大国と全面戦争するリスクより、その無力化だけを行う方がいい。つまり最大の武器収入源に使われている無法銀河のみ潰せばいい。それだけなら、そちらは文明も遅れているために、簡単な話。


「四大国自体には、その内部システムまで含めて、まだまだ利用価値はあるだろうからな。今、無法銀河さえ潰せば、"世界樹"としては危険もなくなるし」

 ザラに比べると、あまり難しくは考えていなさそうなエクエス。


 暗い雰囲気だった。

 達観視していて全然落ち着いているようなエクエス以外、その場の全員。おそらくは200以上もの銀河系を消滅させるべきであることに、納得しながらも、ただ素直に納得したくはないというふうだった。

 実際問題。

 文明が遅れてる上に、ろくに管理もされてない無法銀河など、いくらなくなろうと、フィラメント全体としては大した損害ではない。


「一番の理想が、四大国自体の中枢を破壊してしまうことであることは確実です。技術的損失までも考えるなら、正確には支配して乗っとるというのが一番いいでしょう」

 そしてそうだとは、ザラがあらためて指摘するまでもなく、今や全員がわかっている。


「リスクが大きすぎるな」とエクエス

「"世界樹"単位ではそうですね」

 そしてザラも、エクエスも、リーザを見た。


「リーザ、あなた次第です」

 ザラはそう言った。

「なぜ?」

 わかっていない感じではなかったリーザ。

「わたしが本気で説得すれば可能です。《アズテア》が単独で動くなら、四大国を直接相手にする方法がとられるでしょう。仮に失敗して、国自体が滅ぶとしても、その規模は銀河数個分にすぎませんし。それに姉上なんかは結構野心ある人ですから、勝算があるなら、この戦いという危険な賭けも受けるでしょう」


 だが、さすがに勝算はいる。

 それこそ、なんてことない小国である《アズテア》が、フィラメント最大の国家連合を相手にする戦いで。


「軍事面のみで考えるなら、《アズテア》はその規模から想定できる以上に弱小です。ですが、1つだけ。希望があるとすれば、わたしの仲間にあなたがいること」


 ザラの言葉に、スブレットも、付き合いの一番長いミーケすらも、驚きを見せてしまうが、エクエスはあいかわらず平然としていた。


「わたしも」

 ザラはさらに続けた。

「噂には聞いたことがあるんです。宇宙で最大の軍事国家《ヴァルキュス》。その指揮官クラスの者には、たった1人で銀河国家を導く指揮官能力と、たった1人で銀河国家と戦える戦力が求められると。あなたと出会う以前は半信半疑でしたけど」

「ザラさん。わたしは」


 リーザが答をちゃんと言う前に、船に届いた、メッセージ電波にその場の全員が気づいた。


「文字データで表示します」


 そしてザラはすぐに、その短いメッセージを、部屋に新しく出現させたモニターに表示させた。


[《アズテア》のみなさん、どうかわたしたちを助けてください。こちらはルカの友達です。お願いです、助けてください。お願いです]

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