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カミラ7歳

私が申し出るよりも先にルーカスの方から婚約の打診があった。

そのことに両親は大喜び、私も自分のしたことが上手く行ったのだと嬉しくなった。



それからしばらくはルーカスと文通をかわしていたのだが、ある日彼は行動を起こした。


「婚約者として互いによく知るため、もっと頻繁に直接会うべきだと思う。」


お茶会で見せた儚げな美少年はいつの間にか私がゲームで知っている俺様キャラになっていた。


「(いや、あれからまだ数か月だよね?)」


ルーカスに何があったのか分からないが、突然家を訪ねてそう言いはなつのは流石に失礼ではないだろうか、さすが馬鹿王子と思ったのは仕方がないだろう。

しかし両親は一族から王家嫁入りを夢に見ている為、彼のこんな非常識な行動も喜んで迎え入れてしまう。

これがのちに彼のわがままを加速させることになることなど、私はまだ知らなかった。







私の方から城へと頻繁に出入りすることはいくら婚約者と言えど難しく、代わりにルーカスが2週間に1度はうちに来るようになった。


この頃、兄たちとの力の差に自信を無くしきっているはずのルーカスに私はできるだけ優しく、辛抱強く話を聞いて励ました。

彼の意見を肯定し、褒め、笑い、共感を見せるように心がけた。


普段家にいない両親もルーカスが訪ねてくる日は必ず家にいた。

基本は2人で過ごしているが、昼食やお茶の時間は2人も席を共にして私と同じように彼を褒めたたえる。

まだ7歳の子供だ。

素直に「凄いですね」と伝えれば深読みすることなく、満足そうな顔をしている。


ゲームの中にはカミラの家で過ごすなんて描写は一度も出てこなかったし、そもそも彼女はルーカスから嫌われていた。


これはゲームの道筋から外れたと思っていいのだろうか?


兎に角、私の最低限の目標は投獄エンド及び国滅亡エンドの回避。

ルーカスに嫌われず、彼が絶望さえしなければこれはどうにかやり過ごすことができるのだ。

私は今日もむなしく、7歳児相手に肯定BOTとして大人しく、慎ましやかに過ごしている。


いつか来る輝かしい逆ハーレムエンドの為には王子の妻の座はどうしても必要。

これは必要な下準備なのだと己を鼓舞した。







実は私にはこのゲームにおける本命がいる。

5人の攻略者、隠しキャラは私が未プレイの為不明だから抜いておく。


第3王子である現在私の婚約者、ルーカス・キング。

彼の補佐役候補二つ年上のグレイソン・ガルシアと騎士団長子息のリアム・マーティン。

学院教授である事件に深くかかわるカーティス・クラーク先生。


それと


ヒロインの幼馴染の辺境伯次男リヴァイ・ケリー。

彼のバットエンドの監禁シーンは背筋が凍るほど恐くはあったが、同時にそれほどまでに愛されるヒロインに私を含め多くの夢女子たちは熱狂した。

それまで代表作があまりなかった彼を演じる声優さんは、これを機に大ブレーク。

正直私は中の人にあまり興味がなかったから、そのこと自体はどうでもいいのだが確かにあの怪演は恐さ以上の何かを感じさせるものだった。


彼のエンディングだけはハッピーエンドよりもバットエンドの方が人気で、キャラクターグッズの売り上げも彼がダントツのトップだった。


陰キャで話が進むにつれ絶対やばい奴。こんな彼を愛せるのは自分だけと思っていたが、ふたを開けてみれば人気1位。

少し残念だったが、それが彼の魅力だったのだろう。


監禁し捕らわれているのはヒロイン側なのに、彼女に愛されるために何でもしてくれる彼の方がヒロインに捕らわれているようにも見えた。

それが何とも言えない満たされた気分を感じさせてくれる。



そんな彼が私の推し。

彼と幸せになりたいが、私は彼から病んだ瞳を向けられたいのだ。



大前提としてバットエンド、ルーカスバットエンド回避。

その上でリヴァイから病んだ目を向けられる為には、私が彼に思われ、私は彼以外を思う、これしかないだろ。

なぜ逆ハーエンドなのかと言えば、それは私の身分に関係してくる。


仮にリヴァイから好かれ、バットエンドを目指すべく他のキャラと仲良くしていたとしよう。ゲーム通り私を彼が監禁したら大問題になるのだ。

リヴァイの方が身分の高い家だったからヒロインのことはうやむやにされたのか、単純に逃げ切れたのか分からないが監禁生活自体が成立していた。

しかし私は侯爵家の1人娘、その上王子の婚約者なのだ。


追手は当然つくものだし、見つかったらバットエンドどころの騒ぎではない。

リヴァイはもちろん、彼の家族、領地、領民がどうなるか分かったものではない。

私だって何らかの罰を与えられる可能性が出てくる。それに今のルーカスを見ると、ルーカスバットエンドに突入の可能性もある。


だったら最初から囲ってしまえばいい。

リヴァイもグレイもリアムもルーカスの傍付として、一定の距離を互いに牽制し合ってくれればいいと思った。


王族の妻なのだ、愛人ぐらいいてもいいだろう。

ルーカスも信頼する彼らとの関係ならば許してくれる。


何でそんな都合のいいことを私は思っていたのか、自分の考えの甘さに気づいたのはもっとずっと先の話。



今はまだ会うことのできないリヴァイを忘れ、ルーカスのラブルートに入るために私は懸命に笑う。





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