表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/108

カミラ5歳

私にはどうしても回避したい未来がある。

言わずもがな一つは投獄エンドである。

簡単に言えば各キャラクターとヒロインのハッピーエンド=投獄エンドだ。

更にただのバットエンドは投獄されないものの、世界は恐怖の代殺戮時代なので却下。

隠しルートに関してはプレイをしていないが、ネットでささやかれる雰囲気から言ってあまり期待はできない。

もはや回避したい未来ではなく、願いたい未来は一つ。


ヒロイン最強のノーマルエンドである。


不思議なことにこのゲームのノーマルエンドはなかなかに鬼畜で攻略が一番困難とされていた。

学問・魔術・魅力・魔力・体力のパラメーターをマックスにしたうえで、ストレス値を10以下ってどんな超人だよと言うぐらい、強そうなヒロインに育てるのである。

ミニゲームで上がるそれらの数値を効率よく上げ、キャラクターとの会話はあくまで均等に凡庸に返す。

大変ではあるが、ゲームだからこそできた産物であり現実に生きる16歳の女の子がそれほどの勤勉に生きれるものだろうか、ストレスを溜めないで。



「ゲームの記憶のある私がカミラだからいじめることはないし、命を狙うことはないけれど…。」


彼女の魔力による伯爵家の称号はいじめの的になり易くもあるし、攻略対象者と関わることにより妬みも生まれる。


「ストレス値10以下って何よ…。」

単位を上げるためのミニゲームをプレイするだけでトレス値5が加算されるのだ。

2回連続で数値を上げようとすればすでにストレスは10。


「ゲーム内ではミニゲームを毎回パーフェクト、セーブしてはリセットの繰り返しだったよね。」

それほどまでに難しい。難しいノーマルって何?あの時もそう思った。


「ミニゲーム、キャラクターへの声かけを交互に挟んでもイベント中の会話でなければ回復2って…。」


改めてあのゲームの制作陣の意図が分からないと頭を悩ませる。


「それにできることなら私も幸せになりたい。」


いくら最悪の結末から逃げようとも、元の世界に帰れなければ私の現実はこの世界で続く。

せっかく侯爵家に生まれたのだ。

顔だってかわいい、スタイルだってこれからよくなる、それを無視してヒロインのサポートにだけ当たるのはもったいないと思った。



鏡の前で何回転かして自分を観察する。

このゲームにこそ逆ハーレムエンドはなかったが、頑張ればカミラでもいけるんじゃないだろうか?そんな期待に胸を躍らせ、まずは第一歩目として近々やってくるお茶会でルーカスに気に入られなければとお稽古ごとに力を入れた。


ゲーム通りなら何も頑張らなくとも婚約者になれるだろうと思うだろうが、ルーカスの回想シーンにあったカミラへの感想は第一印象から『どこか無作法で好ましくは思えなかった』、である。


詳しくは語られていないが、おそらく一人娘でありながら親からの愛情はプレゼントなどの物品。

今ほどでないにせよ、半ばメイドたちに育児を任せ娘との時間を顧みない両親にカミラは諦めていたのか、はたまた間違った愛情を認識してしまったのか。

ルーカスへの執着は得ることのできなかった愛情が欲しかった、もしくは国で一番偉い王の子=一番自分にお金をかけてくれる可能性のある婚約者として繋ぎ止めたかったのか、本来の彼女の心情は分からないもののルーカスへの執着は彼と仲良くなったヒロインを殺害しようと思うまでに歪んでいた。


「(ルーカスルートでなくてもカミラはヒロインを目の敵にするもんな。)」


歪み、重すぎる感情はもちろん彼に見せることはないようにするつもりだが、ゲーム内で言っていた『どこか無作法とは』どういうことなのだろうかと考える。

王家、その血筋の公爵家に次ぐ地位を持つ侯爵家の娘が無作法?

プレイ中は気にも留めなかったが、日々こんなにもマナーだ礼儀作法だとお稽古ごとが決められている。

わがまま放題に娘がそれらを拒否したとして、両親がそれを許可するか。


「(そんなわけがない。)」


この家に生まれて嫌というほど貴族としての自覚のようなものを言われ続けてきた。

今度のお茶会も両親共に王子も参加しているのだから、気に入られるように頑張るのよと言っている人たちが無作法な娘を公の場に出すわけがない。



貴族社会は想像以上に縦社会。

王族に頭を下げ続け、作り笑いをする父を情けなく思っていたが、そうしないと生きていけないのだとさすがに気づいた。


「(なら何だ?)」


カミラというキャラクターは悪役令嬢という以外別段詳しくは語られていない。

ヒロインとの会話も王子との会話もそこまでおかしな印象派受けなかった。

スチルにしたってそうだ。


高飛車でヒロインを見下すような表情をするものの、それこそが悪役令嬢のテンプレと言ってもいいだろう。


「でも王子は『どこか無作法』と言ったのよね。」


もし貴族としての気位の高さが傲慢にうつり、素朴で素直なヒロインを謙虚で礼儀正しいと感じそう言ったのなら


「(単純にルーカスの好みじゃないってことじゃん!)」


確かに性格が悪そうと思えるかもしれないが、ヒロインの立場とカミラの立場ではそれが当たり前なのが貴族社会なのだ。

むしろルーカスと平気で会話しているヒロインの方がこの中では異質。

だからこそ見初められたというのなら、私の振舞い方の方向性も変えなくてはならない。

その調整にも気を付けないと危険だ。

ヒロインのように身分に捕らわれない振る舞いをすれば、私の立場上許されることではないし、他の貴族につけ入る隙を与えることになってしまう。


あくまで上級貴族として品を落とすことなく、相手を見下すのではなく施しを与えるように且、簡単に手の届く人ではないと思わせなくてはならない。


「(これで天真爛漫の子しか愛せないとか言われたらどうしようもない。)」


こればかりは賭けになりそうだが、とりあえずルーカスの言うことはすべて肯定して、彼の自信の妨げにならないようにだけ気を付けようと姿勢を正した。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ