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カミラ3歳

時間ができたので初めて小説を書きました。

至らないところはあるかと思いますが、生暖かいぐらいの気持ちで読んでいただけると幸いです。

毎日の更新を目指します。



階段から落ちた衝撃で前世の記憶が戻ったなんて何てテンプレ。

その上、この世界は直前までプレイしていた乙女ゲー『Magicalプリンセス』略してMagiプリはタイトルからもお察しの割とありがちな乙女ゲーだと当初思われていた。



魔力が残る世界、魔力持ちは貴重とされ身分にも大きく影響する反面、家族の中から突如魔力持ちが出たことにより急激に地位を上げた家を差別するような描写もあった。


「(成金的な扱いよね。たぶん。)」


魔力持ち=幸せとは言えないものの、優遇される能力として扱われるそんな世界でヒロインは2代前に魔力が発現し、『伯爵』を貰った家の子。彼女の母も叔父も魔力は発現せず1代空いての魔力持ち。

伯爵の位はヒロインの叔父がついていたため平民だった彼女は、両親の突然の他界に伯爵の養女となった。


そんな理由から学園生活は肩身の狭い日々を送ることになる。


魔力を持っている16歳以上の子供は全員、魔法を学べる学園への入学が義務づけられヒロインはそこで5人の攻略対象者と恋に落ちるのだ。


そこまではいい。

注意すべきはこのゲームノーマルエンド、各キャラクターとの恋愛エンドに加え各キャラクターのバットエンドが用意されている。

そのバットエンドが曲者だった。


ヒロイン死亡、キャラクター死亡、闇落ち、ヤンデレ化、までは良しとしよう。

他のゲームでもなくはない。

ただ王子のバットエンドが国の崩壊って、重い、重すぎる。


単純に画面越しでそれを体験した私は「まじかよ~」で終わったが、自分がその世界で生きていくとなれば話は変わる。

私はその中に出てくる攻略対象の第三王子の婚約者カミラ・キャンベル。いわゆる悪役令嬢だ。どのルートでもだいたいヒロインの命を狙う敵役。

身分が身分だから処刑ではなく投獄エンドではあるのが救いかもしれない。

むしろ問題は国の崩壊。

少なからずその事件に関与する王子の一番傍にいる性格の悪い女の子なのだ。

あと、まだプレイ中だったから私は見ていない隠しキャラクターのエンディングがなぜそうなるのかと一時話題になった。

ネタバレが嫌だったためうっすらとしかその話題を目にしていないが、何でも折角の隠しキャラなのにバットエンドしかないことと、そのキャラクターを攻略した後に進むことのできるデッドエンド。


ノーマルと各キャラクターのハッピーエンドよりもバットの数の方が多いとはこれはいかにと、鬱ゲーにカウントしていいのではないかとネット上では論争が起こっていた。


あと隠しキャラエンドはバットではなくメリーバッドエンドだという人も多くいたみたいだが…


「(どのみちハッピーエンドではないのね。)」


なかなかに刺激的なゲームだった。




でも私は絶望なんてしない、待ってましたと腕を天に伸ばし勝利のポーズを決めてしまうぐらいにははしゃいでいた。


はしゃいでいられたのは最初の数週間。

自分の存在が未来投獄エンドを迎える可能性よりも、本来いた現実世界を思い出し何日も泣いた。

家族にも友達にももう2度と会えない。

最初に喜んだ自分があまりにも愚かで悲しくて仕方がなかった。


流行りに乗っかり、転生もの、悪役令嬢もの、その手の小説も散々読んできたけれど、現実世界に戻れた話はあまりない。

夢落ちエンドもあるにはあったが、このあまりにも長い毎日はとても夢では片付きそうにない。



私があまりにも泣くものだから、忙しい両親は金に物を言わせ世界中からありとあらゆる娯楽品や嗜好品を送ってよこした。

それがよくなかったのだ。


私はこの世界に来てたった2年。気づかぬうちに見事悪役令嬢になり果てていたのだ。







仕事に忙しい侯爵の父。

茶会だ、夜会だ、ほとんど家にいない母。

3歳から自我を持ってしまった私は彼らを本当の両親と見ることができず、また本当の子供ほど手がかかるようなことをしなかったため彼らとの距離は日を追うごとに離れていった。


彼らは子供にお金をかけることを愛情とした。

私は1人娘だったため、両親も子供の育て方が手探りだったのかもしれない。

それを私も受け入れたことでこの愛情のかけ方は正しい選択だと両親に思わせてしまったところもある。



美しいドレスも可愛いお人形もおいしいお菓子も全部全部が私のもの。

メイドたちは私を飾り立て、そのたびに称賛をおくってくれる。

毎日が幸せ。

寂しくないと言ったら嘘になるけれど、常にメイドは傍にいてくれるし何でもやってくれる。

贅沢三昧の日々は私を堕落させるには十分な力を持っていた。



誕生日は間近、私はもうすぐ5歳になろうというときに鏡に映った自分の姿に驚愕した。



「(これってMajiプリのカミラだ!)」



栗色のグリングリンのくせっ毛をメイドたちがいい感じに二つに束ね、きつそうな目は茶色。美少女に変わりはないけれど、この顔は嫌な思い出として語られていた。

王子の回想シーンで私はこの少女のスチルで見たのだ。


攻略対象の1人、いずれ私の婚約者になるグリモワール国第三皇子ルーカス・キングの回想シーンで出てきた彼と初めて出会った幼少期の悪役令嬢カミラがそこにはいた。


鏡の前で膝をつく私にメイドたちは慌てていたが、しばらく動けなかった。


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