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フォールン・オールド・ホーム



 ニューエデン市内、ヴィペルメーラ・ディストリクト。


 城壁めいた威容を誇った壁は爆破され、突入口としてあちこちに開かれている。


 主力戦車を組み込んだ機動戦力を以って侵入したシャムロック・ギャングたちは、城館めいた邸宅を次々に蹂躙。


 ただフレドー・ヴィペルメーラの家と隣合う1棟ばかりを残し、倒壊寸前の廃墟の群れに変えていった。


 住人や使用人たちは逃げ出すか、殺されたかのいずれかだ。


 ファミリーのクリスマスパーティーに出かけたきり、そのまま帰らなかった者も少なくない。


 彼らの代わりに対人戦闘ドローンが待機モードで等間隔に浮遊し、無心に一帯を制圧しつづける。


 砕かれたヴィペルメーラ・エンブレムを踏みつぶして戦車が進み、最後の1棟へ砲撃を加える。


 ヴィペルメーラ・ディストリクトには、有事に備え相当の防備と戦力が備えてあった。


 だがそれはわかりきったことだ。フレドーの裏切りも情報の精度を高めた。


 ディストリクトを陥落させるのに十分かつ最適な戦力を持ち込まれては、移動の叶わぬ拠点ゆえ、どうあっても助からない。


「――クリア。次は服を剥いでお家をファックだ」


「ファッキン了解!」


 パオロ・ヴィペルメーラ邸の自動防衛火器を殲滅すると、邸内侵入への工作が開始される。


 鎧のごとくに屋敷を包む複合装甲製のシャッターに、爆薬や腐蝕剤などを組み合わせた解体装置を取り付け、起動。


 爆音の後、屋敷の四方に侵入口が生まれる。


「ナイスファック!」


 対人戦闘ドローンや対人戦闘ロボットと連携したギャングたちは、即座に侵入。


 部屋部屋にグレネードを投げ込んでいき、生き残りがあれば捕らえる。抵抗があれば殺したり、ねじ伏せたりした。


 邸内には既にマフィアたちはおらず、残されていたのは留守番役の使用人たちのみ。


 戦闘のすべなどほとんど知らぬ使用人たちはあっという間に捕らえられ、屋敷の応接間につれてこられた。


 額縁ごと砕かれたヴィペルメーラ家の家族写真を、ギャングの1人は気づきもせずに踏み越えた。


 そうして、応接間中央に集めた使用人たちの約半数を、作業的に射殺する。


 生き残った、あるいは当たりが悪く死にきれなかった使用人たちの悲鳴と断末魔が、室内に響いた。


「おい! 静かにしねえか。これ以上ひどい目に遭いたくなかったら、ファッキン正直に答えろ。

 ヴェロニカ・ヴィペルメーラはどこにいる? 地下か?」


「地下はねえだろ、俺がきっちり潰してきたぜ」


「お前にゃ聞いてねえ! まったく」


 尋問を始めたギャングは、生き残りの使用人を無造作に1人減らした。


「ファッキン答えろ。答えによっちゃ、お前らアスホールを助けてやれるかもしれん」


「……ヴェラお嬢さまは、パーティーに出かけたきり帰宅していらっしゃらな――」


 銃声が、疲れ切った声と命を塗りつぶした。


「おっと、一人ぼっちになっちまったな。さあ答えろ。不義理を言っても、聞いてる奴はもういないんだ」


「本当に、わからな――」


 ついに、使用人たちは殲滅された。


「殺しちまって良かったのか? 時間をかけて締め上げれば――」


「そうだな、あちこちしらみつぶしにするのと同じか、それ以上の時間をかければ。

 それに実際のところ、こいつらは何も知らんのだろう。

 あのメスガキお嬢さんも何もかも言いふらして回るほどアホじゃあるまい。そうならとっくにプレジデントにファックされてるさ」


「兄貴! もう済みましたよね? 休憩に入ってもファッキン?」


「クソか? ひるなら外でひってこい」


「いえ、お土産を選びたいなあと。16歳の箱入りマンコの住んでた金持ちファッキン屋敷ですし」


「ファッキン不許可だ。即座の爆破解体を、我らがゲイリー・ファッキングレート殿は望んでいる。

 だいたいロクなもん残ってないぞ。俺らが逐一壊して回ったんだからよ」


「お嬢さんのファック用ショーツの一枚くらいはあるんじゃあねえか?」


「お口をファック!

 とっとと爆薬を仕掛けて来い、野郎ども。

 ここが済んだら制圧用ドローンを残して、本部ビルの応援に行くんだからな。無論補給はするが」


「「「ファックイエスファック!」」」


 数分後。パオロ・ヴィペルメーラ邸は爆破解体され、灰燼に帰した。


 ヴェラやジュディアが訪れたとしても、懐かしい思い出の場所とはもはや思えないことだろう。


 主人や使用人たちの命と同じように、一切は失われた。


 爆破解体の様子は、ドローンのカメラによって撮影され、ゲイリーの元へ送られた。


 ゲイリーの端末のAIが、自動的に映像を解析。


 パオロの影武者の動画やパトリックの発話など既知の素材と組み合わせて、サブリミナルプロパガンダ動画を作成。


 自動的に、インターネットに放流した。


      †


「しかし、無駄足の割には結構な時間と弾薬を使ってしまったな……」


 リーダー格のギャングが、一人ごちる。


「いいじゃねえか。ファッキン勝ったんだからよ」


「そらあそうだがよ。俺たちの戦力をよそに集中させてたら、違うことだって起きてたかもしれねえじゃねえか」


「もっといいお土産の観光地が?」


「ファッキン違う。ま、いいさ。

 確かに俺らはファッキン勝ったんだからな……!」



今日もプソイドカライドをご覧くださりありがとうございます。


皆様に良きことのありますように。

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