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プレジデント・プレゼント



 スキンヘッドの大男が現れ、金髪碧眼の美少年が続く。


 うるわしき金髪の少年は、アルフとまったく同じ顔立ちだ。


 スキンヘッドの大男の身長は2メートル強。


 見た目には40歳前後と思しい。


 エマコの技術――生体ドロイドの肉体を形作るのと起源を一にする万能細胞群による壮年の肉体だ。


 大男の目鼻立ちはいかめしい。


 服装は黒を基調に金ストライプの入ったダブルスーツ。


 全身の各所に金のアクセサリーが光る。

 最も目を引くのは腰の左右。


 パイソン革と金メッキ鋲からなる特注ホルスターに、18金仕様のデザートイーグル50AEが収めてある。


 大男に付き従う金髪の美少年は、アルフと瓜二つだ。


 服装はダークスーツに黒シャツ。


 黒いネクタイは、近づくとペイズリー柄が見える。


 右腰には45口径コルトガバメントの、他社コピーモデル。

 クロームシルバーが眩しい。


 だが少年の世を絶する美貌に比べれば、ただ光るばかりに過ぎない。


「やあ、こんばんは。待たせたな!」


「こんばんは、プレジデント」


「こんばんは、爺さん」


「良い夜でプレジデント!」

「最高ですプレジデント!」

「お疲れですプレジデント!」



 大男は快活に挨拶。


 ドミニクとエマコ、そしてギャングたちが挨拶を返す。


 彼こそがパトリック・マクライナリ。


 シャムロック・ユニオンの最高権力者にして〝プレジデント〟の尊号を帯びる者だ。


 ドン・パオロ・ヴィペルメーラが死に、その娘ヴェロニカが捕らえられた今。


 パトリックは、ニューエデンの疑いなき支配者だ。


「さて、状況を報告しよう。この通りミズ・ヴィペルメーラは確保した。

 竜も、祭政帝国の友人たちが捕らえてくれた」


「ご苦労だ、ドミニク。

 ――君たちにも感謝しよう、鷲の戦士たちよ」


 パトリックは、ドミニクの肩をたたいてねぎらう。


 直後、達者なスペイン語でクァクァウティンたちに礼を言う。


「むしろ、こちらこそ感謝しているのだ、プレジデント」


 ケツァールの羽を飾った鷲の戦士がパトリックに言葉を返す。

 3人の代表らしい。


「呪われるべきヴィペルメーラに代わり、竜奪取の便宜をはかってくれて実に嬉しい。

 『竜を捕縛した勢力が、竜を己がものとする』この約定に違いはないな?」


「ああ。約束だからな。正直、手元に置いておきたいがね。竜の力はいい抑止力になる。

 だが、まあ、約束は約束だ」


「汝に誉あれ! プレジデント」


「当然のことさ。

 だが連れていく前に、ちょっと見せてくれ。それくらいは構わんだろ?」


「ああ。そこに倒れている子供がそうだ。女童の方だ」


 そうか、と言ってパトリックはイヴの方へと歩く。


 ちらと見たきりで通りすぎる。


 金髪の少年が、従者らしくその後を追う。


「博士、このかわいいのが君のお気に入りだったか?」


 パトリックはぐっすりと眠るアルフを指して言う。


「僕と同じ顔ですね」


 パトリックに続いて、金髪の少年が不思議そうに言う。


「そ。かわいいでしょー?」


 答えるエマコの声はふやけている。


「アーサー、君はさ、爺さんがうちのアルフを見て気に入って、それで生まれることになったんだよ。君とアルフは、骨格はもとより、遺伝子の編集パターン・発現方式も同一なの。ハード的にはほとんど違いはないんじゃないかな。アクトウェアの種類とバージョンは、ちょっぴり違うけど。

 それでも、双子の兄弟みたいなもんじゃないかな」


「なるほど、そうですか……」


 アーサーはアルフの頬をつまんだり、髪を指で巻いたりする。


「……ぅ……」


 むずがるように、アルフが鼻を鳴らした。


 世にも美しい2人の少年。


 幼い兄弟のようなほほえましさ。


 どこか幻想的でさえある光景に、エマコは見入る。


 囚われのヴェラもまた、2人に目が行く。


「作るのにいくらかかったんだね?」


「……んー、きちんと一人分で計算してたわけじゃないからなあ……」


「では1千万ドル、後で支払おう――アーサー」


「はい、プレジデント」


 アーサーはアルフから離れる。


 言葉の意味をエマコが問うより早く、ファリスを羽交い絞めにする。


 抵抗はない。


 エマコの所有ドロイドは、エマコとアルフに従うように設定されている。


 アルフとアーサーの顔は同一だ。


 顔認証機構は、直前の会話を聞いていたりはしない。


 ファリスのAIに、アルフとアーサーをを見分ける機能はないのだ。


「ちょっ! 何すんのさ!」


「じっとしていてくれ、博士」


 パトリックはデザートイーグルを抜き、アルフの頭部に向ける。


 発砲。アルフを射殺した。



今日もプソイド・カライドをご覧くださりありがとうございます。


読者諸賢、なろう運営諸氏、エンジニア諸氏、その他関係各位の皆さま、ついでに僕にも、いいことのありますように。

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