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エクスティンクト・エクスプロード



 ヴェラはアルフに必死で抱きつく。


 爪の先が白くなるほど力がこもっていた。


 空を吹きまわる風が、3人をなでる。

 地面が近づく。


「イヴ」


「ぎゃあ」


 この世ならぬ奇怪の音楽が響く。


 イヴが白き竜の姿に変身。


 馬鞍めいた座席付きの竜の背に、アルフはヴェラを抱きかかえて座っている。


「ご安心ください、ヴェラ」


「ぎゃあ」


「……ふぇええ……?」


 アルフは片手でヴェラを抱えたまま、白き竜の背をなでる。


 鱗は見た目通りの厳めしい感触だ。


 何かおもしろくて、アルフは何度か背をなでる。


「――!」


「あはは」


 白き竜は喜びの声を上げる。

 アルフは竜の思いを察することができた。


 ヴェラや通行人には、魔獣の恐るべき咆哮としか聞こえなかったが。


 卒倒しそうな思いで、ヴェラは手に自然と力を込めた。


 白き竜は、アルフを除くすべての人間を恐怖させつづける。


 悠々と飛翔。片側三車線道路の上空に弧を描く。


 滑るように下降して《オテル・パラッツォ》に接近。


 地上まで残り数メートル。再び奇怪の音楽が響く。


 童女の姿に戻ったイヴと、青い顔のヴェラを左右に抱き、アルフは華麗に着地。


「あン? ウォっ!? ファッキン死――!?」


「今晩おファック! おいコ――!?」


 竜の咆哮による恐慌から、着地音で正気に戻った二人のギャング。


 彼らをアルフは手早く射殺。応戦の隙を与えない。


 すぐそばには、黒いフォードのセダンが停まっていた。。


「……っ」


 ヴェラは頭を振ってなんとか立ち上がり、辺りを見回す。


 状況を把握すると、死体の手を取って指紋を認証。

 黒いフォードの施錠を解く。


「……使わせていただきましょう」


「はい、ヴェラ」


「ぎゃあ」


 威厳を取り戻そうと、ヴェラは努めて堂々と言った。

 三人は車に乗る。


 車内は大麻臭い。


 後部座席には使い古された全自動散弾銃。


 あちこちにゴミが散らばっている。


「アルフ、運転を頼みます。自動運転では速度を出せませんから」


「ぎゃあ」


「わかりました、ヴェラ」


 アルフは運転席に座り、座席を調整。


 車両制御の権限をAIから人間の手に戻す。


「では行きましょう」


 黒いフォードは走り出す。


 法定速度を忘れた速さで、道なりに進んでいく。


「……ふう。とりあえず、状況を立て直さないといけませ――」


 爆音! 激甚!


 耳を聾すること凄絶!


 思わず、ヴェラは言葉を切って後ろを振り返る。


 《オテル・パラッツォ》が見る間に倒壊していく!


 煙と粉塵を噴きながら、あっという間もなく、高層建築が視界から消失する。


 ただ、瓦礫の山ばかりを残して。


 爆破解体が行われたか。


「……恐ろしい脱出だと思いましたが、今になって考えると、生き残るためにはあの瞬間しかなかったのかもしれませんね……」


 黒いフォードは驀進を続ける。


 追跡車両はない。


 今の爆発で片がついたと考えたか。


 竜の咆哮による恐慌状態のために、追跡部隊は動きが取れないのか。


「教えてもらった隠れ家に、もうすぐ着きますね」


「……いえ、作戦が漏れていた以上、非常時の隠れ家も知られている可能性があります。予定を変えましょう。大胆に。

 ――そこを左に!」


「はい。ヴェラ」


 進入禁止の標識を無視。


 かなりの速度を保ったままフォードは左折。


 車内は大きく揺れる。


「ぎゃあー」


「ッ!? 結構です、アルフ。

 とりあえず、我が家に――」


 爆発音。


 ヴェラは再び後方をうかがう。


 噴進飛行するミサイルを抱えた超小型無人機。

 対戦車ドローンだ。しかも複数。


 ジェットエンジン駆動式ドローンが合計十二機。


 一機につき一発の対戦車ミサイルを装備している。


 このフォードを破壊するには、十分すぎる戦力だ。


 先程は急な左折により、奇跡的にかわせたに過ぎない。



本日もプソイド・カライドに御高覧賜りまして、篤く御礼申し上げます。


読者諸賢および関係各位諸氏の皆さまに、良きことのございますように。

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