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ザ・グレイテスト・ライ――"ライ・イズ・イヴィル"



「――もしもし。私です。済みました。結果としては予定通りです。経緯はやや複雑ですが」


『そう。ごめんなさいね、ジュディア。〝恩を売るための二重裏切〟なんてさせてしまって』


 アルフとイヴの出会いのきっかけとなった、兵器研究所襲撃事件。


 その前日、ニューエデンの調和は破られた。


 ニューエデン州知事、パオロ・ヴィペルメーラ襲撃事件のために。


 州知事の権力基盤は、イタリアン・マフィアのヴィペルメーラ・ファミリーだ。


 ヴィペルメーラは襲撃の背景について調査。


 そして、同盟関係にある組織、シャムロック・ユニオンの裏切りを断定するに足る、確かな証拠をつかんだ。


 近日中に予想される抗争に備え、ヴィペルメーラは自戦力の強化と敵の弱体化に取り掛かった。


 弱体化作戦の核として行われたのが、シャムロック庇護下の兵器研究所の襲撃だ。


 隣国の武装工作員であるクァクァウティンたちを秘密裏に入国させ、特殊兵器を奪取させる。


 ファミリーの戦力を損耗させることもなく、また下手人が他者であるために組織間の全面抗争に移行することもない。


 さらにクァクァウティンたちを騙し討ちにすれば、特殊兵器も手に入る。


 ヴィペルメーラが組織としての規模でシャムロックに勝っている以上、特殊兵器を抑えれば勝利は盤石だ。


 信義以外に何一つ欠くところのない、優れた作戦。

 そのはずだった。


 しかしシャムロックに雇われた賞金稼ぎに、クァクァウティンたちは殲滅されてしまった。


 ヴィペルメーラが手を下すよりも先に。


 作戦修正のため、ヴィペルメーラはシャムロックの賞金稼ぎについて調査を行った。


 賞金稼ぎの名は、アルフレッド・ドゥンスタン・アダム・モントフォート。


 持ち去られた特殊兵器共々行方を捜すと、シャムロックの庇護下にある研究者の家に住んでいることが分かった。


 在宅時に手を出せば全面抗争を招く。


 また同地での戦いは、地理からして不利である。


 ゆえに夜が明けるのを待って、

 ヴィペルメーラはクァクァウティンたちと公道上に罠を張った。


 対象は予想外に強く、善戦した。

 だが作戦は成功した。


 ジュディアの狙撃など、おしみない戦力投入のために。


 ヴィペルメーラは特殊兵器を手に入れ、またアルフに恩を売ることに成功した。


 多少のトラブルはあったものの、当初の目的を達成できたと言って良い。


 それらの事情を前提として、ジュディアと呼ばれた女は主人に言葉を返す。


「いけません、お嬢さま。戦略上必要な行為です。何より軽率です。盗聴の可能性が――」


 ヴィペルメーラ・ファミリーの首領、ドン・パオロ・ヴィペルメーラ州知事の襲撃には、確実にファミリーの人間が関わっている。


 内部の人間の手引きがなければ不可能な、緻密な襲撃だったからだ。


 今、渦中にあるジュディアと主人の通話なら、聞かれていてもおかしくない。


『わかっています。けれど平気です。

 もし聞かれていても、今の話など、敵方にも容易に考え得ることでしょうし。事態に気づけば、状況からいって犯人は明らかなのですから。

 それで、ジュディア。どのくらいで回復するのかしら。その、――あの子は?』


 アルフのことだ。

 ジュディアの主人は、どのような名で呼ぶべきか迷ったのだろう。


「……明日には戦えるかと。医師の診察結果ではありませんので、不正確かもしれませんが」


 今は非常時だ。ヴィペルメーラは治療費を惜しまない。


 現代医学の粋、万能細胞と人工臓器を使い、加圧酸素式治癒促進カプセルを全力稼働させれば、驚くほど速い治癒が見込める。


『結構です。そんなものでしょうね。

 目を覚ましたら、もう一人の子ともども良くしてあげて』


「ええ、抜かりなく。ではお嬢さま、痕跡隠滅がありますので、失礼いたします」


 ジュディアは通話を終える。


 既に州政府の権限で、道路の封鎖や街頭監視カメラの掌握などは済ませてある。


 立ち働くヴィペルメーラ・マフィアの部下たちのもとへ、ジュディアは速やかに向かう。



こんにちは。


本日も「プソイド・カライド」をお読みくださりありがとうございます。


皆さまと僕とに、いいことのありますように。

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