盗賊団 4
確かここを右に行ったら、食料が置いてある部屋があった筈。 ――おっ、あったあった。
再び1人になり、洞窟の奥へ進み、つい先程までの記憶を辿りながら目的の場所へ到着する。
その部屋は、食事をするための部屋のようで、食料、飲料、調理器具、調理場所があり、少し離れてイス、テーブルがいくつも配置されていた。
「――汚いな」
部屋に入ってすぐ、そんな言葉が出てしまう。 地面とテーブルに散乱している食べ物、食べかす、酒瓶に使用済みの洗われていない食器。 例をあげればキリがない。 俺はそこまでキレイ好きと言うわけではないが、とてもじゃないがこんな場所では食事しようとは思えないな。
まぁいい、さっさと必要な物だけ持っていこう。
***
「――あっ」
そんな声が聞こえたのは飲食物を奥から拝借し終え、出口に近づいていた時だ。
視界に入ってきた5人の内1人がこちらに気付いて小走りで駆け寄ってくる。
「…………」
「――ええっと……」
その駆け寄ってきた1人、10〜12くらいの歳だろうか? 俺の腰より少し上くらいの身長しかないその子は特に何か俺に対して言うわけでもなく、無言で俺の後ろ斜めに移動し、スーツをつまんで俺と一瞬視線が合った後、慌てたように顔を俯かせる。
もしかして助けたから懐いてくれてるのかな? さっき一緒に外に出るときもこうしてたし、俺が戻って他の人達を迎えに行くって言った時も、他の子達が止めなかったらついて来たそうにしてたし。
もしそうだったんなら悪い気はしないな。 さっき大勢から疑いの目を向けられて、少し落ち込んでたからちょっとした癒しになるな。
「少し遅くなりました、すいません。 ちょっと寄り道してしまいまして」
4人の前まで移動を終え、話しかける。
「いえ、そんな謝られるような事は。 私の方がごめんなさい。 先程、一刻も早く外に出たいと取り乱してしまいまして。 多少ですが、外に出られて時間が経った事で落ち着きを取り戻せました」
横並びで立っている4人の中で、他の3人より頭2つ分程背が高い女性が、洞窟の外に出る前とは別人のような態度で応対してくれる。 そして他の3人、俺のスーツを掴んでいる子と同じくらいだろう子供達は、戻ってきた事に安堵したような表情でこちらを見上げている。
「そんな、全然気にしていませんから。 こんな所に閉じ込められていたんですから仕方ないですよ」
「すいません、ありがとうございます。 ……あの、他の方達は?」
何度もお辞儀をし、俺が困った表情になっている事に気付いた彼女はそれをやめ、窺うように質問をしてくる。
「お恥ずかしいんですが、彼女達にかなり警戒されてまして、僕が離れた方が牢から出てきやすいんじゃないかと思いまして……なので一緒についてきてはいないです。 彼女達の1人に色々説明したのでそのうち出てくると思いますが……」
「そうなんですか……あの、もし良かったら私が皆の所に行ってきましょうか? 見知った顔が出向けばより信じてもらえると思えるんですが……」
「それは、有難いんですが、大丈夫ですか?」
「盗賊は全員動けないんですよね? なら大丈夫です。 助けて頂いたのに迷惑かけてしまったのでお役に立てる事があればさせて下さい」
俺はそんな彼女の申し出を有り難く受け取る事にし、牢屋にいる彼女達の事を任せ、今度は俺が彼女1人が洞窟の中に入っていく姿を見送った。