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盗賊団 3

「お待たせしました」


  再び彼女達の元に戻ったのは、鍵を探してくると離れてから10分が経過したかしてないかくらいの時間だ。 俺が声を掛けると、その声と姿に反応してか、牢に入っている彼女達は、全員が全員と言っていい程、皆こちらに注視する。


  男性。 それは彼女達がこの拠点に連れ去られ、閉じ込められてからは1番の恐怖の対象であろう。 俺を視界に入れてからは皆、一様に側にいると互いに身を抱き合いながら怯え、少しでも俺から遠ざかろうと牢の奥へと移動していく。



  仕方ないのかもしれないけど、多少なりとも傷つくな……ここまで露骨にされてしまうと。


「あー。 えっと説明受けてないですかね? 1人の女性に頼んだと思うんですけど――」

 

  そんな俺の言葉に、牢の奥から人を掻き分け、1度話した女性が牢の前までやってくる。 どうやら先程、一斉に牢の奥へと移動する人の流れに負けて、牢の前へ移動すること叶わず、奥に押し込まれてしまっていたようだ。


「すっ、すいません! お待たせして」


「いえ、大丈夫です。 僕の方こそすいません。 こんなに多くの人への説明を1人でさせてしまって」


「いえっ! そんなっ! 全然大丈夫です! ……あの、それよりもこんなにも早くまたここへ戻られたと言うことは、やはり鍵は手に入らなかったのでしょうか?」


  どうやら彼女は、鍵が手に入らず戻ってきたと勘違いをしているようで、自分が話す言葉で気を落としていき、どんよりとした空気を発している。

 

「鍵ならちゃんと手に入れたので大丈夫ですよ 」


  そう言って、彼女が今1番聞きたい言葉を口にしながら、自分のズボン。 2つしか存在しないポケットの片方に手を突っ込み、鍵を出して親指と人差し指でつまみながら顔の前へと持っていく。


「ほっ――ほんとうに!?」


「はい。 あっ、それとこことは別に囚われていた人は無事なので、知り合いだという人がいたならば安心してください。 一刻も早く外に出たいと仰られたので、洞窟の外で待ってもらっています」


  未だに後ろで固まって、俺の動向を探っている女性達にもハッキリと聞こえるように少し大きめの声を出す。


  ……状況が違うとは言え、こうもずっと大勢に注目されていると、召喚されて連れていかれた大広間を思い出すな……クソっ、今考えても腹が立つ。



「じゃあ開けますね」

 

  そう告げ、鍵をあけるために一歩、二歩と牢屋へと近づいていく。


「----ッッ」


  少し近づいただけで、何人かが短く悲鳴を漏らす。


  ……そんな悲鳴染みた声出されると、遠ざかられるよりショックだな。 少し警戒心といてから開けるか? いや、別に俺なにか彼女達に対して乱暴する訳でもないし、さっさと開けてしまおう。



  悲鳴を聞かされ、一瞬歩を止めたが再び歩き出して牢の前まで移動し、鍵を使って解錠する事に成功する。


「――出ないんですか?」


  入り口を開け、少し後ろに下がって出てくるのを待つ。 しかし彼女達は出ようともせず、さっきと同じ位置で動こうとしない。


「あの、他の盗賊の人は大丈夫なんでしょうか? ここから出ても安全ですか?」


「あぁ。 はい大丈夫ですよ。 そこに倒れている盗賊と同じように、全員絶対に起き上がる事はないですから。 なので安心して出てきて下さい。 ――あっ、すいません。 忘れてました、身体が動かないとか、体調悪い方いらっしゃったら----これ飲ませて下さい」


  会話の途中で気付き、鍵が入っていたポケットとは反対のポケットから箱を取り出し、再び牢に近づいて唯一会話をしてくれている女性に手渡す。

  渡したのは回復薬だ。 手のひらサイズの小さな箱に40程の錠剤が入っているので、全員飲まなければいけない状態だったとしてもかなり余るだろう。


「は、はい」


「えっと、僕先に洞窟の外に出ていますね? 外で待っている2人に早く戻ってきて欲しいと頼まれたので。 ここの洞窟はもう絶対に安全ですから、貴方達も用意が出来たら合流して下さい。 言わなくても分かると思いますが、出口は通路を進んで分かれ道を左です。 外の光ですぐ分かりますから」


「えっ? あ、えっ」


  戸惑った声が彼女から発せられ、困惑しているようだが、俺がここで彼女達が出てくるのを待つより、先に外に出て待っている方が早く済むと考えたので、その場を離れる事にする。



  近くで見たら結構やつれてたな……洞窟の外に出る前にさっき見掛けた水と食料運ぶか。


  そう決めた俺は、通路を左の出口ではなく、右に進んで必要な物資を回収していった。


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