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盗賊団

文章拙いですが、良かったら読んで下さい。

(少し先に開けた場所がみえる。 あの辺りか?)


  森の中、アニメに出てくる忍者のように木から木へと飛び移り移動をしていた少年は、前方に見える開けた場所の少し手前にある一本の樹木の枝に立ち、周囲を見回す。


(……あそこか)





「うぅーさみぃ。 なぁ、交代の時間まだかよ? 」



  夜が明け、日が昇り始めて明るくなり始めた早朝、男は衣服に守られていない、外気に直接あたってしまっている両の手のひらを合わせ、何度も摩り身体を縮こませながら側にいる男に向かって、本日2度目となる同じ質問を口にする。


「ハァー。 ドグ。 同じ事を何回も聞くなよ。 ついさっきも言っただろ? 後2時間は来ないって」


  質問を投げかけられた男は、ため息をつき、言葉を返しながらドグと呼ばれた男を視界に入れるべく、うつ向けていた顔を上げて隣へと振り向く。

 

「いや、わかってんだけどよぉー。 聞かずにはいられなかったんだよ! お前は寒くないのかよ」


「寒いに決まってんだろ。 ……って、お前なにしてんだよ」


  ドグは自身が立っていた場所を中心に、身を縮こませ腕を組みながら、円を描いているかのようにグルグルと歩き始める。


「動いて身体に熱もたせようとしてんだよ! クソっ! いつまで見張り役なんかやらせんだよ! 俺らここに入ってもう3年は経ってるんだぜ? そろそろ見張りなんかしなくていいようになってもおかしくないだろっ!」


  唾を地面にペッと吐きつけ、未だにこんな下っ端仕事をさせられている事に、不満たらたらという表情で

 愚痴をこぼす。


「まぁ俺らの後にこの盗賊団に入ったやつは何十人といるし、確かにこんな下っ端仕事はもうやりたくはないな」

 

  彼ら2人が所属する盗賊団は、結成されて5年にもなる。 ダーラの森にある洞窟に拠点を構え、団員が52名と盗賊団としては中程度の規模だ。

 

  いつ殺されてもおかしくない、死と隣り合わせという生き方をしている彼ら盗賊団は、人の入れ替わりが激しかった。 その中で、3年もの間生き残れるというのは、確率からしたら物凄く低いものである。

  そんな環境で盗賊を続け生き残っている彼ら2人は、いわば古参とも言えるのだが、実力が低いのもあり未だに下っ端がするような仕事をしなければいけなかった。


「ってかなんで俺らより後に入ってきたやつが俺らより立場が上なんだよ! 少しばかり強いからってふざけんなよ!」



  そんな、ストレス発散とも言える愚痴の吐き合いをしている2人に高速に接近している人物がいた。

  それは、先程までこの盗賊団のアジトがある、木々がない開けた空間を探っていた少年だ。

  少年は元いた場所から、2人に接近するまでの1キロ程の距離を、10秒にも満たない速さで10メートル近くまで縮める。 そしてそのままスピードを落とす事なく盗賊の1人とすれ違い様、手に持っていたナイフで腕に切りつけ、ほぼ横並びの位置で少年から見て奥に立っていた盗賊も、1人目の盗賊同様にナイフで腕を切りつける。


  少年に気付く事なく腕に傷を負わされた2人は、ナイフでつけられた傷の痛みに一瞬顔をしかめ、そのしかめた表情のまま金縛りにあったかのように、地面へと倒れこむ。

  そんな状況になっている中、この状況を作り出した少年は、盗賊2人が地面に伏している少し離れた場所からゆっくりと歩きながら引き返してくる。



(なっ!なにが起こったんだ!? 身体がピクリとも動かねぇ! ――くそっ声も出せねえのかよ。 一体どうなってやがる!)


  地面に伏している男の1人、ドグはただただ困惑していた。 仲間と愚痴を言い合っていた場面から、突然身体が金縛りにあったかのように硬直してしまい倒れ込んでしまったからだ。 いつも動かしているように身体を動かそうと試みるが動かない。 仲間に助けを求めるために声を出そうと試みても口が動かせない。 呼吸がしにくい。 そしていつも無意識のうちにしている瞬きが出来ない事にも気付く。


(なにやってるんだアイツ! 人が倒れてるのに寄ってもきやしねぇ! ……もしかしてあいつも俺と同じ状況なのか? そういや動かなくなる前に腕に痛みがあった。 誰かに攻撃されてこうなったのか? ああぁークソっ! 早くなんとかしねぇとヤバイヤバイヤバイ!)


  ようやく誰かに攻撃されて今の状況になってしまっている事に気付き、先程よりも懸命に身体を動かそうと必死になるが、結果は変わらない。 そしてそうしてる間に少年は2人との距離を縮めていく。



「動かせないよ。 後半日くらい」

 

  とうとう声が届く距離まで近くなると、少年は盗賊2人が知りたがっている答えを教える。


  少年が2人に切りつけたナイフは安物のごく一般に売られている物だ。 かすり傷を与えて身体を動かせなくするようになんて事は出来ない。 ならなぜ2人がこうなっているのか? それは少年がナイフに付与したスキルの効果だ。 状態異常付与。 そのスキルは付与した武器で攻撃すると、確率で相手に任意の状態異常を起こさせるといったものだ。

  かなり便利なスキルであるが、使用する者はあまりいない。 このスキルが希少だからとかこのスキルを習得している者が少ないからだとかそういう理由ではなく、単純に使えないスキルだと皆んなが思っているからだ。 その理由が相手を状態異常にする確率がかなり低いからだ。

  どの程度低いかと言うと、まず状態異常を仕掛けた本人が仕掛ける相手よりレベルが低ければ100%かからない、掛かるのは同レベルからで、5%程。 1レベル離れていく毎に2パーセント上がっていく。 つまり100%成功させるためには相手と50レベル離れてなければいけないのである。 そして更に皆んなが使えないスキルだと思っている1番の理由は失敗条件にある。 このスキルは、相手に状態異常をかけられなかった場合、付与した武器が使用不可。 つまり壊れてしまって使い物にならなくなる。 低い確率で失敗したら武器が壊れる。 そんなスキルを使う者は、つきぬけてレベルが高い強者かただのバカしかいなかった。




(クソっ! マジかよ! 動け動け動けっ! こんな所で殺されてたまるかよ!)


「俺に殺される心配してるならしなくていいよ。 俺は貴方たちを殺すつもりないから。 」


  2人の心配をよそに、少年は話し掛けながらも歩みを止めない。 伏している2人の心臓は少年が発している足音が近くなるうちに鼓動がはやくなり、覚悟を決める。 しかし少年は、告げた通り彼等をどうこうする事なく、2人の背にある洞窟の入り口に辿り着き、中へと入っていった。






ありがとうございました。

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