第27話 王太子誕生
新しく選ばれた家臣たちはよく働いた。
その間、王子と王女はいつものように子どもらしく遊び、二人でいれるあとわずかの時間を楽しんでいた。
災害は悲惨ではあったが、それをきっかけに二人の仲はさらに親密になっていた。
数週間後。国王は災害地の視察に赴くことになった。
その場所は王子と王女が最初に向かった地方であったためフレデリック王子、クローディア王女も共に行くことになった。
護衛の馬車の後ろに、豪華な国王の馬車。その後ろに王子と王女の小さな馬車。
さらにその後ろにはたくさんの物資を積めて。
二人の馬車には護衛騎士のエセルとラディ、魔道大臣のレダとソフィアも陪乗していたが、それに構いもせずに顔を見合わせて手を握り合っていた。
やがてその土地に到着すると、兵士たちとともに働く被災者たち。
あの元気を失っていた様子も随分と変わり、元気に働いていた。
そこに国王の馬車が到着したのだ。兵士は跪き、その隊長は国王を迎えた。
そして王子たちの馬車が停まり、二人が下りると、辺りから歓声が響き渡った。
「王子さまだ! 王女さまもおられる!」
「おおい。みんなで両殿下をお迎えに行こう!」
わぁあ、わぁあと二人の馬車には人の群が出来上がる。
大人に交じって仕事をしていた子どもたちも。
「おお、みな息災であったか? 危険なことはないか?」
「毎日の作業大変ね。でも苦労があるからその先はきっと喜びに変わるわ。辛抱なすってね」
二人の言葉に、住人たちは笑顔で大きくうなずいた。
中には涙を流すものも。
住人たちは、粗末ではあるがと山と重ねた山菜や山芋を、子どもたちは山で集めた木の実や木苺を献上した。
王子と王女はそんなものを見たことがなかったので、興味深く手にとって、住人たちを褒め讃える。
それを国王が兵士たちに囲まれながら見ていた。
「やれやれ。フレデリックがこの地の国民を熱狂させたと言う報告は本当だったのだな。しかしこれではどちらが国王か分からん」
「陛下。あの時の殿下の計らいは誠にお見事でございました」
と隊長も王子の活躍を褒めた。
そんな国王に気付いて、王子は大きな山芋を頭上を見えるように掲げた。
「陛下! これは住人たちが献上してくれたのです。こんなに大きくて見事だと思いませんか?」
「おお、誠だ。後ほど城のみなと馳走になろうではないか」
国王の言葉に大きくうなずいて、王子と王女は、兵士たちに運んで来た物資を住民たちの前に持ってこさせた。
「塩や精製した砂糖を持って来た。それから麦も持って来たぞ。種芋や穀物の種もあるらしい。後は係のものから内容を聞いてくれ。それから一番最後の荷車には20羽のニワココだ」
ニワココは家畜用の鳥だ。肉も卵も美味である。繁殖力も強い。
被災者たちはまたも王子の贈り物に万歳を唱えた。
そんな王子に、クローディア王女は寄り添う。
「うふふ」
「お、おい。クローディア。恥ずかしいではないか」
「おお。王子さまの顔が真っ赤だぞ」
「本当だ。それは王子さまが王女さまを好きだからさ」
やんややんやと湧く被災者たち。
まるでここに災害があったなど昔の話のようだ。
国王はそんな王子に近づいて大きな手のひらを肩の上に置く。
「皆のもの聞くがいい。今、現時点を持ってフレデリック王子を王太子に任命するぞ!」
暫く静寂。
だがその後、地の底から湧き上がるほどの歓声。
王太子任命。
正式なる国王の宣言。次期国王の誕生だ。
「こんなに民より慕われる王族を見たことがない。次期国王だ。フレデリック。フローニアだけでなく、タックア全土にその祝福の声が広がるように!」
王子は想像していなかったまさかの王太子指名にどうして良いか分からず、子どもらしく微笑んで、近くにいたクローディア王女へと寄りかかったので、またもや国民たちは囃し立て、その後「王太子万歳」の声が響いたのであった。




