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王太子さまの愛する人は  作者: 家紋 武範
小さな恋の物語
21/34

第21話 今できることを

タイライノは兵を引き連れて、先に被災地に到着していたのは被災度の軽微な地方であった。そこから軍用道路などを整地するのが目的であった。

呻く被災者の救助は後回しにして、先に道路の整地。それは先の地方に物資を送るためという名目があった。


被災者から見れば貴族は自分たちや崩れた家屋、埋もれた家財など関係ないのであろうと絶望した。



逆に情報がないフレデリック王子の一行はとにかく煙が多く上がる場所へと向かっていた。それは火事や家屋の倒壊が多いことを示す被災度の重度な場所であった。


途中から馬車での移動が困難となり、皆で歩いて被災地に向かおうと王子は号令する。

二人の近衛兵に馬車の見張りを命じて王子は王女の手を握って歩き出すとその体が浮いている。


「なんだ? これはどうしたことだ?」


家臣たちの方を振り返ると、皆も同じように体が浮いて不思議そうな顔をしている。

その後ろには魔道士の杖を少しばかり傾けているソフィア。


徒歩かちにての移動は姫様も危険ですしお疲れになります。浮遊魔法にて参りましょう」


浮遊魔法。地面より30センチメートルほど浮いている。これなら大きな余震、瓦礫による怪我などもしまい。

王子はソフィアに感謝した。


「助かる。感謝するぞ」

「……いえ」


王子と共のものが空中を浮きながら進み、倒れた木々のある丘を越えると、そこはヒドい場所だった。

まともに立っている家などなく、ひととこに固まっている人々。為す術もなく火事をそのまま放置して、呆然と見上げている。


王子たちがそこへ進むと、高貴な人が来た。救助だと少しばかり沸いたが、余りの人の少なさと、王子の小ささに、その声も次第に弱くなり消えた。

エセルが声を上げる。


「こちらにおわすは次期国王のフレデリック王子。こちらは婚約者のクローディア王女である。こちらの窮状の把握に参られたのだ。誰ぞこの地域の長老はおらぬか?」


そこで弱々しく立ち上がったのは60ほどのくたびれた老人だった。被災者たちは救済の責任者が余りにも幼年過ぎてまともな救助などできまいと、うずくまって顔を伏せてしまった。

だが王子はこの地域の長老に声をかける。


「長老よ。私と姫は見たとおり幼い」


やはりと被災者たちは思い、うずくまりながらその言葉を聞いていた。


「であるから、悲惨な状況を目で見て知りたい。我々を現場に案内してくれ」

「は、はい」


被災者たちは、少しだけ顔を上げる。ここだって悲惨には違いないが、この王子さまは歩いて現場を見たいらしい。


高貴なお方が土や泥の上を歩いて……。


長老が手を広げて案内をしようとすると、お供の老女や鎧武者たちが声を上げる。


「殿下! 持参致した麦を炊き出し、麦粥を配給する準備を致したいと思います!」

「殿下。我々は帷幕いばくを張り、そこに物資を運んで、災害救助本部を構えたいと思いますが構いませんね!?」


家臣たちの提案に、王子は振り向く。


「良く気付いてくれた。私が分からないことはいろいろと教えてくれ。よきに計らえ」

「はい!」


モロスや侍女、近衛兵たちは荷物を積んだ馬車へと駆けていった。

王子と王女へは警護騎士二人とジカルマの魔道大臣の二人が伴をする。


長老の案内で、王子たちは被害状況を確認する。その後ろには王子へ興味を持った被災者がぞろぞろとついて行った。

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― 新着の感想 ―
[一言] これ不味くないですか? 王様生きていても、先に到着されたら討たれちゃわないですかね(;゜Д゜)ハラハラ あーそうか大丈夫だったんだっけこれ過去だから 災害の場合、兎に角道を繋げて物資を運ぶ…
[一言] やっぱりタイライノなんてヤツはろくなヤツじゃねーな。 王子!好感度上げるチャンスっすね!(笑)
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