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王太子さまの愛する人は  作者: 家紋 武範
小さな恋の物語
20/34

第20話 有志を集めて

ドアを開けるとそこには、ジカルマの魔道大臣の二人。

王子はその二人に頼み込んだ。


「君たちの魔法、見たことがある。どこまでできるか分からないが、今我が国は災害に苦しんでいる。どうか力を貸してはくれまいか?」


しかし二人は一瞥しただけで興味なさそうに目をそらした。

王子はどうしていいか分からずにもう一度尋ねる。


「どうか力を貸してくれ。今キミたちの魔法が必要なのだ」

「我々は……」


「うむ」

「ジカルマにおいては大臣なれど、貴国においては何者でもありません。空気とお思い下さい。我々の仕事はクローディア王女の身の回りの世話、警護でございます」


王子とその側近たちは凍り付く。

王子には政治的な力は無い。だからここでジカルマの魔道大臣である二人の力をタイライノやワルドラス、ひいては他の臣民たちに見せつけることができたのかも知れない。

だがその返答は冷たいものであった。しかし当たり前といえば当たり前だ。

他国の大臣が何の見返りもなく力を貸すなど。

しかも貸したことが本国にバレたら咎められるかも知れない。

ジカルマの二人の言い分はもっともだったのだ。


「二人とも。殿下が困ってらっしゃるのよ? 力を貸してお上げなさい」


もちろんクローディア王女もフレデリック王子の味方をするも、二人は首を横に振った。


「いけません。我々はそのためにここに来ているのではないのです。未来の国王のお妃さまをお守りするのが使命です。災害救助は使命に含まれてはいないのです」

「でも……」


王女はそれに言葉を返したいが小さい子どもではそれ以上の言葉を持ち合わせていなかった。


「はっはっはっは」


突然の笑い声。それは大人たちの足下から。

みんなしてそちらに目をやると腹を抱えて笑っていたのは、誰あろうフレデリック王子であった。


「未来の国王のお妃? それはクローディアのことか? それなら言い直すといい。新国王にせいぜい田舎に10戸ほどの領地を拝領はいりょできるかも分からないフレデリックの嫁だとな」


ジカルマの魔道大臣の二人はハッとした。このままでは、自分は王位を追われる。そのために力を貸せと言うことだと。

もしも王子が王座を追われたら、クローディア王女はなんのための政略で嫁ぐのだ? 同盟で嫁ぐのだろう。本国にそれを知りながら見捨てたとあっては間違いなく咎められる。

小さな子供にやり込められて二人の目は点になってしまった。

しかし王子は踵を返しながら声を張り上げる。


「モロス。客人は力を貸してくれんそうだ。我らだけでやるぞ。ラディ。エセル。粗末でもよい。馬車を用意せよ。災害地に向かうぞ!」

「は、はい!」


モロスが応じる。ラディとエセルは外へと駆け出した。それについて近衛兵たちも。

王子は部屋に戻り、侍女たちに命じて自分とクローディアへと軍服姿へと着替えさせた。豪奢な服ではなく、戦地へと向かう格好。

それに着替えて宮殿を出ると、ラディとエセルが粗末ではあるが馬車を用意していた。それも五両。二両には麦袋が大量に乗っており、一両には木造りの食器が乗っている。注文していないが食糧は大事だ。王子は自分が気付かなかったことを気付いてくれたことを褒めた。


「おお。よく気付いてくれた。被災者も腹を空かせているだろうからな」


用意したのは近衛兵の一人で照れくさそうに頭をかいた。


「クローディア。今から悲しいものを見るかも知れない。キミは無理しなくてもいいんだぞ」

「いいえ。私も殿下と一緒に参ります」


「それでこそ未来の国王のお妃だ」

「はい!」


皆が馬車に乗り込むと、そこにジカルマの魔道大臣の二人もやって来た。


「どうした客人。我々は今から災害救助へ向かうのだ。物見遊山ものみゆさんではないぞ」


と王子が言うと、二人は自分たちの負けだというゼスチャーをした。


「我々は姫様を警護するのが使命ですから、同じ車に陪乗ばいじょう致します」

「そうか。それは殊勝しゅしょうだ」


フレデリック王子、クローディア王女、侍従長モロス、警護騎士エセルとラディ、ジカルマ魔道大臣ソフィアとレダ、近衛兵6名、侍女6名。この二十に満たない者たちが副侍従長へ留守居を託し、昼夜を問わずに被災地へと向かった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 急げ!急げ! 手柄を一人占めするんだー!(笑)
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