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王太子さまの愛する人は  作者: 家紋 武範
小さな恋の物語
12/34

第12話 かわいい彼女

濡れた服。濡れた髪。小さな二人は手を握り合いながらモロスたちの足音が近づくのを待っていた。やがてそれらは中庭に現れる。


「まぁ! どうやってここへ?」


モロスはカンカンになって寝ている王子の顔へ近づく。

王子はイタズラっぽく笑った。


「何がおかしいのです! 殿下!」

「モロス。お役目ご苦労。我々の服が濡れてしまった。さっそく着替えさせろ」


「まぁ本当にずぶ濡れだわ? 一体どんな遊びをなすったのです。風邪でもお召しになったら、陛下に顔向け出来ませんわ。殿下の服はすぐにご用意出来ましても、王女殿下の服は私、お預かりしておりません」

「なんとそうなのか? どうしたものか……」


体を起こした二人。濡れたクローディア王女がブルリと体を震わせる。このままでは風邪を引いてしまうと思ったところで、噴水の近くの空間に大きな穴が空く。

みな、何が起こったか分からずにいると、その穴からヒョイと顔を出したのは先ほどの式典にもいたジカルマの魔道大臣の二人であった。


「まぁ。ソフィア。レダ」

「見つけましたよ姫様。お召し物がずいぶんお濡れになって」


ソフィアがパチンと指を鳴らすとクローディア王女のドレスがたちまち別なものに変わる。

タックアのものたちは口を開けてそれを見ていた。


「王子様も式場とはずいぶん違うようですね」


レダが嫌みっぽく言うと、その前にモロスが立ち眉を吊り上げる。


「たとえ客人といえども殿下に無礼は許しませぬぞ!」

「そうですか。それは失礼」


悪びれた様子もなく腕組みをするレダにモロスもこれ以上は何も言えない。

フレデリック王子を回れ右させて部屋まで連れて行くことにした。


部屋に入ると王子も大変興奮した様子。

婚約者の王女。魔道大臣が使った魔法。

小さな子供にとって興味深いものばかりだ。


そんな王子をよそに侍女たちはせっせと着替えをさせる。

王子の目の前ではモロスが手に持った扇をつぶさんばかりに握ってヒステリックに何度も往復していた。


「モロス。そんなにイライラするな」

「なーにをおっしゃいます。私はイライラなどしておりません。殿下がまた無法なことをなすったので気を鎮めているのでございます」


「……彼女かわいかったなぁ」

「ん?」


王子の言葉にモロスも大変にこやかな表情となり、彼の前に近づく。


「そうですわね。なんでも産まれたときに女神が現れて美の祝福を受けたとか。私も見るまでは半信半疑ではございましたが、なるほどどうして。殿下にぴったりの婚約者かと存じます」

「まぁ美しさなどどうでもいいが楽しい子だった。彼女はこれから勉強するのであろう? 遊ぶ機会はあるのかな?」


「当然でございましょう。詰め込みすぎてもよくありません。息抜きの方の時間が多いです。それに言葉を教えるのは私です」

「ほう。モロスが」


「左様でございます。しかし殿下もその時間はちゃんと武道や政治学のお勉強をなさいましよ。師範や先生は呼んでございますから」

「ああ。大丈夫だ」


王子はそういって微笑んだ。

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