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王太子さまの愛する人は  作者: 家紋 武範
小さな恋の物語
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第11話 はじめての遊び

今までは床に寝そべって足音が離れるのを待っていた二人は、音を立てずに立ち上がった。王子はクローディア王女のドレスに埃がついているのを見ると手で叩いてそれを落とす。


「ありがとう」

「いいさ。掃除が行き届いておらんな。モロスのヤツを叱ってやらねば」


「ふふ。あの こわそうな ひと?」

「そう。実際には怖くて言えないけどな。さぁ行こう」


「いくって どこへ?」

「城を案内するっていったろ? まぁそこら中にボクたちを捜してるヤツらがいるだろうから、人気のないところだけだけど」


二人はこの無人の部屋からドアからそっと出る。

入るときはイレギュラーに壁からだったが、出るときは反対方向のドアから。王子がまわりを見ると巡回の兵士もいなさそうだ。


「よし。クローディア。こっちだ」

「は、はい」


小さなクローディア王女の手を握って歩き出す。

クローディア王女のほうでも胸がドキドキしていた。

それは回廊が暗いから怖いというだけではない。

前に進むフレデリック王子の背中を赤い顔をして見つめていた。


やがて目の前が少しずつ明るくなって行く。

わずかに小鳥の鳴き声が聞こえた。

その先には噴水のある中庭。

小さな日陰の庭園だが二人は土を踏みしめ、顔を見合わせてニコリと笑った。


それはたった二人だけの遊び。

短い距離の追いかけっこ。隠れる場所の少ないかくれんぼ。

噴水の水を互いの手でさわるだけ。

だがとても面白い。


「ジカルマでは誰と遊ぶんだ?」

「おねえさまと おにいさまが おります」


「へーいいなぁ。兄弟がいるのか。ボクには兄弟がいないからなぁ」

「そうなん ですか」


「うん。だからこうして歳が近い子供と遊ぶのは初めてさ」

「ふふふ」


「えーい!」


テンションが上がったフレデリック王子は、手ですくった水をクローディア王女の方へ投げると、ドレスの端の方へ当たった。


「キャ!」

「ほらほら逃げないともっとかかっちゃうぞ!」


「ひどいわ。えーい」


クローディア王女もフレデリック王子へと両手ですくった水を投げる。高貴な身分の自分が、まさか反撃されると思わなかった王子はびしょびしょになった。

すかさず王女は噴水の反対側に隠れる。


「うー。やったな~」

「うふふ。おうじ でんかが いけないんですわ」


「よーし。みてろよ~」


二人は音を立てて声を上げながら楽しく水の掛け合いをした。

豪華な衣裳がずぶ濡れになり、体が重くなると疲れて二人は体を並べて石畳の上に横になった。

城壁の上に青空が見えるのを二人で黙って見上げていた。


「クローディア。面白いヤツだな」

「うふふ。たのしかった ですね」


空を小鳥が舞い歌う。

二人もその様子にますます楽しくなり、大声を上げた。


「うぉーい!」

「ぉーい!」


王女も王子の真似をして後に続く。

二人は顔を見合わせてまた笑った。


「こっちだわ!」


近くからモロスの声が聞こえる。王子たちの大声が聞こえたのであろう。

だがフレデリック王子は微笑んで寝そべったまま動かなかった。

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