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異世界でスマッシュ!  作者: FUMI
6/44

第6話 『スマッシュ』


……ミー、トミー。

…誰かが呼んでる。トミーって誰だ?…俺だ。


「トミー、起きな。朝だよ」


目を覚ますと、すでに革鎧を着込んだマグフィがいた。


「おはよう」

「おはよう、朝飯食って出発するよ」

「はーい」


着替えなんて無い。そのまま起きるだけだ。靴下とパンツは洗わないと臭いがヤバイよな。自分で匂いを嗅ぐ勇気はない。今日帰ったら手洗いしようかな。でも洗い替えないしな。バンドーヤさんに借りた金で買うか。

そうだ、ステータスどうなってるかな。寝たら回復するのか。


トミー Lv.3

HP 20/20

MP 26/20+6

ちから 13

防御力 12

素早さ 12

魔力  13+3


スキル

アイテムボックス 逃げ足Lv.1 精神力Lv.1


良かった。回復してます。ただでさえ少ないのに回復しなかったらシャレにならん。

一階に下りると、マグフィとポントはすでにテーブルについている。この宿屋は、入って正面に受付カウンター、向かって左手に小さな食堂スペース、右手に二階へ上がる階段がある。昨日はすぐに二階へ上がってしまったから食堂スペースには気付かなかった。

食堂といってもテーブルが二卓と椅子が六脚あるだけだ。狭い。


「あんたの角ウサギのおかげで、今日は朝から肉が食えるよ。ありがとね」

「ありがとうなんだな」

「どういたしまして、いろいろ教えてもらってばっかりだから、喜んでもらえて嬉しいよ」


3人で肉入りのシチューを食べ終えると早速出発だ。

外はまだ薄暗い、朝霧が立ち込める中、颯爽と歩き、東門をくぐる。俺のイメージの中ではドラマのワンシーンのようだ。俺達カッコいい。

見送る彼女がいれば最高なんだけどな。「いってらっしゃい」なんて言ってくれて、キスをする。我慢できずにそのままベッドに逆戻り…。


「あんた、この辺の地理には明るいのかい?」

「は?え?あ、いや、まったくわかりません」


いかん、妄想に持ってかれてた。


「だろうと思ったよ。今のうちに説明しといてやろうかね。この街はヨウラン、エンシンの中でも東方に位置していて、4番目か5番目に大きい街らしい。あたしも他の街には行ったことないから比べようがないけど、そうらしいよ。近い街だと西のブゼンと南のコチクだね。この街の西には山があるからブゼンに行くには、南に迂回しないと行けないけどね。だから南門はいつも賑わってるよ、ブゼンとコチク両方から人や物が行き来してるからね」

「西っていうと、丘の上に大きな木があるよね」

「そうそう、良く知ってるね。あれはラーネの大樹って呼ばれてるよ」

「北側には昨日一緒に行ったね。見た通り野原だよ。その先には雑木林が広がってて、狩りに行ったりすることもあるね。そんでもって、東門を出て1時間ほど歩くとダンジョンがあるんだ」

「ダンジョンについても教えてもらっていい?」

「あんたは本当に何にも知らないね。世間知らずにもほどがあるよ」

「面目ない」

「トミーは世間知らずなんだな。ハハッ」

「あんたも大して変わんないだろ。ったく、ヨウランのダンジョンはゴブリンのダンジョンだよ。地上に開いた穴から地下へ下っていくんだ。下に降りれば降りるほど強いモンスターが出てくる。下に行けばゴブリンメイジやらゴブリンソルジャーやらが出てくる。あたし達は7層までしか行ったことはないけどね。2人だと安全を考えて5層までにしてるよ」


そうこう話していると壁が見えてきた。高さ4mはあろうかという街の外壁のように立派な壁だ。


「あの壁はなに?」

「あれがダンジョンの防御壁だよ」

「防御壁?」

「そうだよ、スタンピードが起こった時にそれを食い止めるためさ。だからここには領兵が常駐してんだよ」

「スタンピードってよく起きるの?」

「起きないように、あたし達が掃除してんだよ。ダンジョンの中でモンスターが増えすぎると、外に溢れ出してくんのさ」

「もしスタンピードが起こったら、どうなるの?」

「全力で逃げる。それだけだよ」

「それだけなの?!」

「大丈夫だよ。あたし達がいるような上層に来る前に、他の奴らが逃げてくるからわかるんだ。それに、あんたがレベリングするのは1層だよ、なんにも心配することないよ」


心配だ。ここまでついて来ちゃったけど、レベル3の俺が入って本当に大丈夫か?

ズンズンと進むマグフィに、ちょっと待ってとは言えず、後に続く。

街のように大きな門は無い。人が通れるだけの扉があり、その前に領兵と思われる2人組が立っている。軽い挨拶をかわすと扉を開けてくれる。

扉を入ると、中央に穴の開いた大きな岩があった。あれがダンジョンの入口か。入口の前にはパーティだろうか、10人くらい人がいる。

この外壁はその岩を取り囲むように丸く築かれているようだ。壁の内側にはぐるっと堀が作られていて、扉の前だけ堀を渡る板がかけられている。

なんか厳重じゃない?ダンジョンへの警戒感半端ないんですけど。


「何してんだい、行くよ」


ボーッと眺めていたらマグフィ達はもう堀を渡り終わっていた。慌てて俺も渡る。

入口に近づくと、マチルダで声をかけてきた金髪イケメンのブレンがいた。どうやらこの団体さんはブレンのパーティのようだ。


「マグフィじゃないか。どう?決心はついたかい?」

「だから、ずっと断ってるだろ。しつこい男だね。行くよ」

「あれ?君は昨日の逃亡奴隷君じゃないか。もしかしてマグフィ、この子を仲間にしたのかい?お人好しだね。でも、そんな所が君の魅力なんだけどね」


逃亡奴隷じゃありません。ムキになって反論してもしょうがないから、聞いてないフリ。

そんなことより、ブレンはマグフィを口説いてんのか。そんで相手にされてないと、そういうことか。プププ、ざまあ。

ふとポントを見ると、全然違う方を向いている。てっきりブレンに敵意剥き出しかと思ったら、そうでもないんだな。ポントの見ている先にはマグフィに似た革鎧を着た男がいた。まだ若いが勝気な面構えからプライドが高そうなのが窺える。

ポントと目が合うと、フンッと鼻で笑った。ポントは鼻息も荒くその若い男を睨みつけ、今にも飛びかかりそうだ。これが敵意剥き出しというんだろうな。


「ポント、行くよ」


マグフィに言われても、ポントは若い男を睨みつけたままだ。


「ポント!行くって言ってんだろ!」

「でも、あいつが…」

「早くしな!」


ポントは渋々といった感じで、穴に入っていく。


「1層でその子のレベリングかい?そんなことしてたら今日の宿代も稼げないじゃないか。僕のところにおいでよ。今日はこれから11層に行くつもりなんだ、バイゴウのパーティ『ボルドバ』に次ぐ実績になるね。お金には困らせないよ。いつでも待ってるからね」


マグフィは無視して、俺の背を押しながら穴へ入った。

入ってすぐは、くだりの階段だった。螺旋状におりると、そこには洞窟が広がっていた。

ゴツゴツとした岩が入り組んでいて、1人で歩いたら迷子になりそう。だからダンジョンていうのか。


「さあ!気を取り直して行くよ!」

「おー!」


ノリで元気よく返事したはいいけど、大丈夫か?


「ここから左に行くと2層への階段があるからね。あたし達は反対の右の方へ行くよ。階段への道はゴブリンいないからね」

「なんでいないの?」

「そりゃあ、下へ行く奴らにやられちまうからさ」


なるほど、そりゃそうだ。

ギッギッ。少し歩くと、変な音が聞こえてきた。ギッギッ。なんだろう?虫か?やめてよ巨大な虫とか。


「いたね。まずはあたし達がやるから、あんたは見てな」


マグフィはショートソードを抜き、ポントは左手に木の大盾、右手に長柄のハンマーを構える。

ギッギッという音が近づいてきたと思ったら、岩影から2匹のゴブリンが現れた。

緑色の皮膚に、俺の胸の高さくらいの身長で、知性のかけらも感じられない小さな目。1匹は素手で1匹は木の棒を持っている。

ポントが前に出て、木の盾でゴブリンの攻撃を受ける。マグフィが横から隙を見て攻撃、危なげなくゴブリン2匹を屠る。

楽勝だ。ゴブリン弱い。いけるかも。


「ね、心配ないだろ。ポントが前に出て攻撃を受けてくれるから、あんたはどんどん打ちな。あたしはあんたの横にいて、向かって来るゴブリンをガードしてやるから安心をし」

「はい」


2人はゴブリンの死体を確認すると、小さな石を拾う。


「これは魔石だよ。体のどこかに魔石がくっついてて、死ぬとコロンと落ちるんだ。これが金になるからね、忘れずに回収するんだよ」

「了解しました」


次に遭遇したゴブリンは1匹だった。しかも素手。チャンス!

ポントがゴブリンに近づき、ハンマーを一振り。ゴブリンは頭をかち割られ、倒れた。へ?


「ポント、あんたがやっちゃダメじゃないか」

「あっ!ご、ごめんなんだな」


ごめんじゃねーよ!お前がやってどーすんだよ!もう!守ってもらってるから声に出しては言えないけどね!頼むぜポント君よー!

次も1匹で来いと思っていると、2匹来た。しかも2匹とも木の棒を持っている。くそっ。


「大丈夫。あんたには近づけさせないから、どんどん打ちな」

「押忍」


例によってポントが前に出て、2匹を食い止めてくれる。ゴブリンは角ウサギよりも的がでかい。動きも遅い。絶対外さねぇぞ。

空中に出したシャトルを渾身のスマッシュ!

胸を狙った打球は、かろうじて腕に当たる。あぶねー、外すとこだった。なんとか当たってよかったよ。

ゴブリンはシャトルの当たった左腕を押さえて蹲ると、攻撃した俺を睨んだ。立ち上がると、木の棒を振り上げて俺に向かってくる。

うぉぅ怖ぇ。助けてマグフィ姐さん。

俺の数歩手前で、横からマグフィの靴底がゴブリンの顔面を捉えた。プロレスラーのようなキックだ。マヌケにも倒れたゴブリンに追撃のスマッシュ。

お腹にヒットすると、ゴブリンは木の棒を離して、お腹を押さえ苦しんでいる。

マグフィが足で押さえつけてくれる。

俺はわかりやすいようにリキャストタイムを声に出して数える。


「いーち、にー、…さん!」


至近距離からのスマッシュ!

シャトルはゴブリンの胸に当たり、俺の頭の中でピロンと音がする。

ゴブリンのこめかみにくっついていたホクロみたいな石が、コロンと地面に落ちた。死んだってことだな。3発か、2人が1撃で軽々と倒しているから、まだまだなんだろうな。

それより、モンスターといえど二足歩行の生き物を殺すのはちょっと抵抗があるな。


「やったね、その調子だよ。ポント、そっちはやっときな」


ポントは頷くと、ハンマーひと振りでゴブリンをやっつける。


「あんたレベル上がったんじゃないかい」

「確認してみる」


トミー Lv.4

HP 20/23

MP 26/22+6

ちから 14

防御力 13

素早さ 14

魔力  14+3


スキル

アイテムボックス 逃げ足Lv.1 精神力Lv.1


「うん、上がってる。レベル4」

「よしよし、次行くよ」


魔石を拾っていると、むこうから棍棒を担いで走ってくるゴブリンが1匹。

ポントがゆっくりと盾を構える。走ってきた勢いそのままに、ゴブリンは棍棒を盾に叩きつけた。どうだと言わんばかりの勢いだが、ポントが盾を前に突き出すと、ゴブリンはひっくりかえる。ポントがチラリとこちらを見た。わかってますよ、スマッシュいきます。

シャトルがゴブリンに当たった瞬間、光った。ピロンと音がする。

ゴブリンはピクリとも動かない。やった、1発で仕留めた。


「おっ!クリティカルだね」

「やっぱり今のクリティカルなんだ。1発だったよ」


またレベル上がったんじゃない?


トミー Lv.5

HP 20/25

MP 26/25+7

ちから 15

防御力 15

素早さ 15

魔力  15+4


スキル

アイテムボックス 逃げ足Lv.1 精神力Lv.1


よっしゃあー!上がってるぜ。連続レベルアップ!

レベル5、キリのいい数字だ。特殊スキルのバドミントンのほうに何か変化は…。


バドミントン

ラケット   E

攻撃力     F

速度      F

リキャスト   F

命中精度    F

クリティカル  F

属性     ー

『スマッシュ』


変化無…っ!下に『スマッシュ』って出てる。どういうこと?スマッシュの威力が増すとかかな?

ヤバい、期待がハンパない。


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