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異世界でスマッシュ!  作者: FUMI
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第1話 特殊スキルがバドミントンてどういうこと?


俺の名前は富志田とみしだ 正之助しょうのすけ20歳。日本に数世帯しかいない珍しい苗字な上、相撲の行司のような名前を付けられた俺は、絶対に同姓同名がいないと確信している。

そんなことはどうでもいい。


どうやら俺は死んだ。…らしい。


「オッス!オラ神様。プププ」


見渡す限り真っ白な世界で、目の前には自称神という人物が立っている。燕尾服にシルクハットをかぶった、ぽっちゃりとした10歳くらいの男の子だ。


「あの、説明してもらってもいいですか?」

「え?わかんない?あの有名なアニメのパロディだよ。ほんとにわかんなかった?ほら、オッス!オラ悟…」

「いやいや、そこじゃなくて、この状況ですよ。俺はなんでここにいるんですか?」


ええとこのぽっちゃり小学生にしか見えない。


「死んだからだよ」

「かる!そんなにあっさり死んだって言われても」

「えー面倒くさい奴だなー。はいはい、じゃあいきますよ。えー、コホン。…君は…」


ぽっちゃり小学生神様は少し俯き加減に歩き、キッとこちらを睨むと、ビシッと俺を指した。


「死にました!」


ドヤ顔がムカつく。別に言い方を改めて欲しかったわけではないのだが。

なんだよリアクション薄いなぁと、ぶつぶつ言っているのが聞こえるが無視する。


「死んだのはわかりました。ただ俺はどうやって死んだんですか?全然覚えてないんですけど」

「あーそれね、あのー、トラックがつっこんでドッカンて感じ」

「いや、だから軽いな!」

「なんだよ。急にテンション上がる奴だな」

「テンション上がってんじゃないんだよ。イライラしてんだよ!」

「まあまあ、イライラしないで。もう死んでるんだから。プププ」

「プププじゃねーよ。人の死をなんだと思ってんだよ!」


ハァハァ、こいつ本当に神様か?見た目小学生だし。超適当だし。


「だから、道を歩いてた君の後ろからトラックが突っ込んで、死んじゃったの」


◯| ̄|_…俺の運の悪さよ。

まだ彼女もいないってのによ。ちくしょう。あんなことやこんなことしたかったなぁ。

だがここで俺はハッと気付いた。

夢だ。これは夢だ!なんだよ、もう。ビックリしたー。そうだよ夢だよ。こんな神様いるわけねぇじゃん。焦ったー。


「あれ?なんかホッとしてない?一応言っとくけど、これ夢じゃないからね。たまにいるんだよねー。夢だとか言ってほっぺつねる人。昔、ほっぺつねるどころか地面に頭叩きつけてた人いたけどね。あれは笑った。プププ」


◯| ̄|_…夢じゃないのか。ちくしょぅ。


「プププ。へこんでる」

「最悪だ。なんて運が悪いんだ」

「そう、運が悪い。君は運が悪いんだよ。可哀想。プププ」

「うるせぇよ!わざわざ笑うために呼んだのかよ。暇か!」

「うん、暇」

「暇なのかよ!」

「プププ。めっちゃつっこむじゃんこいつ」


ムカつく。死んでるのにこんなにムカつくものか。このくそ小学生殴ってやろうか。


「可哀想だから、チャンスをあげよう」

「へ?」

「プププ。いい顔。ちょうどいいマヌケな顔」

「今、チャンスって言いました?」

「言ったよ」

「じゃあ生きかえらしてくれるんですか?」

「そう、生きかえらしてあげます」


おお!なんだよ、ただのムカつく小学生じゃなかった。さすが神様!グッジョブ!


「ありがとうございます。なんだ早く言ってくださいよ」

「君はこれから別の世界に転移します。テンプレどおりスキルとかちゃんと用意してるから安心してね」

「へ?」

「プププ。いい顔、ちょうどいいマヌケな顔」

「異世界?ですか?」

「プププ。そうだよ。地球とは違う世界ね。魔法使えたり、モンスターとか出没したり、楽しいこと盛り沢山だから、乞うご期待!」

「乞うご期待!じゃねーよ!元の世界に戻してくださいよ。モンスターとか怖いし、魔法使えなくても大丈夫です」

「ムリ!もう決定してるから」


無理ってなんだよ、勝手に決めてんじゃねぇよ。うわー、モンスターとか大丈夫かよ。こえーよなー。なんとかゴネて元の世界に戻してもらえないかな…。

…ちょっとまてよ。スキルって言ってたな。こういう場合だいたいチートスキル貰えるって相場は決まってるし。考えようによっちゃあ元の世界に戻るよりいいかも。全然モテなかったし。向こうの世界で最強勇者になるのも悪くないか。絶対モテるし。ウハウハなんじゃーねぇか。


「わかりました。異世界、行きましょう」


俺はサムズアップして、爽やかな笑顔で答える。


「なにそれ、キモ」

「気持ち悪くねぇよ。最高の笑顔だろーよ」

「じゃあ納得してもらったところで、早速いくよ」

「ええ?!もう?ちょっと待って。まだなんか心の準備が」

「いやいや、もういくし。飽きたし」

「飽きたってなんだよ」

「そういえば君名前なんだっけ?」

「は?富志田正之助だけど」

「プププ。珍名さん」

「うるせぇよ」

「名前長過ぎるし、トミーにしといたから」

「は?」

「そんじゃいくよ」

「おいおい、ちょっ…」


ぽっちゃり小学生神様はクルッとその場で一回転すると、右手を上げ、振り下ろす。


「逝ってらっしゃい」


逝くじゃなくて行くだろうが、などと考えていると、白かった世界が徐々に黒く変わり始めた。


「ああ、そうそう忘れるとこだった。これあげる」


ぽっちゃり小学生神様は懐からガラス玉を取り出して放り投げてきた。俺は上手くキャッチできず、お手玉するもなんとか握りしめた。


「それ大事だから失くさないでね」

「え?これ何…」


ぐらりと体が揺れたかと思うと、どんどん沈んでいく。沈む速さが増していき、気がつけば俺は真っ暗な世界を落下していた。


「あ、それと、起きたらステータスを確認してねー。それとそれと、君の他にもあと2人召喚してるからー、会えたらいいねー。あとねー、基本的には君の自由なんだけどー、勇者を助けて魔王を退治してくれてもいいよー」


遠ざかっていく小学生神様が早口で何か叫んでいる。


「えー?なにー?なんか大事なこと言ってないー?ちゃんと伝えてからやれよー!あと、ちょうどいいマヌケな顔ってなんだよー!」


なんだよー、なんだよー、なんだよー…。

自分の声がこだましているのを聞きながら、意識を失った。


〜〜〜


目が覚めると小高い丘の上の大きな木の下だった。慌てて起き上がり、周りを見渡すが、のどかな森が広がっているだけだ。

ふと右手の中に何かを握っていることに気づいた。手を開くと卓球の球くらいのガラス玉があった。透明な玉の中には「心」の文字が入っている。上下左右どこから見ても「心」の文字が正面に見える。どーなってんだ。っていうか、このガラス玉があるってことは、あれは夢じゃなかったんだな。


「異世界に来たのか」


一人つぶやく。

もう一度周りを見渡し、とりあえずの安全を確認した。


「ステータスがなんとかって言ってたな」


すると目の前の空中に文字が現れた。


トミー Lv.1

HP 15/15

MP 19/15 + 4

ちから 10

防御力 10

素早さ 10

魔力  10 + 3


スキル

アイテムボックス


特殊スキル

バドミントン ▼


「おお!VRみたいだ。すげぇ」


今更ながら異世界を実感する。


「どれどれ、ステータス確認しましょうか。あ!ほんとに名前がトミーになってやがる。あのぽっちゃり小学生め」


まぁでもこっちの方がいいかも、富志田って珍しいから覚えてもらいやすそうだけど、そうでもないんだよね。あの珍しい名前の人、って覚えられるだけでさ。異世界は心機一転トミーでいくか。


「Lv.1はしょうがないか、ちからとか防御力とか全部10なんだけどこれって高いのかな?高くあってくれ。頼む」


モテモテウハウハ勇者ライフが待ってるはずなんだ。女子に囲まれてあんなことやこんなことまで、ハァハァ、こらこら喧嘩しないの、順番に可愛がってあげるからね、エヘヘ。


…いかん、妄想に意識もってかれた。


「続きましてスキルはっと。おっ!アイテムボックス!これこれ!なんだよぽっちゃり小学生わかってんじゃん」


試しに足元の石を拾ってみる。アイテムボックスを意識すると手の上の石が消えた。今度は出してみる。石を意識するだけで手の上に石が現れた。


「よしよしよし!アイテムボックスよし!」


思わずガッツポーズをしてしまった。だって嬉しかったんだもん。異世界といえばこれって聞いてたんだもん。カバンいらないって超便利じゃん。

神様に失くすなと言われた、さっきの「心」が入ったガラス玉を早速アイテムボックスに収納しようとした。が、ピクリともしなかった。入らない。

不安になり木の枝や着ていたTシャツなど手当たり次第にアイテムボックスへ収納してみたが全て問題なく入った。なぜかガラス玉だけはアイテムボックスに入れることができないようだ。なんで入んないんだよ。これ絶対失くすやつじゃん。めんどくさいなぁ。やっぱりあのぽっちゃり小学生使えねぇな。

しかたなくガラス玉をズボンのポケットにしまう。


「で、最後に特殊スキル。ん?バドミントン?」


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