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七話 気づき


「ちっ……まさか、お兄ちゃんが先輩を使うとは思わなかったぜ……ずるいぞ! あ、先輩! ご飯おかわりです」


「ふははは! ずるい? 作戦勝ちと言ってもらおうか! あ、俺は味噌汁のおかわりで」


「はいはい……2人とも、ご飯を食べながら会話をしないでください。ご飯粒が飛んでいます」


 朱音は毒島のおかげで見事飛び起きた。

 今は、ちょっと遅めの朝食を食べているところである。


 適当に食パンで済ませようと思ったのだが、「いつもこんな食事を?」と見かねた毒島が、わざわざ自分の部屋からご飯の残り物を持ってきてくれたのだ。


 まさか朝からおいしい白米と、味噌汁、鮭の塩焼きを食べられるとは思わず感動してしまった。


「毒島は本当に料理が上手いよな。誰かに教えてもらったのか?」


「独学です……というか、苗字で呼ばないでください」


「じゃあ、師匠?」


「それもやめてください……名前でいいと言っているのに」


 いや、それはちょっと……。

 俺が、毒島のことをなんと呼ぼうか悩んでいると、白米を口に掻き込んでいた朱音が口を開いた。


「もぐもぐ……お兄ちゃん、クソ童貞なんで。絶対に女の子の名前とか呼べないんで。許してやってください先輩」


「誰が童貞だ! 童貞だけど……つーか、お前も処女だろうが!」


「アーちゃんはいいんだもーん! 女は処女の方が価値が高いんじゃい!」


「あーはいはい、お2人の下半身事情などどうでもいいですから。食べながら喋らない……めーっですよ?」


 毒島は頭が痛いのか、額を抑えながら俺と朱音に指を差して注意する。朱音は、「ご、ごめんなさい……」としょんぼりした。


 毒島に注意されたからだろう、普段は、俺が注意しても絶対にこんな風に小さくならない。

 よし、今度からは毒島に朱音を注意してもらおう。そうしよう。


 俺が勝手にそんなことを考えていると、毒島の目が俺に向けられる。


「……それで、どうするのですか。いい加減、名前で呼んでいただきたいのですが」


「それは……というか、お前も名前で呼ばれるのとか、抵抗ないわけ?」


「抵抗というか、私がそう呼んで欲しいと前にも言ったでしょう? 次に苗字で呼んだら、もうご飯作りませんよ」


 それは非常に困る。

 俺は頬を引きつらせ、嫌々ながらも毒島の名前を口にすることに。


「い、郁乃……」


「はい。それでいいのですよ。それで」


 毒島――郁乃は、うっすらと微笑を浮かべ、俺が頼んだ味噌汁のおかわりを差し出した。

 俺は少し躊躇いがちに、味噌汁の茶碗を郁乃から受け取る。


「あれー? お兄ちゃん、顔が真っ赤だぞー?」


「うるせえ……このダメ妹……しばくぞ」


「ひっ……こ、これガチギレしてる時のやつっ!?」


 朱音がカタカタと震えて、しばらく俺に対して怯えてしまったが……まあ、本日も小藤家は概ね平常運転である。



 再び郁乃が作ってくれた昼食をいただき、かれこれ時計の針が15時を回ったころ。俺は郁乃と2人で、商店街まで夕食の買い出しに来ていた。


 もちろん、俺は荷物持ちである。


「夜は鍋だったよな」


「そうですね……お肉があればいいのですが」


 どんな鍋だろう。すき焼きだろうか。

 郁乃にメニューを尋ねても、「秘密です」としか返ってこないので、食材から予想するしかない。


 とはいえ、鍋の食材なんて無限大だ。食材から、何鍋であるかを検討するのは難しい。


 ふと、商店街を歩いていると、若い夫婦が子連れで買い物をしている姿が目に入った。特別、珍しい光景でもないが――親父と母さんの顔が脳裏に過ぎった。それを振り払うために、頭を振り、誤魔化すように隣の郁乃に尋ねる。


「そういえばさ、お前って彼氏いるのか?」


「いたら、こんなことしてませんが?」


「そりゃあそうだな」


 なにを当たり前のことを聞いているのやら……。

 俺がこんなバカげたことを聞いたからだろう。郁乃は俺を一瞥すると、


「なぜそんなことを? もしかして、私のことが好きなのですか? ごめんなさい……私、自分より背が低い人はちょっと」


「おいなんで俺が中学生の時に告白した女子に振られた時のセリフ知ってんだよ」


 そうあれは若かりし中学生時代のころ――俺は自分の身長を高くするために、中1のころからバスケ部に入っていた。まあ、それから普通にバスケが好きになったのだが。


 で、当時同じバスケ部に好きな女の子がいた。スラッと高い身長で、女子バスケのエースと呼ばれていた一学年上の先輩。


 告白したのは、俺が中学2年生ころ。来年には、先輩が卒業してしまうと思って告白を決意した。

 夕暮れ時の誰もいない教室。最高のシチュエーションで告白したのだが、


『ごめん……自分よりも身長が低い男はちょっと……』


 俺が過去のトラウマを思い出し、体を震わせると郁乃はクスリと可笑しそうに笑った。


「ふふ……冗談ですよ。私は外見よりも中身で人を好きになるタイプですので」


「あーはいはい。そういうやつに限って、結局イケメンで高身長な野郎と付き合うんだよなあ」


「酷い偏見ですね」


「だいたい、中身がどうのって言ったってお前、普段はあんまり人と関わろうとしないだろ。そんなの、中身以前の話じゃね?」


「私が関わりたいと思う人間がいないので」


 上から目線過ぎるだろこの女。

 俺が苦々しいい表情を浮かべているからか、郁乃は再び楽しげに笑う。


「じゃあ、その点じゃあ俺はお前のお眼鏡にかなったってところか?」


「勘違いしないでください。私は、朱音さんが心配なだけです。あなたを見ていると、ハラハラして落ち着かないから仕方なくですよ。仕方なく。あなたは降って湧いたこの幸運に、もっと感謝すべきでは?」


「だから、上から目線過ぎるだろ……まあ、感謝してるんだけどさ」


「なら、こっちの買い物袋も持ってください。重いです」


 このアマ……。

 俺は愛想笑いを浮かべて、郁乃の差し出した買い物袋を左手で持つ。これで俺の両手は重たい買い物袋で塞がった。


「おい。これで俺の身長がまた縮んだらお前のせいだぞ」


「あなた縮むんですか……?」


「……去年と比べて1センチ」


 瞬間――郁乃が「ぷっ」と吹き出した。


「貴様この野郎! 笑いやがったな! もう我慢できねえこのアマぶっ殺してやる!」


「……ぷ」


「貴様この野郎!」


 俺は本気でこのふざけた女をしばき倒してやろうとして左肩を挙げた折、肩に猛烈な激痛が走り危うく買い物袋を落としかけた。


「っつ……」


 俺は苦悶の表情を浮かべつつ、ゆっくりと肩を下げた。

 事は一瞬だったが、郁乃はその異変を見逃さなかった。彼女は俺を凝視すると、首を傾げた。


「……? 肩が痛むのですか? 重かったですか?」


「お前、目ざといな。よく肩だって分かったな」


「肩を挙上させた時に表情が曇ったので……痛めているのですか?」


「まあ、ちょっとな。普通に生活してる分には問題ないんだけど、たまに痛くなるんだ」


 別にスポーツをやっていて肩を痛めたとか、そんなドラマチックなことはない。事実はフィクションよりも単純で、面白みもないものだ。


 俺が肩を痛めたのは『報復』のせいだ。

 金玉を蹴り上げた男子生徒が、報復のために拘留中の俺をボコボコに殴ったり蹴ったりした結果、俺の肩が壊れてしまった。まあ、ただそれだけの話。


 おかげで、腕は肩より上に上がらないから、バスケもできやしない。まあ、もともとこの身長じゃバスケなんて向いてなかったし、別にいいんだけど。


 もちろん、そんなことを知らない郁乃は「ごめんなさい」と慌てたようすで、俺が左手に持つ買い物袋を奪い取ろうとする。


「いや、いいって別に……しょうもない理由でケガした自業自得なんだし」


「しかし……ケガ人に持たせるのは」


「ケガ人が必要ないって言ってんだから必要ないんだよ……」


 俺はこれ以上の問答は無意味だと悟り、半ば無理矢理に会話を終わらせて彼女の先を歩く。郁乃も慌てて俺の隣を並んで歩き出す。


 しばらく、お互いに無言で商店街からアパートへの帰路を歩く。その間、郁乃はチラチラと俺の方を見ており、なんとも居心地が悪い。


「なんだよ……」


「あ、いえ……重くないのかなと」


「重くないよ。どんだけ俺を非力だと思ってんだ」


「だって、喧嘩でいつも朱音さんに負けているので……」


「負けてないが!?」


 いったいいつどこで俺が、あのお家大好き引きこもりダメ妹に負けたというのか。とんだ勘違いだ。


 俺はため息を吐いて、この勘違い女に言ってやった。


「あのなあ……どこの世界に自分の妹を本気でどつく兄貴がいるんだよ。俺はたしかに非力だけど、そこらの女よりは力あるからな。ちゃんと、手加減くらいしてるよ。俺をなんだと思ってるんだ?」


 俺がそう言うと、郁乃は急に立ち止まってしまった。気になって俺も立ち止まって振り返ると、郁乃は目を瞬いて呆然としていた。


「どうした?」


「え? あ、いえ……な、なんでもありません……!」


 郁乃はなぜか語気を荒げ、スタスタと先を歩いていってしまう。耳が少し赤いが体調でも悪いのだろうか。


 俺は瞬きしてから郁乃の後を追う。


「おい。あんまり急ぐと転ぶぞ」


「こ、子供扱いしないでください!」


「えー……めっちゃ怒るじゃん。お前、俺のこと子供扱いするくせに……」


「実際……子供ではありませんか」


「誰が小学生みたいだと!?」


「言ってませんよ……バカ」


 郁乃はぷいっとそっぽを向き、俺よりも大きな歩幅で歩いていく。身長の低い俺は、どんどん郁乃に置いてい枯れてしまう。


「……いや、なんで今罵倒された?」


 女って急に怒るから訳が分からん。

ポケモン御三家は水タイプからだいたい始める。

どうも青春詭弁です。


今回は、幼馴染御三家の水タイプについてですね。

幼馴染御三家の水タイプといえば、クーデレ幼馴染でしょう。


こいつら温度差激しいですから。冷水みたいに冷たいかと思ったら、急にデレてお湯になりますから。可愛いですね。


ちなみに、私はツンデレクーデレ幼馴染が好きです。


え?水タイプと炎タイプのハイブリッドはいない?


は?ツンデレクーデレ幼馴染可愛いだろ?可愛けりゃあなんでもいいんだよ!おい!┌(┌^o^)┐ボコボコ(怒)

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