表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
28/35

二十五話 球技大会


「え? あんたバスケ出ないの!?」


 翌日の昼休み。

 猫を撫でくり回しに校舎裏へと足を運んだ折、猫缶を持った平田と鉢合わせたので、球技大会の件を伝えた。


「肩を痛めてる俺が、バスケなんか出ても出来ることは少ないからな。クラスの足を引っ張るくらいなら、最初から出ない」


「えー? スポーツ少年ってイメージよくなりやすいし、いい策だと思ったんだけどなー」


 平田は言いながら猫缶で猫を吊ろうとするが、猫は平田から猫缶だけ奪って、再び俺のところに歩いてきた。

 平田は悲しげな顔で空を仰いだ。


 哀れだ……。

 なんて哀れな姿なんだろう。


「スポーツ少年ね……活躍できれば、それもあるかもな。けど、俺はチビだし。バスケだって、ぶっちゃけそんなに上手くないんだよなぁ……」


「まあ、たしかに。あんたの身長で、元バスケ部って言われたら笑うわね」


「誰がチビだってこの野郎!」


「自分で言ったんでしょうがチビって」


「チビじゃないが!?」


「めんどくさ!」


 閑話休題。


「でも、真面目な話……球技大会に、まじめに参加するのはプラスになると思うのよ」


「……それはそうなんだろうけど。そうだろうけど。けど、種目がな……サッカーならまあ、できないことはないけど、バスケはさすがにな」


「そっか……あたしが無理強いできることじゃないし、仕方ないか……じゃあ、他の案でも考えてみるわ」


「なんか悪いな。俺のことを、平田に考えてもらって」


「別にいいのよ、好きでお節介焼いてるんだから。それにあんたのためのお節介というより、朱音ちゃんのためのお節介よ。花の女子校生は、たったの3年間しかないのに、それをずっとあの部屋の中で過ごすのは……見過ごせないのよ」


「お節介だな」


「だから言ってるじゃない。お節介焼きだって」


 だけど、そのお節介はとてもありがたい。

 いずれ朱音も出席日数的な意味でも、勉強的な意味でも、学校に行かなければならない時が出てくる。


 そういう時に、俺は朱音が少しでも学校に来たくなるよう、兄として準備しておいてやらないといけない。


 平田は俺が撫でくり回している猫を横から突く。猫はブチ切れたようすで、「シャー!」と平田を威嚇した。


「……ぐすん」


 平田撃沈。

 目尻に涙を溜め、とても残念そうに肩を落とした。


「はあ……もうあたしは戻るわ」


「おう」


 俺はトボトボと歩く平田の背中を見送りながら、さて自分もそろそろ教室に戻るかと、猫を撫でる手を止めて立ち上がった。


「……バスケね」


 しつこいようだけど、執着しているみたいで見苦しいようだけど、俺は再び左肩に手を置きそっと撫でた。


 本音を言えば、バスケはしたい。


 活躍したい……そう思うのは、年頃の男児なら当然なんじゃないだろうか。もちろん、それとは別に、俺が単純にバスケットボールが好きだということもある。


 左肩が壊れて以来、ボールには触っていないし、触る機会も余裕もなかった。こっちに引っ越してからしばらくは、朱音の世話もあったし、そんなことをしている余裕がなかった。


 未練がましいことに、俺はまだバスケがしたいと思っている。身長は低いし、たいして上手いわけでもないけど、それでも……まあ未練はある。


「……」


 ふと、視線を上げるとバスケットゴールが見えた。

 目の錯覚だ。

 実際には、そこに存在しない。あるのは虚空のみ。


 けれど、俺はほとんど無意識に左腕を挙げてシュートのポーズを取ろうと――。


「いっつ……」


 やっぱり、ダメか……肩があがらない。あげられない。

 まあ、期待も希望もしていなかったわけだけど。ちょっとだけ、悲しい気持ちになった。


「はぁ……」


 俺は深いため息を吐き、教室へと戻った。

 午後の授業は、例の球技大会の選手決めが行われた。


 他薦自薦なんでもありな、自由な選手決めが行われた。

 まあ、こんなイベントは出たいやつが勝手に出て、勝手に盛り上がるだけのイベント。


 バスケ部は当然として、他にもうちの運動自慢共が抜擢。俺と同じ文学少年たちは、教室の隅で我関せずとしている。


 一方、女子の種目はバレーらしい。

 まず、クラス一致で郁乃が選抜された。


 郁乃なら、例えクラス全員から期待の眼差しを向けられても、こんなめんどうそうなイベントは、断りそうなものだった。しかし、意外なことに……彼女はなにも言わなかった。


 はて、どういう風の吹き回しなのだろうと、俺は首を傾げた。

 まあ、あいつがどうしようがあいつの勝手だし、俺にはなんの関係もないわけだが……。


 それから、球技大会に出る選手たちは放課後の時間を使って、練習をすることになったらしい。


 となると、郁乃の夕飯は、今日のところは食べられない可能性が出てきた。こういう時に、直接顔を合わせなくてもいいように、メールとか電話番号とか聞いておけばよかったと、今更ながら後悔する俺だった。


「もし、郁乃の夕食がなかったら……朱音がうるさそうだなぁ……」


 俺は帰った後のことを考えて、大きくため息を吐いた。

インフルエンザでした。

どうも幼馴染マイスターの青春詭弁です。


インフルエンザでした。大事なことなので二回言いました。


インフルエンザだったので、しばらく更新もお休みしよっかなーとから思ったのですが、新作の構想も練れてきたし、こっちもあと数万文字くらいで終わるので、老体に鞭打って更新は続けようと思います。多分。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ