二十五話 球技大会
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「え? あんたバスケ出ないの!?」
翌日の昼休み。
猫を撫でくり回しに校舎裏へと足を運んだ折、猫缶を持った平田と鉢合わせたので、球技大会の件を伝えた。
「肩を痛めてる俺が、バスケなんか出ても出来ることは少ないからな。クラスの足を引っ張るくらいなら、最初から出ない」
「えー? スポーツ少年ってイメージよくなりやすいし、いい策だと思ったんだけどなー」
平田は言いながら猫缶で猫を吊ろうとするが、猫は平田から猫缶だけ奪って、再び俺のところに歩いてきた。
平田は悲しげな顔で空を仰いだ。
哀れだ……。
なんて哀れな姿なんだろう。
「スポーツ少年ね……活躍できれば、それもあるかもな。けど、俺はチビだし。バスケだって、ぶっちゃけそんなに上手くないんだよなぁ……」
「まあ、たしかに。あんたの身長で、元バスケ部って言われたら笑うわね」
「誰がチビだってこの野郎!」
「自分で言ったんでしょうがチビって」
「チビじゃないが!?」
「めんどくさ!」
閑話休題。
「でも、真面目な話……球技大会に、まじめに参加するのはプラスになると思うのよ」
「……それはそうなんだろうけど。そうだろうけど。けど、種目がな……サッカーならまあ、できないことはないけど、バスケはさすがにな」
「そっか……あたしが無理強いできることじゃないし、仕方ないか……じゃあ、他の案でも考えてみるわ」
「なんか悪いな。俺のことを、平田に考えてもらって」
「別にいいのよ、好きでお節介焼いてるんだから。それにあんたのためのお節介というより、朱音ちゃんのためのお節介よ。花の女子校生は、たったの3年間しかないのに、それをずっとあの部屋の中で過ごすのは……見過ごせないのよ」
「お節介だな」
「だから言ってるじゃない。お節介焼きだって」
だけど、そのお節介はとてもありがたい。
いずれ朱音も出席日数的な意味でも、勉強的な意味でも、学校に行かなければならない時が出てくる。
そういう時に、俺は朱音が少しでも学校に来たくなるよう、兄として準備しておいてやらないといけない。
平田は俺が撫でくり回している猫を横から突く。猫はブチ切れたようすで、「シャー!」と平田を威嚇した。
「……ぐすん」
平田撃沈。
目尻に涙を溜め、とても残念そうに肩を落とした。
「はあ……もうあたしは戻るわ」
「おう」
俺はトボトボと歩く平田の背中を見送りながら、さて自分もそろそろ教室に戻るかと、猫を撫でる手を止めて立ち上がった。
「……バスケね」
しつこいようだけど、執着しているみたいで見苦しいようだけど、俺は再び左肩に手を置きそっと撫でた。
本音を言えば、バスケはしたい。
活躍したい……そう思うのは、年頃の男児なら当然なんじゃないだろうか。もちろん、それとは別に、俺が単純にバスケットボールが好きだということもある。
左肩が壊れて以来、ボールには触っていないし、触る機会も余裕もなかった。こっちに引っ越してからしばらくは、朱音の世話もあったし、そんなことをしている余裕がなかった。
未練がましいことに、俺はまだバスケがしたいと思っている。身長は低いし、たいして上手いわけでもないけど、それでも……まあ未練はある。
「……」
ふと、視線を上げるとバスケットゴールが見えた。
目の錯覚だ。
実際には、そこに存在しない。あるのは虚空のみ。
けれど、俺はほとんど無意識に左腕を挙げてシュートのポーズを取ろうと――。
「いっつ……」
やっぱり、ダメか……肩があがらない。あげられない。
まあ、期待も希望もしていなかったわけだけど。ちょっとだけ、悲しい気持ちになった。
「はぁ……」
俺は深いため息を吐き、教室へと戻った。
午後の授業は、例の球技大会の選手決めが行われた。
他薦自薦なんでもありな、自由な選手決めが行われた。
まあ、こんなイベントは出たいやつが勝手に出て、勝手に盛り上がるだけのイベント。
バスケ部は当然として、他にもうちの運動自慢共が抜擢。俺と同じ文学少年たちは、教室の隅で我関せずとしている。
一方、女子の種目はバレーらしい。
まず、クラス一致で郁乃が選抜された。
郁乃なら、例えクラス全員から期待の眼差しを向けられても、こんなめんどうそうなイベントは、断りそうなものだった。しかし、意外なことに……彼女はなにも言わなかった。
はて、どういう風の吹き回しなのだろうと、俺は首を傾げた。
まあ、あいつがどうしようがあいつの勝手だし、俺にはなんの関係もないわけだが……。
それから、球技大会に出る選手たちは放課後の時間を使って、練習をすることになったらしい。
となると、郁乃の夕飯は、今日のところは食べられない可能性が出てきた。こういう時に、直接顔を合わせなくてもいいように、メールとか電話番号とか聞いておけばよかったと、今更ながら後悔する俺だった。
「もし、郁乃の夕食がなかったら……朱音がうるさそうだなぁ……」
俺は帰った後のことを考えて、大きくため息を吐いた。
インフルエンザでした。
どうも幼馴染マイスターの青春詭弁です。
インフルエンザでした。大事なことなので二回言いました。
インフルエンザだったので、しばらく更新もお休みしよっかなーとから思ったのですが、新作の構想も練れてきたし、こっちもあと数万文字くらいで終わるので、老体に鞭打って更新は続けようと思います。多分。




