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十八話 女の子好き


 10月30日。

 今日は、創立記念日で学校が休みである。

 いつもならお昼まで寝ているところだが、今日は随分と朝早くに目が覚めてしまった。


 時計を確認したところ、現在時刻は5時半。

 二度寝しようにも目が冴えてしまって、寝るにも寝れない。


 朱音を一瞥すると、昨日の疲れからか爆睡していた。女の子なのに、「ぐが〜っ」とはしたないいびきをかいている。

 お兄ちゃんは、妹の将来が心配です……。


「……」


 俺は布団の上で上体だけ起こし、昨日のことを反駁する。

 昨日、事故とはいえ俺と郁乃はキスをしてしまった。思い出すと、顔が熱くなってくる。


 あの後は、「事故だから仕方ない」とお互いによそよそしい感じで別れた。

 たしかに、仕方ないっちゃ仕方ないが……郁乃には悪いことをしたと思う。


「はぁ……なんだか顔を合わせにくい」


「なーに一丁前に黄昏てんのさ」


「うおっ……びっくりした。起きてたのかアーちゃん」


 見ると、朱音が布団を抱き枕にして俺を半眼で睨んでいた。


「ふんっ……! お兄ちゃんのバーカ!」


「おいなんで罵倒された。昨日助けてあげたのに」


「うるさいやい! アーちゃんの先輩を穢した罪は重いんだからな!」


 朱音はそう言って、布団の中に潜り込んでしまう。

 なんだこのカタツムリ妹。


「お前な……穢したって人聞きの悪いこと……」


「事実だろー!」


「そりゃあそうだけど……事故だったし」


「事故ならなにしてもいいなら交通事故に裁判はいらないんだよ!」


 たしかに……それは一理あるかもしれないと思った俺がいる。


「まあ、アーちゃんの言いたいことは分かる……けど、なんでアーちゃんが怒ってるんだよ?」


「お兄ちゃんは知ってるでしょ! アーちゃんは先輩に一目惚れしてるって! 目の前で好きな人が他の人とチューしてたら、嫌な気分にだってなるやい!」


 あー……なるほど。そういうことか。

 俺は困ってしまい、自分の髪を撫でる。


 実は、朱音は普通の女の子とは価値観というか、感性というか――ちょっとだけ違う点がある。


 それは、朱音の恋愛や性愛の対象が、同じ女の子であるという点だ。


 いわゆる、同性愛というもので、その証拠に朱音は俺が買った男性向けのエッチな本を読む。女性向けのものは一切買わないし、イケメンも含めて男にはまったくと言っていいほど関心を持たない。


 こと俺に対しても、今ではこれだけ心を許しているものの――実は、数ヶ月前からまでは、ほとんど会話すらしていなかった。


 男の気はない代わりに、女友達が尋常じゃないほど多く、毎日のように友達を家に連れてきてはその友達に、「弟さんかな?」と呼ばれていたのは記憶に新しい。


 それで朱音と喧嘩して、不仲であったということも会話をしていなかった理由の1つだ。


 その名残で、今もよく喧嘩をするわけだが……それでもこうして朱音と打ち解けられたのは、皮肉なことに両親の死と、俺の前科のことがあってからだ。


 だから、こんなことで朱音とまた険悪になるわけにはいかない。


「……悪かったよアーちゃん。今度、アーちゃんが好きなグラビアアイドルの雑誌、買ってきてあげるからさ」


 ビクッと、布団の中に潜り込んでいる朱音が反応を示す。


「……ふんっ。アーちゃんを物で吊ろうったってそうはいかないもん!」


 雑誌だけじゃ弱いようだ。

 俺は顎に手を当てて、少し考える。


「じゃあ、ゲームも買ってあげようじゃないか」


 ビクビクッと、朱音が反応を示す。

 かなり効いているみたいだが、まだ足りないらしい。


「分かったよ。なら、郁乃に頼んで、1日郁乃と家デート券をプレゼントしよう」


「……マジ?」


 ひょっこりと、朱音が布団から顔だけを出し、期待の眼差しを俺に向ける。


「マジマジ」


「……お兄ちゃん。アーちゃんと仲直りしたい?」


「したいしたい」


「……ふーん。な、なら、許してあげようかな……。まったく、お兄ちゃんは仕方ないなぁ……そんなにアーちゃんのことが好きなんだねー? 本当にしょうがないお兄ちゃんだなー! わっははは! お兄ちゃんはアーちゃんがいないとなにもできないんだもんね!」


「うるせえよそれはお前だろこのダメ妹」


「……」


「……」


 朱音はふつふつと目尻に涙を溜めると、シュバッと再び布団の中に隠れてしまった。


 やってしまった……ダメ妹のドヤ顔がうざすぎて、つい本音が出てしまった。


「ご、ごめんアーちゃん……つい本音が」


「うわーん! 本音なんだー! お兄ちゃんいつもアーちゃんのこと、そんなに風に思ってたんだー!」


 また口が滑ってしまった。


「いや、本当にごめん。悪気はなかった」


「うそだ! 悪意100パーセントだったよう! もう怒った! 絶対に許さない! 引きこもってやるう!」


「もう引きこもってるだろ……」


 部屋の中に引きこもってるのに、さらに引きこもるつもりなのかこのダメ妹は。


 いい加減、俺も無理矢理に朱音を引っ張り出そうと布団に手をかける。


「おら! もういい加減布団から出てこい!」


「やー! 布団を取ろうとしないでよ! この暗黒物質製造機!」


「貴様この野郎! 誰が暗黒物質製造機だ!」


「わー! お兄ちゃんが怒ったー!」


「そりゃあ怒るだろ!」


「そうやってすぐに怒るから器も身長も小さいんだよ!」


「貴様この野郎! 表出ろ! 今日こそ決着つけてやる!」


 ボコスカ、ボコスカ――郁乃とキスをしても、我が家は平常運転である。


 しばらく朱音と殴り合っていると、ピンポーンとインターホンが鳴らされ、俺たちは殴り合いをやめた。


 気づけば、時刻も7時を回っており、いつもなら朝食の時間に当たる。つまり、このインターホンを鳴らした主は――。


 俺は朱音と顔を見合わせたのち、朱音を洋室に置いて1人で玄関を出る。すると、玄関を開けた先に、鍋を持った郁乃が立っていた。


「あ……」


「ん……」


 俺と郁乃は一瞬、目を合わせて同時に顔をそむけてしまった。

 チラッと郁乃の顔を盗み見ると、彼女の頬はほんのりと赤くなっていた。


 多分、俺も赤くなっているに違いない。


「あの……お、おはようございます」


「お、おう……おはよう。まあ、とりあえず上がってくれ……」


「は、はい……失礼します……」


 昨日のことを思い出して、妙によそよそしくなってしまう。

 俺はできる限り普段通りを心がけるために、頭を振った。

今日、サーバーメンテ多すぎない?

どうも幼馴染マイスターの青春詭弁です。


今日は、なろうがメンテナンスでしたね。偶然かどうか分かりませんが、私が良くやっているスマブラもメンテナンスでした。聞いたところでは、FGOもメンテナンスだったとか。


なにかあったのでしょうか……不吉です。


さて、本作もラブコメっぽくなって参りました。

今後の展開に乞うご期待といったところで、ぜひブックマークとポイント評価をお願いいたします。


それでは、また次の更新に。

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