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十三話 犬猿の2人


 午後の授業が終わり、正門に行くと平田が待っていた。


「あ、遅かったわね。なにやってたのよ?」


「先生に捕まってた」


 俺は簡潔に答えて平田の隣に立つ。

 川口め……俺に雑用押しつけやがって。まあ、いい……と俺は切り替えるために頭を振って、念のため平田に確認を取る。


「それで……本当にうち来るのか」


「行くって言ったじゃない。あ、変なことしたらぶっ飛ばすから」


「暴力反対……」


 平田がわざとらしく拳を握って見せてきたので、俺は両手を挙げて早々に降参の意を示す。

 別に変なことなんてしない……いや、本当です。やましい気持ちなんてまったくありません。ボク、健全な男子高校生だもん。


 ふと、正門で平田と話していると、チラホラ帰宅している生徒たちに注目されていることに気づく。

 平田が目立つというのもあるだろうし、俺が悪目立ちしているのもあるのだろう。なんとも居心地の悪い視線だ。


 まあ、風紀委員長とうわさの犯罪者が一緒にいれば、誰でも目が惹かれるか……。


「なあ、平田……本当にいいのか? 並んで歩いてたら変なうわさでも立ちかねないくらい注目されてるけど」


「別に、勘違いされても否定すればいいだけだもの。あんたと違って、あたしは人望があるから」


「さいですか……」


 俺はドヤ顔の平田に若干イラッとした。我慢我慢……。

 平田はふいに、キョロキョロと辺りを見回す。すると、こっちを見ていた生徒たちは平田と目が合ってしまい、慌てたようすで視線をそらしてスタスタと帰っていく。


 それを見て、俺はぽつりと呟く。


「鬼の風紀委員長ね……」


「何か言いたそうな顔ね」


「いや……別にそういうわけじゃないけど」


「けど?」


 妙に突っかかてくるな……俺は髪を撫でて思ったことをそのまま口に出す。


「ほら、俺はまだここに来たばっかりだから。平田がなんで鬼の風紀委員長って呼ばれてるのか分かんないんだよ。俺もお前と同じで、自分の目で見たことしか信じないからさ」


 少なくても、校舎裏で隠れてコソコソと子猫を餌付けし、あまつさえ猫撫で声で「よちよーち」などと口にしながら子猫を可愛がっている女の子が、鬼の風紀委員長と呼ばれている理由が分からない。


 平田は顎に指を当てて、考える素振りをする。そんな平田に、俺は尋ねた。


「そういえば、お前の名前ってなんて言うんだ?」


「え? 知らないの?」


「いや、自己紹介してもらってないし」


「それはそうだけど……あたしはあんたの名前知ってたのに酷くない?」


「俺は有名人だからな~」


「悪い意味でだけど」


 知ってるよ。うるさいな。

 俺は真実を告げられて口を尖らせる。

 彼女はそんな俺に苦笑し、「仕方ないなー」と言って続けた。


「あたしは、平田ひらた希美のぞみよ。2年Aクラス」


「平田希美か……」


 俺は彼女の名前を復唱した。

 なるほど……覚えた。


「じゃあ、平田。そろそろ――」


 行くか――と口を開きかけた折、学校の方が妙に騒がしくなった。


 気になってそちらに目を向けると、郁乃がちょうど帰るところなのか鞄を肩にさげて、正門の方に歩いてきていた。


 俺が郁乃をに見ていると、郁乃も俺に気づいたようで「あ」と声を漏らす。同時に、俺の隣に立つ平田にも気づき、あからさまに顔を顰めた。


 平田も郁乃と目を合わせて眉を寄せている。そして、言わずもがなお互いの視線は、胸と髪に向けられている。本当に分かりやすいなあ……この2人。


 郁乃がこっちまで歩いてくると、最初に口を開いたのは平田からだった。


「あら、こんにちは郁乃さん……相変わらずね?」


 なにがとは言わなかったが、彼女の目は郁乃に注がれる視線のもとに向けられていた。

 暗に、「人気者は辛いわね~」とでも言いたいのだろう。


 俺よりもそういった悪意に敏感な郁乃が、その皮肉に気がつかないはずがない、郁乃は頬をやや引きつらせながも、仮面がごとき爽やかな笑みを浮かべて口を開く。


「いえいえ……お互いさまです」

 訳――お前が言うなクソアマが。


 という感じだろうか。

 おいおい、やばいよ……女子同士の会話怖すぎだろ。もう女子と会話する時、全部訳して聞いちゃうレベルで裏がありすぎる。


「そんなことないわ~郁乃さんの方が大変そう……大丈夫?」

訳――は? 黙れクソアマ。お前の化けの皮をここで剥がしてやろうか?


「いえいえ。平田さんの方が大変では? 風紀委員のお仕事とかありますし」

訳――そっちこそ化けの皮を剥いで晒してやろうか? なにが風紀委員だハゲ。上等だかかって来いよ!


 いや怖い怖い怖い……なにが怖いって、俺の訳が怖すぎるわ。なんか急に、本当にそう言ってんじゃねえかって思えてきたわ。

 さすがに、2人が本当にこんなことを内心で思っているわけはないだろうが……仮に本当だったら、俺はもう人を信じられなくなってしまうだろう。


 俺が1人で人間不信になりかけていると、ふいに郁乃の視線が俺に向けられた。


「……というか、翔太くんはなぜこの人といるのですか?」


「え」


 まさか俺に話かけてくるとは思わず、素っ頓狂な声が出てしまった。

 基本的に郁乃が、学校で俺には話しかけない。俺と交流があることを知られたくないのだろう。同じアパートに住んでるし、最近では仲も深まってきたが、一緒に登校しないのもそういう理由がある。


 俺自身も、郁乃と交流があると知られると、またいやがらせがエスカレートしそうだったし、なるべく学校では関わらないようにしていた。

 だから、郁乃がこうして周りの目がある中で声をかけてきたのは今回が初めてだった。


 遠巻きにこっちを見ていた生徒たちには分からないだろうが、近くにいた平田には当然はっきりと聞こえていた。


「え……しょ、翔太くん……って? え? ふ、2人って知り合いなの?」


「あ」


 平田の問いに、郁乃はやってしまったという声を漏らした。

美少女幼馴染に朝起こしてもらたい。

どうも幼馴染マイスターこと青春詭弁です。


幼馴染が朝起こしに来てくれるって鉄板中の鉄板です。幼馴染が出てくる物語なら、ほぼ間違いなく出てきます。出てこなかったらそれは幼馴染じゃありません。


まあ、例外として途中で疎遠になった幼馴染は朝起こしに来ない方がむしろ良きですが(´◉◞౪◟◉)


さて、幼馴染には王道シチュエーションがいくつか存在します。


その中でも、朝起こしてくれるシチュエーションは王道も王道ですね。これぞ幼馴染って感じです。


ちなみに、これは主人公に妹がいる場合、妹がヒロオンに代わってやる場合もあります。私は妹に起こしてもらうよりも、幼馴染に起こしてもらたいわけですが。


いやぁ……幼馴染ってやっぱり最高だぜぇ……私、幼馴染いないけど。

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