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十話 鬼の風紀委員長


「ん?」


 いつもの昼休み。

 相変わらず屋上で、昼食をとっていた俺は……またまた校舎裏に人影が見えて、屋上から眼を凝らす。


 見ると、今朝会った平田が風紀委員長だった。

 しばらく見ていると、平田はコソコソと周囲を警戒しながら、校舎裏の茂みへと姿を消す。


「な、なんだあのあからさまに怪しい挙動は……」


 今朝、変な因縁を吹っかけられているわけだし……仮にここで風紀委員長が怪しい行動をしているのなら現場を抑え、今後俺に対する嫌がらせをやめさせようか……。


 今朝みたいなことがなんども起こったら堪ったもんじゃないし。


「よし……」


 そうと決まればと、俺は急いで階段を降りていって校舎裏まで移動。


 まだ平田がいればいいのだが……と思いながら、スマホのカメラを起動させて彼女の消えた茂みの方を覗き込む。


 すると――。


「はーい、よちよーち……可愛いでちゅね〜。うふふ〜」


 平田が子猫にご飯をあげている現場を見てしまった。俺は無意識に、パシャリとスマホのカメラでそのようすを撮影する。


 もちろん、シャッター音は平田に聞こえ、平田はバッと血走った目で振り返った。


「なっ……こ、こここここ小藤翔太っ……!?」


「……風紀委員長。俺は見てしまった」


「な、なにを……!? あたし別になにもやってないけど!?」


「よちよーち」


「ぎゃあああああああ!?」


 俺がスマホで撮影したようすを平田に見せると、平田は途端に取り乱し、俺に詰め寄った。


「あ、あんた! 盗撮よ!? 盗撮で訴えてやるわ!」


「ばら撒いちゃおっかなぁ」


「悪魔なのあんたは!?」


 なんとでも言え。

 俺はとりあえず、ここまでの経緯を説明する。


 説明といっても、屋上から挙動不審な風紀委員長が見えたから、なにか弱みでも握ってやろうとスマホ片手に、ようすを見にきただけなのだが。


 まさか子猫にご飯をあげながら、「よちよーち」なんて猫撫で声を出すとは誰も予想できないだろう。


「ちょ、ちょっと待ちなさい! 話し合えば分かるわ……! あ、あたしこれでも鬼の風紀委員長で通っているのよ……も、もしそんな画像をばら撒かれたら、あたしのイメージが……!」


「ふーん……じゃあ、もう俺には突っかからないでくれ。今朝みたいに、妙な言いがかりをしないだくれ。うっかり退学になったら困る」


 俺がスマホで撮った画像をチラチラと見せながら口にすると、平田は渋々といったようすで頷いた。


「わ、分かったわよ……だ、だから画像はその……」


 もじもじと、平田が目じりに涙をためて懇願するさまはどこかイケないことをしている気分になる。非常にいたたまれない。


 と、俺が1人でそんな気分になっていると、平田が餌をあげていた子猫が、「にぁ~にぁ~」と俺の足元に近寄ってきたかと思うと、おもむろに俺の足に頭を擦りつけてきた。


「お、おお……なんだこいつ。人懐っこいな……」


「そ、そんなはずは……だって、なま太郎……私に最初全然懐いてくれなかったのに……」


「……は? なま……なんだって?」


「なま太郎よ。その黒猫の名前よ」


 なま太郎……?

 俺は、自分の足に頭を擦りつけて甘えてくる猫を見下ろす。

 いや、どこら辺がなま太郎なんだろうか。


 俺は平田の残念なネーミングセンスに、「はあ」と大きなため息を吐く。彼女はそれでバカにされたと察し、唇を尖らせた。


「むー! なによ! あたしが付けた名前に文句があるわけ!?」


「なま太郎はないだろ」


「――っ!」


 平田は顔を真っ赤にしてそっぽ向いてしまった。

 この自称鬼の風紀委員長……思ったよりも怖くないな。


 人に隠れてコソコソと子猫に餌あげてるし、ネーミングセンスは酷いし……あと胸が小さいし。


「な、なんか今……酷くバカにされた気がするのだわ……!」


 察しが良すぎるだろ……やっぱり怖い。

 俺は乾いた笑いを浮かべながら、とりあえず擦り寄ってくる子猫を抱きかかえてやる。


「こいつ、首輪つけてないな。野良猫なのか」


「ええ……多分、学校の敷地に迷い込んでしまったんじゃないかしら。私がなま太郎を見つけたのは、3日前よ」


「ふうん……たしか、うちって校則で動物を校内に入れちゃいけなかったよな」


「うっ……」


 俺が猫をあやしながら突っ込むと、平田は分かりやすく反応する。


「……鬼の風紀委員長が校内で猫に餌付けか?」


「な、なによ……わ、悪い!?」


 からかい過ぎたようで、平田がついに逆キレした。


「だって可哀想じゃない! その子ずっと『ミーミー』鳴いてて見捨てられなかったのよ! でもうちで飼えないから仕方なくここで飼ってたのよ! ええーそうよ! あたしが悪うござんした~! 煮るなり焼くなり好きにしたらいいのだわ! ふんっ!」


 ぷいっと、平田が俺に怒鳴るだけ怒鳴って顔を背けてしまった。

 それがおかしくて、俺はついつい笑ってしまう。すると、案の定平田はまたバカにされたと勘違いして、頬を膨らませるので、俺は慌てて「違う違う」と弁明する。


「バカにしてるんじゃなくて……ただ意外に思ってさ」


「い、意外……? って、なにがよ」


「いや……正直、お前のこと嫌なやつだって思ってたから印象が変わったっていうか。良いやつなんだな」


「なっ……べ、別にそんなことないわよ……あ、あんたみたいなチビ犯罪者に褒められても嬉しくなし……」


「チビ犯罪者じゃないですけど!? 犯罪者だけど……チビじゃないからな!?」


 前言撤回、やっぱりこいつ嫌なやつだ。

 とりあえず、平田には子猫のことを秘密にしてやる代わりに、金輪際俺をありもしない罪状で退学に追いやろうとしないことを約束させた。



書きだめが、無くなっちゃった マジ卍

どうも幼馴染マイスターこと青春詭弁です。


ついに本作の書きだめがなくなりました。明日から地獄のスタートに今から胸のドキドキが止まりません。


さて、本作を執筆していた重大なことを忘れていたのですが……そういえば、登場人物の名前にルビ振ってなかったなと。


というわけで、登場人物の名前を最後の方に晒し上げます。


面白かった!

続きが気になる!


そう思っていただけたらぜひブックマークとポイント評価をお願いします。

やる気が……出ます!


小藤翔太→こふじ しょうた

小藤朱音→こふじ あかね

毒島郁乃→ぶすじま いくの

平田→ひらた

竹内志穂子→たけう ちしほこ

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