園の下の力持ち
ある日の昼下がりのことである。毎年、春休みになると父の実家へ泊まるのだが、今年は叔父のところに泊まることになった。なんでも、リフォーム工事とやらで忙しいらしい。僕は何をするでもなく、ただ寝転がって庭を眺めていた。昔ながらの日本庭園は雑踏に紛れ、穢れた僕の心を落ち着かせる。苔で覆われた石灯籠は古風な感じがして深みがあり、無数に重なり合う松の葉は雲海のように見え躍動を感じる。そして極めつけは生命力溢れる極大のア……フロ……?
「おじさん、誰?」
「おじさんは庭師だよ」
庭師と名乗るこのアフロは脚立の上で作業をしている。プラモデルのパーツを切り取るようにパツンパツンと枝を落としていくアフロの目は新しい玩具を買ってもらった子供そのものであった。
「天然?」
「地毛だよ」
作業がひと段落着いた後、汗をかいたアフロにお茶を汲む。アフロは「ありがとう」とお礼を言うと、ちょびちょびと少しずつ飲んだ。庭は木々の緑が際立つようになり明るさに緩急がでた。
「ひと目見ただけだとどこをどう手入れしたか分からないですね」
「そうだね。そういう風に手入れしてるからね」
「それじゃあ、おじさんの頑張りも庭を見ただけじゃ分からないんじゃ……」
アフロはどこか寂しげな顔をした。
「懐かしいなぁ。昔、俺もおやっさんに同じようなことを言ったよ」
僕は何かいけないことを言った気がした。
「初めて仕事を任されたとき、俺はそりゃあ頑張った。持てる力全て振り絞って、自分にとって最高の庭に仕立てあげた」
おじさんは続ける。
「でもなぁ、これじゃあ駄目だって叱られたよ。素人がどこをどう手入れしたか分かるようじゃ駄目だって。なんでそれがいけないのか、おやっさんは聞いても教えてくれなかった。おかげでそれに気づいくのに随分時間がかかっちまったよ」
「それでその理由は……」
結局、おじさんは僕に答えを教えてはくれなかった。黙々と枝を落とすその背中は妙にかっこよく見えた。




