7話 Secret Ⅴ
「殺されに来たと捉えていいのよね」
普段は感情がこもってない言葉で話す玖由が感情的に言葉を放つ姿に綾乃は葵という少女がただならぬ者だと察した。
「そんな事言わないでよ連れないな~私は玖由を勧誘しに来たんだよ」
と警戒が少しまで解けるように笑顔で語りかけるがそれが逆に玖由には感情を逆撫でしていた。葵はそれも予想はしていたが、表情を変えることはなかった。
「勧誘…?何故あなた達の仲間になんて」
「別にならなくても良いよ、その代わり殺すだけだから」
と武装を纏い銃口を向ける。
「私達の仲間全員その選択をしてきた…暗部はそういう組織」
「もういい!お前の言葉なんて知らない!」
ワイヤーを放ち距離を詰め靴に忍ばせた刃を蹴り上げる。しかしそれを僅かに後ろに下がるだけで避ける。葵は蹴りあげた脚を持ち軸足となっている脚に自身の脚を絡めバランスを崩させる。
「っ!」
押し倒された玖由は起き上がろうとするが眉間に銃口が触れ玖由が動くのを阻止する。
「だーめ、二択の答えを言ってからだよ」
(強い…)
「せぃやぁぁぁっ!」
カチを纏う綾乃が砲撃で葵を玖由から離す。更に背後から松根が薙刀を振りかざす。それに気づいた葵は振り返り薙刀の刃を警戒するが石突を腹部に突き出す。命中し僅かによろめく葵に綾乃は手に付けたグローブから刃の付いたワイヤーを放ち葵の動きを封じる。
「これで動けないでしょ!」
「そーかなー?」
葵から放たれた衝撃波がワイヤーを引きちぎる。
「えっ!?」
「そんなデタラメな…」
(今の姿は…)
一瞬葵の姿が変化したのを見た玖由は疑問を持つ。
「何故私を殺そうとするのか理由を聞いても良い?」
「そうだね~玖由がアルマだからかな」
「「!?」」
「なにを…言ってるの?」
「正確にはなりかけなんだよね、しかも他の人に比べて玖由はその力が制御出来ていないんだよね、だから危険なんだ、だから私の独断で玖由を殺そうとしたんだけどまさか梨絵が庇うとは思わなかったんだ…悪いことをしたとは思ってるよ、だから生死の選択を玖由にしてもらいに来たの」
「その割にはさっき銃弾撃ち込んできてたじゃない」
「えっ…あぁさっき撃ってたのはゴム弾だよ、当たっても少しだけ痛いだけだよ」
とゴム弾を手に取り綾乃に投げ渡す。
「ほんとだ…」
「それでどうするの?」
「分かったわ、その代わり条件がある」
「条件?」
「あなた達の知ってる情報を開示する事」
それを聞いた葵から笑みが消え真面目な表情に変り
「対等な条件だね、決まり」
次の瞬間大鎌が葵に振り下ろされるが装甲を瞬時に展開しそれを防ぐ。
「嫌な予感がするって憐斗が言ってたけど…」
「まさかあなただとは…」
夕立と大和が葵の退路を塞ぐように立ち砲塔を向けるが、その葵を守るように玖由が立ちはだかる。
「お願い…やめて」
「玖由!?」
「葵が何をしたか…玖由が一番理解していただろ」
「分かってるだからこそ、梨絵が知ろうとしていた真実を知りたいの」
「真実…?」
大和の問いかけに答えることなく葵を見る。
「大和、夕立この事は黙ってて、私から報告するから」
そう言い残し葵を連れて屋上から飛び降りる。
「待って!」
「全く協力関係になったというのに…」
(暗部はお姉ちゃんが所属していた場所…何か手がかりがあるかもしれないですわね)
綾乃と松根は顔を見合わせ玖由について行く事を決意する。
「どうしますの?」
「どうするも…黙っておく」
しばらくの間の後大和はそう決断する。
「了解しましたわ」
答えが分かっていた様に夕立は言い2人は憐斗達の元に向かった。
ーーーーー
「玖由達は死後どうなるか考えた事ある?」
山道を歩きながら葵は後ろの3人に問かける。
「そんなこと考えた事ないわよ…」
「そもそもそんな事考えてたら本当に死ぬわよ」
玖由の冷静な言葉を聞き
「あはは、確かにそうだねけど私達はそこにこの世界を変える秘密があると考えてるんだ」
「秘密…?」
その言葉に頷き葵は目の前を飛ぶ蝶を捕まえる。そして手放すと同時に短剣を振り上げ蝶を2つに斬る。
「これでこの蝶は死んだね」
「死んだ…じゃないです…」
躊躇いも無く生き物を殺した葵に松根は睨むような目で答える。
「私は嫌悪感、罪悪感ってのを感じないんだだから躊躇なく殺れるの、まぁこの話は後で話すとして…」
と自分が殺した蝶を拾い上げる
「この蝶は死んだね、けどそれと同時に生まれた時の時間に戻ってるんだ」
「どういう意味?」
流石の玖由にも葵の発言の意味を理解出来ず問いかける。
「要するに死んだ生物は同じ生物として同じ時間を繰り返してるって意味、正夢や既視感っていうのも前の記憶なんじゃないかって言うのが私達の考え」
「宗教みたいな考え方ね…」
「確かにそうかもね、そしてその考えを私達は転生論って呼んでる」
「転生論…」
自身の話に予想以上に食い付く玖由の様子を見た葵はにやりと笑みを浮かべる。そんな葵の視線に気づいた玖由は
「そうい言うという事は確信があるのよね?」
「あるよ」
葵は自分の頭に指を指し。
「前の時の記憶覚えてるから」
「覚えてる…?」
「稀に私みたく記憶を思い出す者も居るんだ、そんな人の事をみんなは転生者って言ってる、そしてその過去が受け入れられなければアルマ化…アルマ堕ちする」
そう説明しながら葵は頭に当てる指を胸に移動させる。
「そうなれば手遅れ…だからその前に殺るそれが私達、暗部の真の役目」
話し終わると同時に洞窟の入り口で立ち止まる。
「ようこそ、暗部へ」
足元の石を踏むと洞窟の壁が上昇し通路が顔を出した。