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61話 Crazy gap Ⅴ

京也の指が鬼の両目に突き刺さり視界を奪う。鬼に状況を理解させる間を与えず地を踏み込み鬼の足元から結晶を突き出し鬼ごと押し上げる。更に上空に結晶の塊を創造させそれを突き上げられる鬼に向けて落下させ挟む。衝撃で結晶が砕け鬼は結晶の破片と共に落下する。それを見て京也は破片同時をぶつけ鋭利に尖らせた尖端を四方から鬼に向けて放ち突き刺す。

「グァ…ッ!」

片目を修復させた鬼はくい込む結晶を抜き取り鋭利なそれを手に京也に振り下ろす。しかし手に持つそれは消滅し京也の手に移動し奪われる。身の危険を感じた鬼は身を翻し京也の直上から逸れたが、背中に障害物が当たった感覚を感じ振り返る。そこには浮遊する球体があるだけだったが、それを見て咄嗟に回避行動をとろうとするがその時には球体から針のような棘が放たれ胴体を装甲ごと射抜く。

「ア…ァァァァァァッ!!」

再び充填した熱を放出し加速、京也との距離を瞬時に詰め炎の刃を突き出す。

それを京也は結晶に覆われた右腕を突き出し受け止め炎を反射し鬼の炎と相殺させる。炎が効かないと直感した鬼は懐から自身の刀を抜き取り京也に切り掛る。

対する京也は結晶から剣を創造させそれを受け止める。衝撃で地に足が埋まりつつもその足で踏み込み刀を弾く同時に結晶の刃が割れるが瞬時に再生させ鬼に向けて刃を振り薙ぎ払う。衝撃波が土埃を巻き上げ鬼を貫通しそれに耐えつつも装甲は砕けよろめく。

「こんなもので終わらせるか…!」

更に地を大きく凹ませるほどの力で蹴り瞬時に間合いを詰め剣を突き出す。炎を拳に纏わせ鬼は仰け反りつつも突き出し刃先を受け止める。

お互いに衝撃波が襲いつつも双方怯まず競り合う。

「ァァァァァァッッ!!!」

奇声を上げ鬼の拳が京也の剣を砕く。

「負けるかぁぁぁっ!」

絶叫が鬼の奇声をかき消し結晶に覆われた手で鬼の拳を受け止める。触れ合った瞬間、京也に襲うはずだった衝撃波を結晶に変換、反転させ鬼に向けて放出した。

回避する術が無い鬼はそれに飲み込まれ次々に被弾し全身の装甲を喪失した状態で吹き飛ばされた。顔を上げると目の前には京也の拳が向けられており顔面を直撃した、同時に鬼から何かが剥がれたような感触がした。鬼は逃げられないように足を踏まれていた為、吹き飛ばされず地に顔面を打ち付けられる。

ゆっくりと顔を上げる鬼を見て京也は目を見開いた。

「えっ…」

「どういうことなの!?」

その場に居た逸希達全員が自身の目を疑いそれは京也も例外では無かった。

「人間だったのか……?」

人間の男の顔が覗く鬼の顔面に動揺し足を離してしまいその隙に距離をとられてしまう。

「あの顔…まさか!?」

遠目から京也の戦闘を見ていた瑞鶴は鬼の顔を見て驚く。

「お前は一体なんなんだ!」

「妬ましい…折角彼女と共に居られるはずなのに!それを邪魔するお前達が…妬ましい!」

再び鬼の表面が男を覆うとした時、京也を横切り一閃の閃光と共に何者かが鬼を貫き切り裂く。貫いた直後一瞬のうちに鬼は細切れにされ自己修復が不可能な状態となり衝撃波に吹き飛ばされるように鬼の残骸が消滅する。

唐突に現れた乱入者により呆気ない決着で終わった戦闘に理解するのに時間のかかった京也だったが理解するよりも目の前の人に対しての警戒を強める事が優先と判断し身構える。

「警戒しなくても何もしませんよ」

フードを深く被り目元は見えなかったが口元は微笑んで居た。しかしその時吹いた風によってその人物の被るフードがめくれ上がる。

「あっ…!」

慌てて抑えようとするが間に合わずフードに隠れていた長い髪が靡き慌てる表情が顕になる。

「羽根!?」

瑞鶴は羽根の姿を見て慌てて飛び降り京也達の元に向かう。

「あ…あなたは…」

「それ以上は言わなくて結構です、それでは…」

「待って!」

立ち去ろうとする羽根の目の前に瑞鶴が着地し行く手を阻んだ。

「なんであなたがここにいるんですか?」

そう尋ねる瑞鶴に背負われた玖由を見て目を伏せる。

「偶然通りかかっただけです…なんて誤魔化しは聞きませんよね、恐らく既に察しているかもですがあの鬼…いえ、罪人を追っているんです」

「罪人…?」

僅かに躊躇いを見せた羽根だったが小さくため息をつき瑞鶴達を見る。

「あなた達にも知ってもらって置いた方が良いわね…人に負の感情があるのは知っていますよね?」

「はい…それがアルマを生み出してると聞きました」

「そうですね、そして負の感情を生み出す欲望については、分かりますか?」

「傲慢…憤怒…嫉妬…怠惰…強欲…暴食…色欲…でしょ」

瑞鶴の背中から発せられた声を聞き戸惑いながらも頷く。目を覚ました玖由は瑞鶴に降ろすように囁き地に足を付ける。

「私も聞くわ、続けて」

「わ…分かりました」

調子を戻すように小さく咳払いをして話を続け始める。

「その欲望…よく言う七つの大罪ってやつですね、それが強すぎる人をアルマ化させると罪人という角の生えたアルマに変化するんです、そして変貌した罪人はその欲望のままに動き理性をほぼ失う」

「だからあいつは」

「えっ?」

瑞鶴の小言を聞き玖由は見上げる。その視線に気づき

「後で話すわ…」

そう伝え二人は羽根の話の続きを聞く。

「罪人の強さは角の数です」

と自身の額を指さす。

「えっ…じゃあさっきの罪人って…」

「一角は罪人の中で一番弱い部類ですね」

あっさりと言い放ったその言葉を聞き

「私達が束になっても歯が立たなかった相手だったのに…」

羽根の言い放った言葉に綾乃達は自身の力の無力さを感る。羽根は綾乃達にそう思わせる為にあえてそう言ったが綾乃達の様子を見て本人は表情を変えずに目線だけを逸らした。

「言うことも言いましたから私はこれで」

羽根はそういい京也達が呼び止める暇なく飛翔しその場を後にする。それでも追いかけようとする玖由だったが一歩踏み込むだけで全身に激しい痛みが襲いその場に座り込んでしまう。

「くっ…」


人気の無い森に来た羽根は憤りを感じその思いを木に殴りつける。傷ついた手から血が流れるがそんな事は気にならなかった。

「ごめんなさいね…」

その一言を聞き我に返りその声のした方向を向く。

「問題ないです」

そう答える羽根だったが声の主は先程の羽根の行動を見ていた為、その言葉が嘘なのは理解していた。

「そう…」

「これが私達の役目ですから気にしないでください、それに彼には人を殺させるわけには行きませんからね」

血まみれの羽根の手には欠片が握られていた。


「先輩…」

「気にしなくて良いわ、いつもの事だから」

「それがいつもだから心配するのよ」

瑞鶴に支えられる玖由を見て呆れた様子で綾乃が玖由を咎めた。

「……」

対して玖由はバツが悪そうに京也を見る。

「そうね、帰りましょうか」

微笑む玖由を見て京也はツクヨミの力を使う際に見た結彩達の状況を伝える事を躊躇う。もし伝えれば無理をしてでも向かってしまうのではないかと言う考えが脳裏を過ぎっていた。

「おーい!みんな大丈夫かい!?」

そこに全員を待避させた秋が戻ってくる。玖由の代わりに葵と綾乃が秋に事情を説明する。

「なるほど…罪人か…その件については私達も調べてみるよ、とりあえず君たちも一度佐世保で休息と補給をした方が良いよ」

そういい京也達を案内する。

「どうしたの?」

浮かない顔をしていた京也に気づき玖由は尋ねる。その瞳は相変わらずすべて見透かされているような気分になる。

「…実は」

決心した京也はツクヨミの力を使う時に見た光景を玖由に話した。

ーーー

「そうなのね、もしかして私に気を使ってたかしら…?」

「……」

黙る京也の頭を優しく玖由は撫でる。

「ごめんなさいね…私も君に余計な気を使わせてしまうなんて反省しないといけないわね」

「そんな事無いです!」

その返答に驚いた様子を浮かべながらも直ぐに安心した表情で

「頼もしいわ」

「先輩の為ならなんでもしますから!」

「う、うーん…そこまでしなくても大丈夫よ」

やる気があらぬ方向に向きそうな京也に不安を感じつつ落ち着かせるように宥める。

「でも、それなら京也君に任せようかしら」

「何を…ですか?」

「憐斗を追跡して」

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