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57話 Crazy gap Ⅰ

京也の一言が予想がだったのか蒼嵐はその場で呆然とした表情を浮かべながら京也を見ていた。

「なんで味方同士で争う必要があるのですか!こんな事無意味じゃないですか!」

「そうだね、無意味なのだよ」

いつの間にか真横に立っていた映月が京也の耳元で囁く。

「戦う意思が無くても…でもなのだよ、君の仲間達のせいで戦わないといけないのだよ」

「せいって…そんな言い方はないのではないですか!」

映月の言葉が癇に障った逸希が声を荒らげて詰め寄る。

「その石を渡してくれさえすればこんな事しなくてもいい…」

「だからその理由を言えって言ってるじゃないか!」

逸希の怒りが頂点に達したのか声だけでなく口調までもが荒くなる。

「言えないのは僕達にとって不利益な事があるから、だからこそ渡せない!」

「なら、不利益を知って君達はどうするのだよ!」

遂に映月までもが声を荒らげ反論し始める。

「それを知ればいくらでも対策の…」

「明確な案も無いくせに軽々しく言うなのだよ!」

逸希を突き飛ばす。負けずに半歩下がるのみで留まり立ち向かおうとするが喉元に刃先が突きつけられている事に気づき立ち止まる。

「っ……」

「黙ってるのだよ」

「いい加減にしろ!」

遂に叫びながら映月の刃を奪いへし折り二人の間で交互に睨みきかせる。

「これが原因ならこれを壊す!」

結晶を纏った手の中にある塊を握りしめ徐々に力を込める。

「無駄なのだよ…それは破壊できない」

「うるさい!否定しか出来ない奴は黙ってろ!」

京也の迫力に流石の映月も負け後ずさりする。

しかし塊は映月の言葉どうりに固く京也の手の結晶にヒビが入る。

「はぁぁぁぁっ」

それと同じく塊にヒビが入り砕ける。

「嘘…」

塊の中から更に部品のような光のシルエットが現れる。

「あれが…ギャラルホルンの欠片…」

「ギャラルホルン…?」

蒼嵐の呟きを聞いた逸希は鋭い目を向ける。全員の注意がそれに向いている隙を狙い映月がその欠片を奪う。

「まさか見つけ出してくれるなんて…なのだよ」

「なにっ!?」

「感謝するのだよ、またね」

映月と蒼嵐は不意をつかれた京也達が追おうとする暇を与えること無くその場から逃げ去った。

ーーーーー

「ここが佐世保…」

小型護衛艦あけぼのから見え、海を照らす佐世保の街明かりに葵は目を輝かせて見つめる。

「けどあの光も佐世保は大陸から進行してくるアルマも多いからその監視の意味もあるのよね」

「一番危険な基地ですか…」

玖由の言葉に再び緊張感が張り詰める。

「それよりもいつの間にお出迎えに来てくれてたのかしら?」

艦橋の屋根を見上げると秋が足をふらつかせながら座っていた。

「流石に気づかれるよね」

秋は勢いをつけて甲板に着地、長く纏められた髪をなびかせ腹部に片手を当てお淑やかな一礼をする。

「貴方達とお話するのは初めてだったよね、自己紹介しないとだね私は海月秋、佐世保A-10改め対防空戦隊隊長やってるよ、よろしくね!」

無邪気な笑顔で玖由に手を伸ばす。若干警戒をしつつも悪意が無いと感じた玖由はその手を掴んだ。

「それで貴方達の指揮官から事情は聞いたけど連続殺人犯を追ってるのだよね?」

「そうね」

「私達も協力するよ」

「結構よ」

「玖由!?」

秋の協力を拒絶した玖由に葵は目を見開き詰め寄った。

「どうして断るんですか!?」

「私達の問題にこれ以上他人を巻き込めない」

「あはは、なら仕方ないね…でも私達はいつでも協力するよ」

拒絶されながらも好意的に接しようとする秋に葵は申し訳なく感じ必死に頭を下げた。


佐世保に上陸した一度秋達と分かれた玖由が向かった先は古びた建物だった。迷い無く足を踏み入れる玖由に対し葵は警戒する様に周囲を見渡す、すると小さな看板に『 工務店』と書かれていた。葵は恐る恐る中に踏み入れ扉を開けると目の前を目に見える衝撃波が通過する。

「ひっ!?」

小さく悲鳴を上げた葵は衝撃波が飛んできた方を見ると玖由と背の高い青年が立っていた。

「玖由、そ…その人は誰ですか?」

「あぁ、この人は上井(かみい)獅音(しおん)

「上井…もしかして葉月さんの…」

「あぁ葉月の弟だ」

「佐世保に武器の製造が優れている弟がって聞いたから依頼してみたの」

玖由は自身の腕長さ程ある柄に刃物部位の長さが極端に短いが厚みのある刀を手にして話す。「それは?」と尋ねたそうな葵の表情に

「これは衝撃波を放てる剣よ」

そう答えながら玖由は柄に取り付けられた引き金を引く。すると柄内部に空気が取り込まれ刀を振ると同時に引き金を離す、すると刀の通過した軌道上に衝撃波が発生し刃先の直線上を通過し壁に直撃し破壊した。

「あのー無闇に破壊しないで貰えるかなぁ」

「直せるでしょ?」

「そういう問題じゃないんだって」

頭を抱える獅音をよそにその刀を鞘に仕舞いそれを葵に差し出す。

「えっ…?」

「試作だけど…葵の戦闘スタイルに合うかなって思ったの」

剣と銃を使い分けて戦闘している葵を見て武器の切り替えによるタイムロスを無くす為に玖由が葵の技術に合わせて開発したのだった。

「ありがとうございます、大切に使わせて貰いますね!」

玖由の気持ちに嬉しさを感じ刀を受け取りながら笑みを浮かべて答えた。その時甲高いサイレンが鳴り響く。

「警報!?」

「そうね、ちょうど良かったじゃない試運転がてら撃退に行きましょう」

玖由の言葉に頷き二人は建物を出ていく。その後ろ姿を獅音は見送り

「葉月が言っていた通りの奴らだな」

笑みを浮かべ警報音がなる中、壁の修復を始めた。


「言われた通りにしたよ」

物陰に佇んでいるのを見つけ出し少年は声をかけた。その言葉に頷いている反応を見た少年は

「あと…あの人達も佐世保に居るのを確認した…」

その報告に疑問の言葉が帰ってくる

「誰って?君が言っていた人だよ」

僅かに驚きの表情を見せたがその表情はすぐに狂鬼の笑みに変わった。


警報を聞きすぐさま建物を飛び出し海岸に向かった二人だったが既に迎撃が始まっていた。

「流石のはやさね…」

玖由は足の武装にスクリューを取り付け着水、葵は武装を纏い飛翔しそれ戦場に向かう。海を照らせるように作り替えられた街明かりと灯台による灯りにより海上は照明弾を放ったような明るさだった。

「これ以上は行かせないように!」

「「了解です!」」

秋の指示に従い海上、上空に隙間の無い陣形を作り上空のアルマをうちおとすが徐々にアルマの数に押され始め被弾する者も増えていた。

(今日のアルマ…いつもと違う…!?)

アルマに違和感を感じ秋は

「全員!各自連携を取りアルマの撃墜に変更!単独撃破はなるべく避けて!」

作戦の変更を伝えた。その指示に従いアームズは弾幕を一点に集中させアルマの逃げ場を無くし囲い込み撃破をしていく。しかしそれによりアームズ達の作戦の変更を察したアルマは弾幕を被弾しつつも無理矢理通り抜け囲い込まれ無いように動き回る。その結果再び弾幕がバラけ包囲網が崩壊しつつあった。

(こんなに早くバレた…しかも無理矢理通り抜けるなんて予想外な行動…ヒトと戦闘している気分になるよ…)

と思いつつも秋は四方から確実に仕留めようと襲いかかるアルマを一撃で消滅させていくが、他のアームズはアルマの戦術の変化にそう簡単に対応出来ず、片翼を撃ち抜かれ飛行能力を失い落下するものが現れた。

「このっ」

秋は機銃を上空に向け追い打ちを仕掛けるアルマを撃ち抜こうとするがそれを阻止する様に目の前にアルマが立ちはだかり視界を遮られる。

「どいてっ!」

間に合わないとそう思った瞬間に上空のアルマが爆発、更に続けざまにアルマが爆発し撃ち落とされていく。

戸惑う秋の横を玖由が風を切る速さで通過し両手の射出口からワイヤーを射出

「瑞鶴!」

「了解っ」

ワイヤーの進路に装甲を展開し進路を逸らし更に装甲を展開しワイヤーの動きを変えていく。絡まったワイヤーは網のようになり落下してくる人を受け止める。

「念の為ランチャーを持っていておいてよかったわね」

「上空は任せてください!」

ランチャーを背中に固定し玖由から受け取った刀を引き抜きアルマの群れに突撃する。

「お願いするわ!」

無線でそう答えた玖由は後ろで唖然としていた秋に視線を向ける。

「加勢するわ」

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