53話 Devil resurrection Ⅳ
結彩の紅い瞳がアークに向けられその視線に僅かにアークが怯む。しかし
「雑魚が、何人来ても変わらないんだよ!」
そう言い放ち結彩に襲いかかる。
「確かにそうかもしれない…けど!」
アークが伸ばした左腕は次の瞬間には切り飛ばされ
「あなたの体力を削ぐぐらいは出来る!」
「ぐっ…」
飛ばされた左腕は破裂、切り口は結晶化し再生不能となる。
(玖由達をこんなに…許さない!)
結晶の翼を創造し広げる。
「待って結彩!」
立ち向かおうとした結彩を玖由が呼び止める。
「お願い…ビーニを助けてあげて」
「ビーニって京也君のパートナーの…?」
「は…はい…」
京也は結彩の問に頷く。
「分かった、やるだけやってみる」
「あはははっ!残念だけどもう彼女を助けることは出来ないさ!」
「そんなハッタリ…卑怯よ!」
綾乃がアークの言葉を否定する、しかし
「卑怯なんて侵害だよ、本来なら彼女は私の攻撃を受けて消えていたんだよ、けどせっかく手に入れた身体を失うなんて勿体ない、だから私の力で生かしてるんだよ、だから私が消えれば彼女も消えるそんな中でどうやって助けるのかな?」
嘲笑いながらアークはかかってこいというように片腕を広げた。
「はあっ!」
結彩の結晶武装に重ねて結晶を纏った左脚の蹴りを放つがアークは勢いに押されつつも片手で受け止める。
「この程度?」
「まだ!」
受け止められた足を引き纏う結晶を解除、身体を捻り勢いをつけ今度は右足に結晶を纏い蹴り出す。それも受け止めようとしたアークだが弾かれ結彩の脚が通過した痕に刃が創られそれに気づいたアークは後に跳ぶ。同時に刃が地に突き刺さる。
「危ない危ない」
「ちっ…ウォーミングアップは終わりにしましょうか」
着地した結彩は脚を踏み込み拳をつきだす。すると衝撃波が結晶化しアークに衝撃波が迫っている事を自覚させる。
「そんなもの!」
アークは拳をつきだしそれを粉砕しようとするがアークに触れる直前、結晶の一部が開きアークを避けて通過した。
「なにっ…しまった!」
結晶に隠れて迫っていた結彩が視界が開いたことによって気づき後に下がろうとしたが背後の結晶に衝突する。
「何故だ!?」
開いていたはずの結晶が閉じアークの行く手を無くしていたのだった。
「はぁぁぁぁぁぁぁっ!」
拳の突きはアークの腹部に命中し衝撃波がアークを貫く。
「かはっ…」
衝撃波が結晶化しアークを宙に漂わせる。更に二激目三激目を打ち付け結晶がさらに拡大する。アークの胸ぐらを掴み身体を持ち上げる。
「離せ…!」
「そうね」
アークの言う通りに胸ぐらを離した直後、結晶が爆ぜアークに掛かっていた力が一度に襲いかかる。
「ぐぁっ!?」
吹き飛んだアークに結彩は結晶で創造した弓と矢を手にし矢を放つ。それはアークの肩を貫き貫いた傷を結晶化させる。地面に転がったアークは肩を抑えながら結彩を視界に捉えようとするが、結彩の姿は目の前には無かった。
「探してるのは私かしら?」
振り返ると弓矢を変化しショットガンへと創造させ銃口を向けて口を開いていた。すかさず逃げようとするアークだが逃がす隙を与えず引き金を引く。拡散した銃弾はアークの全身を撃ち抜き再び撃ち抜かれた場所を結晶化させる。
「動きが…」
関節が結晶化を始めアークの動きが鈍くなる。
「これであなたの動きも封じた、さっさとその身体から出て行きなさい!」
「しつこいなぁ…だから私が出て行けば彼女は死ぬって…」
アークの片腕に光が圧縮されている事に気づいた結彩はその場から離れる。
「言ってるだろっ!」
光が放たれ、安全な距離まで引けなかった結彩は身を翻し光を回避する。その光を放ったままアークはその矛先を京也達に向ける。
「させるか!みんな手伝ってくれ!」
京也が展開した結晶の壁の前に綾乃達は装甲を一列に展開し光を受け止める。
「「っ!」」
一枚また一枚装甲が破壊され光が近づいてくる。
「どこまでもどこまでも!」
光の出力が上がり装甲を破壊するペースも上がる。最後の一枚が破壊され結晶の壁まで到達する。
(押される…!)
徐々に押し負け後に下がる京也だったが後ろから押される力により止まる。
「えっ…!?」
「京也君…あなたは負けない!」
玖由の全身に一瞬の粒子が纏わりそれが京也に移る。同時に光の壁は粉砕され光が京也に突き進むが結晶を纏う手でそれに触れ握る。すると光が消滅した。
「何故だ…」
「今のは一体…」
玖由に一瞬の力が何なのか問いかけようとしたが玖由はゆっくりと地に倒れていっていた。そんな玖由を受け止める京也にアークは
「まだ…だ!」
再び光を圧縮し放とうとする。
「次あれを放たれたら…!」
「死ね…ぐっ…やら…せない!京也…!私をやって!うるさい…!黙れ!」
アークの意識にビーニが割り込み光の圧縮を妨害する。
「はや…く…!」
「……っ!あぁぁぁぁぁっ!」
叫びと共に京也の拳に眩い光が纏わる。その光に当てられた京也達が纏う結晶の武装が状態に消滅を始める。
「京也君!私の力も使って!」
結彩のツクヨミの力を手に集め京也の背中を押し力を分け与える。二人の力で増大した力を一気に放出することで一瞬で間合いを詰めアークに拳を向ける。
それを防ごうとアークは片手を伸ばし受け止めたが、断末魔すらあげる暇を与えないほどの一瞬でアークの身体は消滅し中からビーニの姿が現れる。
「ビーニ!」
「京也…」
精一杯の力でビーニは京也に向けて手を伸ばした。
クリークであり人を守りたいと考えていたが人と接しようとすると拒絶してしまう…今ならその理由も分かる、そんなあと一歩踏み出せない私の背中を押してくれたのが京也だった。他人から見れば京也の使う力は強引で雑に見えるかもしれない、けど私はそのお陰で勇気を持てた。だから今なら言える気がしたパートナーになって欲しいと…共にアームズとして戦って欲しいと
「結局言えなかった…折角京也から勇気を貰えたのに…叶えれなかった…」
涙声でビーニは後悔を口にする。
「大丈夫だ!だからそんなこと言うな!」
そう呼び掛けつつもビーニの姿が消えかかっているのは一目瞭然だった。
「ねぇ…京也…もし私がパートナーになってって…言ったら…」
「あぁ!俺でなんかで良いのなら!」
「そう…よかっ…た…」
安心したように微笑み目から涙を流しながらビーニの全身は光の粒子と化し消滅した。
「あぁぁぁっ!」
悔しさと怒りの感情が込み上げ京也は拳を地に打ち付けた。すると赤い血が地に滲み広がった。
その後、加勢により舞鶴からの援軍を妨害していたヘルプの信教者達を制圧した憐斗が合流し残存する両信教者達も制圧。甚大な被害を受けたヘルプは壊滅する事となった。
その夜、京都支部にて松根達と合流、それぞれがあった事を報告し合い夏凛達が用意した個室でそれぞれ休息をとる事になった。
「…お姉ちゃん」
松根は羽根の行動が腑に落ちず寝られずにいた。
(あんなにも争いを嫌っていたお姉ちゃんが…どうしてですか…でも何か考えがあってしているのだとは思いますが…今の私にできるのは…もっと強くなる事そしていずれは必ずお姉ちゃんの支えになるんです)
松根はそう決心した時、今まで全身に入れていた力がふっと抜け眠る事が出来た。




