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49話 I knew too much

「玖由…どうするの?」

列車砲の回避の為に飛び込んだ洞窟だったが着弾の衝撃により入口が塞がれてしまっていた。

「どうしようも無いわね」

入口を掘り返す選択肢をあっさり諦め振り返る。

「幸い道があるみたいだし行ってみましょう」

ライトのダイヤルを回転させ明るさを最大にし周りを照らしてみようとする。しかし思ったよりも周りは照られず光が闇に呑み込まれるように失われていた。

「予想以上にこの洞窟深いみたいね…」

ライトを仕舞い片目に暗視ゴーグルを取り付け奥に進む。

「京也君達は大丈夫かな?」

何度も無線を繋げようとするが繋がる気配がなく不安になった瑞鶴は玖由に尋ねた。

「問題ないでしょう、私が居なくてもきっと上手くやれてるわ、恐らく無線が通じないのは列車砲の砲撃に電磁波を乱すなにかが含まれてるんだと思う、それに今私達がいるような洞窟だと岩で電波が繋がらない状態になってるんだと思うわ」

「そうなのね」

冷静に話しながら進む玖由だったがその時天井から降った滴が玖由の首筋に落ち

「ひゃん!?」

冷静に見えて張り詰めた状態だった玖由は思わず驚いてしまう。

「っ〜〜!誰にも言わないでよ…」

玖由の貴重な可愛らしい反応に瑞鶴は思わず口を抑えて静かに肩を震わせながら笑った。

「い、言わないわ」

顔を赤らめながら玖由は足早に歩いた。

どれだけ進んだか分からなくなる程歩いた時、二人は少し開けた空間に出てきた。同時に瑞鶴のレーダーが反応する。

「誰か居る!?」

瑞鶴の言葉を聞き玖由は両腰に取り付けていた小銃に手をかけた。

玖由は暗視ゴーグルに映る情報だけでなく集中し音や気配を察知しようとした。

「見つけた!」

素早く小銃を切り離し気配を察知した方向に向けて銃弾を放つ。同時に目の前から刃が飛来している事に気づきその場から離れる。その直後暗視スコープを刃が裂き地に突き刺さる。

(やられた!)

その時降り掛かって来る気配を感じそれに対し両手に持つ小銃を重ね衝撃を受け止める。

「くっ…」

予想以上の強烈な一撃に玖由は一歩後ずさりをしてしまう。

「玖由!」

視界が封じられた中玖由が圧倒的に劣勢になっていた、それに対し瑞鶴が閃光弾を放つ。

瑞鶴の声で察した玖由は自身に掛る力を受け流し目を庇いながら後ろに下がる。すると眩い光が周囲を照らした。

「はっ!?」

明かりが照らした先に立つ人物に二人は目を見開いた。

「「ハウ!」」

「……」

ハウは二人と目を合わせることなく下を向いた。

「なにを…」

「玖由?」

「なにを蒼嵐に吹き込んだの!?」

玖由はハウの武装を掴み問いただす。

「言いなさい!」

ハウは玖由の精神を操る事を試みるが弾かれる。

(っ!?)

「無駄よ、ハウの力のからくりは理解しているから、あなたの目は人間の精神の中にある負の感情に干渉して操っているのでしょ?」

(理解…している…!…だから…負の全てを…すり潰せる程の感情…怒りで!)

「だから答えなさい!何を言ったのかを!」

(それでも…伝えてしまえば…玖由が…けど)

首を掴む力から玖由が本気で殺ろうとしている事が伝わってきた。

(流石に…このままだと…)

その時玖由の力が緩む

「分かってる……私に悪い事があるのよね、それも私が自覚したら駄目なんでしょ?」

「どうして…」

「分かるよ、だってハウを殺ろうとしたのにそれでも話してくれないから…私を守ろうとしているのよね、蒼嵐もその為に動いてる、違うかな?…大丈夫、私だって真実を知っても簡単にそれを受け入れない、それを変える為に自分の力で最後まで抗う!」

「玖由…」

その瞳に迷いを感じ無かった。ハウは玖由なら出来るのではないかという期待を感じ真実を話そうとした。

「玖由あなたには…」

その時玖由が力無くハウに重なるように倒れる。

「玖由!」

瑞鶴は駆け寄ろうとしたが次の瞬間玖由が手の平を瑞鶴に向けた。同時に瑞鶴はその場から動く事が出来なくなる。

「なん…で…」

「眠れ」

玖由の放った言葉に従うように瑞鶴は気を失い地に転がった。

「まさか!」

ハウは素早く玖由から距離をとるが着地をしようとした地面が突然崩れた。

(着地出来ない!)

ゆらりと立ち上がった玖由と目が会う。

「貴様は事実を知りすぎ、それをあろう事か玖由に話そうとした」

威圧感を感じる鋭い瞳を向け玖由とは思えない口調にハウは目の前にいる者が何かを察し目を見開く

「…神の幼子!?」

「その呼ばれは久しいな私はクユだ、まぁ貴様は消滅するがな」

ハウは崩れた穴に吸い込まれる。

「さようなら」

ハウを嘲笑うように玖由を真似た表情と口調で見下ろしていた。

(これが私の最後…)

ハウはふと自身の目に涙が浮かんでいることに気づいた。

(もう一度…梨絵に会いたかったな…あははっ…後悔ばかり浮かぶ…私らしい末路なのかな)

姿が闇に消えた数秒後にものが刺さる生々しい音が響く。更にその後に無数の光が上昇してくるがそれはクユの元に辿り着く前に消滅してしまった。

「くくっ…あははははっ!」

クユは笑う

「運命を変えるために最後まで抗うか、良い心がけだ玖由よ、しかしそれは叶わぬ」

と玖由の身体を足から順番に上がり股をさすり胸の膨らみをなぞり首を擦り唇に指を僅かに入れ頬までを触れた。

「玖由は私のものさ、身体も心もな、誰にめ渡さない」

興奮しているクユは深呼吸をし自身を落ち着かせ

「さて、ハウに関する記憶は消しておくか」

と気絶している瑞鶴に歩み寄りしゃがみ頭に指を当てる。微かに瑞鶴の身体が震えたのを見てクユは立ち上がり自身の頭に指に当てる。

「私の可愛い玖由」

そう呟き瑞鶴にした事と同じ事を躊躇いなく自分にした。同時に照明弾の効果が切れた。


「…っ…私は一体…」

暗闇で目を覚ました玖由は暗視スコープが破壊されていることに気づき照明弾を放つ。

すると目の前に倒れる瑞鶴に気づき駆け寄り身体を揺さぶる。

「玖由…ここは…」

「洞窟の中よ、何故か私達眠ってしまっていたみたいね」

その時二人の前に大きな底なしのように見える穴に気づく。

「私達が倒れた少し先にこんな穴があったなんて…落下しなくて良かったわね」

「えぇ…」

不信感を感じているのか玖由の表情は浮かなくそれを見て瑞鶴は尋ねた。

「どうしたの?」

「…何故私達が気絶したのかと思って」

「それは…ワーストの罠に引っ掛かってしまったからじゃ、この洞窟照明弾でも無ければ何も見えなかったから」

「なら何故私達は無事なの?、これがワーストの罠なら私達を突き落とせば始末できた筈でしょ?、多分…私達が気絶している間にここで戦闘があった、この穴はその爪痕じゃ無いかしら…」

「戦闘って…誰が…」

「分からないわ、とにかく奥に進みましょう少しだけど風を感じるから恐らく出口があるはずよ」

二人は洞窟の出口に向け穴を避けながら進んだ。

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