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44話 Those who know the truth IV

「なんで!お姉ちゃんこんな事!」

「勘違いしているみたいですけど私はあなた達の味方のつもりはありませんよ」

「私達を騙してまで…何がしたいのですか!」

二人の口調には裏切りによる怒りよりも裏切りを信じたくないような感情がこもっていた。しかし今までの羽根とは一転、狂気を感じる瞳で

「この世界は地獄のままで良いのです、それを変えさせるわけにはいかない、その為なら私は悪魔にでもなります」

「だからって!」

松根は飛び上がり羽根に攻撃を仕掛ける。

「どうして私達だけがあんな目に会わないといけないのですか?そんなのおかしいじゃないですか、だったら全員同じ目に会えば良いじゃないですか」

淡々と狂気的な内容を訴える羽根に松根は恐怖を感じその隙を付かれ押し返される。

「松根は私の考えが間違ってると思うのですか?」

「あ…当たり前です!」

「なら…死んでください」

「松根!」

飛翔し姉妹の間に割って入り刀を振り上げる。

「松根は殺させませんから!」

「私達姉妹の邪魔をしないで!」

羽根は腕で刀を受け止め砕く。

(しまった!)

砕いた刃先を葵に放つ。身を捩り回避するが腹部を掠めた、しかし身体を回転させた勢いを利用し羽根に蹴りを打ち込む。寸前で後ろに下がり直撃を避けるが頬を掠め血が流れる。

「ちっ…」

今までの羽根とは想像つかない表情で睨み血を拭う。

「まぁ良いです、二勢力どちらでも良い京都が占領されれば争いが絶えない世界になるのです、だからアームズに邪魔はさせません」

敵意を露わにして二人に襲いかかる。未だに理解が追いつかない松根は羽根の攻撃をただ眺める事しか出来なかった。そんな松根を自身に引き寄せ葵は一度距離を置こうとする。しかし羽根が目の前に現れ葵は素早く松根との距離を離し羽根の攻撃を受け流す。今の松根は完全に足でまといになっていたが、それを責める気にはならなかった。家族と命の奪い合いをする事がどれほど辛いかは理解していた。

(けど…このままだと葵にも傷をつけてしまう…!)

ある程度のダメージは梨絵が受ける事が出来るがそれ以上となるとそれは葵に与えられてしまう、それを恐れ咄嗟に葵の身体から離れ梨絵自身が羽根の攻撃を受け止める。

「梨絵…さん!?」

「この姿では久しぶりですねっ」

意識を失った葵を受け止め松根は着地し二人に向け砲撃をする。それを確認し羽根の腕をつかみ自身の位置と入れ替える。

「っ!」

装甲を背に展開し砲撃を防ぐが正面から梨絵の膝が羽根の腹部に打ち込まれる。苦しそうな表情が羽根に浮かぶが、それは一瞬で豹変し狂気の笑みをみせ

「あははっ!やはり梨絵さんでも躊躇ってるんですね!こんな攻撃全く痛くありませんよ!」

羽根は梨絵に刀を突き出すが霊体化した梨絵を貫いただけで攻撃を当てる事は出来なかった。梨絵は姿を消し葵に再び憑依する。

「今までの事はすべて羽根の計画だったのですか!?」

その問いかけに羽根は両手を広げ

「はい、そうですよ、ただ蒼嵐さんがああなるのは予想外でした…けどその程度、それも利用すれば良いだけ」

「まさか…蒼嵐の攻撃を受けたのも…!?」

「はい、自らの意思です、蒼嵐さんに後戻りをさせない為、追い込むために!狙い道りに蒼嵐さんは狂ってくれました!」

自身の計画の為なら自分の命すら犠牲にする。それ程の決意を持った姉を元に戻せるか…という不安が松根は感じた。それを見透かしていたように羽根は

「松根?最後にもう一度尋ねましょう、私と来なさい」

そういい松根を追い詰める。自分が追い詰められている事は松根自身にも理解ができてしまっていた。しかしこれ以上思いどうりにはならないと思った松根は

「いきません!私は必ずお姉ちゃんを止めます!」

そう答えた。

「残念…」

大袈裟に落胆したリアクションをとり次の瞬間には姿が突如消え二人の目の前に現れる。しかし羽根は背後から振り上げられた大鎌に気づき素早くその場を離れる。

「危ない危ない」

夕立の奇襲を完全に避けられず両腕から血を流していたが指先まで流れた血液を舐め再び口角が上がる。

「茉莉から尾行するように言われて来てみれば…」

大鎌が繋がれたアームズの先から砲塔が羽根に向いており羽根がそれに気づいた時には既に砲弾が放たれていた。着弾し羽根の姿が見えなくなる。

「逃げられましたの…」

手応えを感じなかった夕立は悔しそうに呟く。その予想どうその場には羽根の姿が消えていた。

「大丈夫ですの?」

夕立は二人に尋ねる。

「何とか…」

「……」

葵も松根も肉体的なダメージは大したことは無かった、だが姉の影響でいつかは松根まで狂ってしまうのではないかという不安が梨絵にはあった。

「とにかくここまで来てしまったのです、京都に向かいますわよ」

落ち着いた声で夕立は二人に声をかける。

「それに彼女たちももうすぐ到着する頃ですわ」


「ね…ねぇ玖由正気なの…?」

「当たり前でしょ」

震えている手を玖由は無慈悲に振り払う。

「き…京也は…だ…大丈夫なの?」

「平気ではないが、まぁ…仕方ないんじゃないか?」

「目を逸らしながら言わないでよ!」

「あははっ!相変わらず楽しそうだね!」

三人のやり取りを立花は腹を抱えながら笑う。

「楽しくないです!」

綾乃は立花に詰め寄り否定した。

「降下ポイントです、準備出来ましたか?」

「まだ…」

「良いよー!」

立花の返答を聞き南帆は玖由達が居る区画の扉が解放される。吹き込まれる風に向かって立花は飛び出す。

「やっぱり無理無理!」

「はやく行け」

容赦なく綾乃を大空に突き飛ばす。続けて玖由と京也も空に飛ぶ。ヴァルキリーシステムを起動させ滑空する。

涙目の綾乃は深呼吸をし鼓動を落ち着かせ玖由を睨む。

その視線から逃げるように玖由は下を見るとアームズがアルマに追い込まれているのが見えた。

「先に行くわ!」

ヴァルキリーシステムの操作し急降下した。綾乃達は玖由が落下した先を見るが何が見えたのか分からなかった。

夏琳の周囲からアームズの悲鳴が響きわたっていた。

「大井、実体化して!」

「駄目だ!そうしたら君が危なくなる!」

「それでも良いの!仲間を…守って!」

「わかったよ、夏琳」

上空からの射撃が次々にアルマを脳天から貫き夏琳の目の前に居たアルマに玖由が押しつぶすように着地した。

「後は任せて」

振り返りながら玖由はそう言った。

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