40話 Signal of annihilation Ⅴ
「待てっ!」
憐斗は逃亡を試みていたヘルプの幹部の元に辿り着く。
「辿り着かれたか…だがもう遅い」
憐斗の立つ位置と目の前の幹部達の場所が切り離される。
「なに!?」
更に足場が浮上し潜水艦のような乗り物が姿を現し憐斗から離れ始める。
「残念だったなぁ!お前でもここまでこれ無いだろ!」
「それはどうかな」
アマテラスの力を纏い憐斗の手には火の玉が展開されていた。
「はあっ!」
火の玉は幹部達の足場に直撃し数名が海に落下する。しかしそれでも潜航し始める潜水艦に
「まだ主幹部は中か…」
憐斗は足に爆発を起こしその勢いを利用し大きく飛翔し潜水艦の直上まで追いつく。対して潜水艦は機銃を憐斗に向け放つ。憐斗は空中で身体を捩り銃弾をかわす。更に手を伸ばし目の前に円形の炎を展開し触れた銃弾を溶かし憐斗を守る。潜水艦に着地する直前それを解除し右足を突き出し炎を纏い勢い良く着地し鉄の鯨の全体が海面から飛び上がり上下が反転する。更に海面に触れる直前再び爆発を起こし飛び上がるそれに手のひらを向ける。すると炎が一点に集中に鋭利な炎となり潜水艦を貫きその状態で憐斗は左右に手を振り潜水艦の装甲を空中で焼き切る。二つに割れた潜水艦は落下し沈み始め浮いた幹部達を憐斗は捉える。
「いいのか?ここで油をうってて」
その言葉に憐斗は不審に思い尋ねた。
「どういう意味だ?」
「施設を破壊する為に放ったアルマ、あいつを放っておいて良いのか」
この状況で笑みを浮かべる幹部達に憐斗は
「あの怪物に何かをしかけたのか!?」
胸ぐらを掴み問いただす。
「あれには力を喰らう能力がある、クリークを喰らうような事があれば誰にも止められないさ」
嘲笑いながら全てを話す彼らに怒りが込み上げるがそれを押え無線を手にする。
「暇だなぁ〜まぁそれの方がいいんだけどねぇ〜」
光が艦橋から僅かに見える黒煙を見ながら呟く。その時艦橋の無線がなり素早く手にする。
『幹部達を捉えた、後は任せて良いか?位置情報は送ってある』
「やる事早いね〜、分かった良いよ」
その返答を聞くと憐斗は無線を切った。その様子から只ならない事が起きている事は容易に察することが出来、光は全艦を憐斗から送られてきた位置に急がせたが、光が到着する頃には幹部達は柱に縛られ憐斗の姿は無かった。
「大和が…」
大和を飲み込んだ怪物は収縮を始め人の形を形成する。
「これで自由だ」
「「!?」」
怪物から言葉が放たれ三人は唖然とする。怪物は大和と瓜二つの姿となり三人を見る。
「よくもやってくれたな」
ドスの効いた声で言葉を行った瞬間姿が消える。
そう結彩が認識した瞬間には目の前に現れ軽々と蹴り飛ばされる。
「結彩さん!」
次の瞬間には松根の目の前に現れていた。しかし結彩の攻撃を見ていた為、反射で身をそらし攻撃を回避出来た。しかし風を切る音が目の前で聞こえ思わず怯んでしまう。そこにそれは二撃目が打ち込まれ胃から逆流した胃液を吐き出す。よろめく松根の胸ぐらの武装を掴み片手で軽々と持ち上げ
「ま…ずい…」
そう考えたがもがく暇を与えられず松根は勢い良く地面に打ち付けられ再び持ち上げられる。
「松根を離しなさい!」
「ははっ!ほらよ!」
笑いながら松根を梨絵に向けてほおり投げる。
「なっ!?」
かわす訳にもいかず受け止めるが衝撃までを受け流す事ができずに後ろに引きずられる。それを狙いそれは間合いを一瞬で詰め手を向け衝撃波を放ち吹き飛ばす。背後にある木に梨絵は打ち付けられその衝撃により木が二人の方向に折れ倒れ込む。押し潰される直前多数の結晶の槍が木を粉々にし槍の一部が急に方向を反転させそれに襲いかかる。しかしそれを軽々とかわし
「それだけなのか?」
結彩が遠距離から放った攻撃だと思ったそれは挑発をしようと振り返りながら言葉を出す。しかし結彩はそれの寸前まで迫っていた。
「まだに決まってるでしょ!」
「いつの間に!?」
余裕だと感じていたそれはその油断を突かれ焦るが結彩の攻撃よりも早くそれの攻撃が結彩に命中していた。
「ざんねんだったな」
しかし拳が命中した結彩は粉々に砕け消滅する。
「分身!本体はどこに!?」
上空からの殺気を察知し見上げる。
「やぁぁぁぁぁぁっ!」
手のひらを向け、細長い結晶の刃を突き出す。
それを見て右足を軸に身体を回転させ軸足で地面を蹴りその場から離れる。同時にそれから砲塔が展開され結彩に向けて砲撃する。その時結彩の目の前に装甲が展開され砲弾から結彩を守る。
「使ってください!」
装甲を展開した意味を理解しそれを踏み台に更に大きく飛翔する。
(もう一撃…!)
天に手をかざし巨大な剣を創造し振り下ろす。
あまりにも巨大過ぎる剣にそれが回避行動を試みようとした時には直撃を免れない状況だった。そう考えたそれは頭上に装甲を展開し剣を受け止める。徐々に一枚ずつ砕かれ衝撃で身体を支える足が地面にめり込む。そして最後の一枚が砕かれ、振り下ろした剣が地に突き刺さる。結彩は剣を手放し地面に着地すると同じくして突き刺さる剣は消滅する。
「はぁ…はぁ…かはっ…」
ツクヨミの力を酷使し過ぎた結彩は血を吐き出し膝をつく。
「大丈夫ですか?」
お互い支えながら歩み寄る松根と葵の無事に結彩は安心する。
「恐らくこれで…やれたはず…」
手応えがあった結彩はそう言い口の血を拭い巻き上がる砂ぼこりを見る。
(視界が…)
酷使により片目の視力が一時的に低下している為、ほとんどがぼやけてでしか見えていなかった。
「あぁ、こんな目に会うなんて想定外だったよ」
その声に満身創痍の三人は背筋が凍った。
「嘘ですよね…」
砂ぼこりの中からゆっくり歩き現れたそれに目を疑う。
「くっ…」
二人に戦わせる訳には行かないと思い再びツクヨミの力を使う
「あぁぁぁぁぁっ!」
身体の内部から締め付けられるような激しい痛みに結彩は絶叫しながらもツクヨミの力を使う。しかし視界が頼りにならない為にそれの気配を察知しそこに向かう。その察知は正確でそれに向けて刃が振り下ろされたが今の結彩にはツクヨミの力を完全に引き出す力は残っておらず刃は意図も容易く粉砕される。
「なっ!?」
「よくもこの私をここまでしてくれたな」
結彩の首を掴み
「このまま握り潰して殺してやる」
「くっ…」
一気に力を込めず徐々に苦しませるように首を絞める。
「あ…くっ…」
「結彩っ!」
結彩の身の危険に梨絵は演技を忘れ素の梨絵は立ち上がり結彩を救出しようと飛び出す。
「邪魔をするな!」
全砲門が梨絵に向き砲撃する。それの砲撃は梨絵に命中をさせようという意思は無かった。結彩を殺すのを妨害されなければそれで良かった。
(誰か…結彩を助けて…!)
梨絵がそう願った直後その思いに答えるように
「はぁぁぁぁっ!」
加奈が飛び出す。
「マチルダ!」
それの背後にマチルダは現れた砲撃を命中させ首をから手を離させる。落下する結彩が地に落ちる前に加奈が受け止め素早くその場から離れる。
「みんな大丈夫!?」
「はい…なんとか…」
見るからに全く大丈夫でない三人を見て何があったのかを聞く。
「そんな…大和が吸収されたっていうんか…」
(大和と同等、それかそれ以上の力があれにあるんか…そら三人がここまでやられるわけやな…)
加奈はランチャーを構えそれを見る。
(恐らくうちもかなう相手やないけど…それでも憐斗が来るまでの時間ぐらい稼げるはずや)
そう考えたのもつかの間加奈の目の前にそれは現れた。
「なっ!?」
腕につけた長砲身のランチャーを盾にするがそれも軽々と破壊、貫き加奈に向けて攻撃が進むが僅かな隙間にマチルダが装甲を展開しそれの攻撃を止める。その隙に加奈は後ろに下がり多段ランチャーを放ち装甲を避け周りを囲むようにそれに突き進み着弾。黒煙の中からそれは飛び出し着地する。更にそれは攻撃を仕掛けようとした瞬間、加奈達とそれとの間に火柱が立ち上がり憐斗が姿を現した。
「「憐斗!」」
憐斗は傷まみれの結彩を見て歯を食いしばりそれを睨んだ。