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38話 Signal of annihilation Ⅲ

蒼嵐と梨絵睨み合う二人を邪魔する様にパソコンの通知音がなる。見ると運良く生き残っていた一名が操作しデータを削除していた。

「しまった!」

慌てる梨絵達とは裏腹に蒼嵐は手元からメモリースティックを取り出す。

「残念ね、もうコピー済みなの」

短剣を振りかざす。

「それ以上は…!」

殺そうとしている事は明白で梨絵は蒼嵐との間合いを詰めその手を握り抑える。

「殺しては行けません!」

「なにを…もう私は遅いの!手遅れなのよ!」

「そんなことありません」

「亡霊に何がわかるの!」

梨絵の手を振り払いそのまま梨絵の腹部に肘を打ち込む。

「ぐっ…」

(まさか…!)

蒼嵐は銃口を梨絵に向け銃弾を放つ。しかしその弾は梨絵を貫通した。同時に蒼嵐は膝を突き上げる。するとそれは梨絵に命中しよろめかせた。

「やっぱり同時にふたつの攻撃は避けれない!」

そう確信した蒼嵐は一度に二回の攻撃が通るように立ち回る。

(そうきますか…なら!)

梨絵は身を引くくし蒼嵐に突っ込む。それに対し蒼嵐は変わらずの攻撃を仕掛けるが蒼嵐の身体をすり抜け梨絵は背後に回る。

「霊体化!?」

「若干反則技な気もしますが、負ける訳にもいかないので!」

蒼嵐の背中に手を当てると衝撃波が広がり軽々と吹き飛ばされる。

「かはっ…」

素早く梨絵は体制を立て直される前に間合いを詰め拳を打ち込む。しかし二撃目は蒼嵐には大したダメージが入らず体制を立て直される。明らか手加減された攻撃に蒼嵐は理解できないと言った表情を浮かべたがその疑問はすぐに解消された。

梨絵は手に持つメモリースティックを見せたからだった。

「いつの間に!?」

「自分で言うのもあれですが、私こういう事は得意でしたから」

「っ!」

悔しがる表情を見せながら蒼嵐は銃口を向け

「返して」

と訴えた。しかし梨絵達の態度は返す気はさらさらないと言うようだった。その姿に蒼嵐はため息をつく。

「…分かった、その代わり条件があるわ」

「条件…?」

「絶対に玖由と憐斗は見せたら駄目…それだけは約束してほしいの!」

「分かりました…っ!?」

建物が軋む音が聞こえた梨絵は後ろで2人を見ていた松根まで駆ける。

「松根も聞きたいことあるでしょうけど、それ所じゃなくなりました!こっちに!」

梨絵は葵を背負い松根の手を掴む。そして

「ごめんなさい!」

両手が塞がった梨絵はそのまま蒼嵐に体当たりをする。同時に建物が崩壊を始める。それも自然的では無く何かに破壊されるように崩れる。頭上から落下する瓦礫に松根は思わず目を閉じるがその場に居た四人をすり抜け落下する。

「えっ!?」

「霊体化の力です!私が触れた人にもこの力が伝わるのですよ!」

落下する建物を掻い潜り梨絵は瓦礫が飛来する範囲外まで移動した。


「本当に良いのですか!?あれを解放させてしまうなんて!」

「これしかないこの建物は用済みだ!なら奴らごと消えてもらう」

「しかしあんな化け物を…この国は終わりだな…」

信教者達は身支度を終え足早に地下通路を歩いていく。しかしその背後から忍び寄る姿に気づくこと無く、絶命するまでの時間は長くなかった。


落下する瓦礫は梨絵達だけでなく建物内に侵入していた憐斗と結彩にも襲い掛かる。

(仕方ない…)

結彩はツクヨミの力を使い結晶を頭上に傘のように展開し埋もれる前に脱出をする。

「ねぇ…あれ!」

脱出した直後に空を見た結彩は建物を破壊した正体を見て唖然とする。建物は五階建てだったがその高さを余裕で超える高さに、その巨体からしても圧倒的にバランスの悪い巨大な腕を備えた怪物だった。


「モチーフはゴリラみたいですね」

「そんなこと言っている場合じゃありません!何とかしないと!」

葵に憑依した梨絵は作戦を考える。

憑依した葵の姿に蒼嵐は目の前の怪物よりも目を疑った。

「まさか、あなたが…葵、そして梨絵…だったの…!?」

「今はそれどころじゃ…」

「こっちの方が私には重要なのよ!」

そう叫び押し倒しながら訴える。そしてその目には涙が溢れていた。

「これは葵の罪滅ぼしなんです!葵が望んだ事なんです!蒼嵐は葵の気持ちを…踏みにじる気ですか!?」

「そんな…事を思って…」

「なら、これ以上この事に関しては関わらない事をおすすめします、松根行きますよ!」

葵と松根は武装を纏い巨大な怪物に突っ込んだ。蒼嵐の武装は対人には有効だが対アルマには手持ちの武装を使えず足でまといになると考え逃亡したであろう信教者達の捜索に向かった。


「憐斗!」

「破壊を始めたか…となると既に逃亡を始めているみたいだな、結彩あの怪物の相手を任せて大丈夫か?俺は逃げた奴らを追う」

「任せて」

結彩は結晶を全身に鎧のように纏う。

「行ってくる!」

背中から結晶の翼が伸び飛翔、怪物に向かった。

「もう遅いかもしれないな…」

憐斗は力を使い瓦礫を焼き払い消滅させる。その中に地下へと続く道を見つけた。


「っ…」

目に鋭い痛みを感じ京也は目を抑える。

「京也!血が…!」

驚く綾乃の口を押え

「俺は大丈夫だ…結彩さんが戦っているんだと思う」

結彩がツクヨミの力を使わざるを得ない状況になっている事は理解出来た。

「そうなんだ、結彩さんがあの力を使って戦闘をしてる事は秘密にしておいた方がよさそうね…」

と眠る玖由を見る。一度意識を取り戻し目を覚ました玖由だったが事後報告と現状の報告を聞き再び眠ってしまった。かなり疲労が溜まっていたのが二人にも容易に察することが出来た。そんな玖由に憐斗達の状況を正しく伝えると再び無理をしようとするのは明白だった。しかしそれを阻止が出来る事が出来る京也達がその手段をとらない理由は無かった。


「なんだあれは…!」

怪物に気を取られた隙を突き大和に向けて砲弾を放つ。しかし怪物に気を取られていたといえど、同時にハウも警戒をして為、僅かに遅れたが装甲を斜めに展開する事で砲弾の軌道を逸らす。斜めに展開した為身を乗りだすことなく砲塔のみを突き出し砲撃をする。軽い身のこなしでそれを交わし再び大和に砲塔を突き出した。それに対し身をかがめることで避けハウの砲塔を自身の砲塔で弾く。立ち上がる勢いを利用して体当たりをハウに仕掛ける。想定外の攻撃によろめきバランスを崩す。その隙に大和は小柄な身体を活かし後ろに回り込み、ハウを押し倒し抑え込むことが出来た。

「もう一度聞く、あれはなんなんだ!」

怪物は大和達がいる場所は建物から数キロ離れた場所だったがそこからでもその怪物の姿を捉えることが出来た。

「あれも…ハザードアルマの一種…突然変異…みたいな…もの」

「なんでそんな物を!」

「逃亡…するつもり…だから…」

「っ!」

大和を振りほどきわざと地面に砲塔を向け着弾した衝撃波で砂ぼこりが巻き起こり大和の視界を遮る。

「まずい…!」

全砲門を空砲で放ち砂ぼこりをかき消し視界を開かせる。

「居ない…逃げられた!」

辺りを見渡すがレーダーからもハウを探知する事が出来なかった。

(ステルスを使われたか…)

「そんな事よりも!」

大和は無線を使い憐斗に連絡を取る。憐斗はすぐに応答した。

「憐斗!あいつら逃亡しているぞ!」

『あぁ…そうみたいだな』

憐斗は地下道に散らばる信教者の遺体を見ながらそう答えた。

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