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33話 Truth is Ridicule Ⅲ

「はぁ…」

自室でベットに転がり松根はペンダントを目の前に掲げる。その時ス携帯が震えそれを手探りで掴み見る。

「明歌さんから…?」

不思議に思いながらも明歌の電話に出る。

「よかった…!繋がった!」

焦っているような声に松根は重要な事だと覚悟した。しかし明歌の声から伝わった事はその覚悟を上回る事だった。

「分かり…ました、今から向かいます!」

手から落ちそうになる携帯を両手で持つが手が震えているのが感じられた。

「っ!」

家を飛び出そうと玄関を開ける。

「おわっ!?」

いきなり扉が開き葵が慌てて下がる。

「ちょうど良かったです!来てください!」

「えぇっ!?」

葵の手を引っ張り松根は階段を駆け下りた。


「なに…蒼嵐が!?」

蒼嵐が羽根を殺しかけたという流星からの報告に思わず声が出て取り乱す憐斗だったが一呼吸を起き状況の詳細を尋ねる。

「分かったこちらでも蒼嵐の行方を探す」

通信を切り憐斗は机を殴った。理解し難い状況を突きつけられたのが誰の目からも分かる状態の憐斗を見て大和は憐斗をそこまでさせる事が気になり事情を聞く。

「蒼嵐が羽根を殺しかけたと…今夕立が追ってるなら居場所も分かるんじゃないのか?」

「そのはずだがな…」

憐斗は時計を見る。

「流星の言葉が正しいともうすぐ六時間だ…こんなに夕立の連絡が無いのは」

「まさかあの夕立に限ってそんな事」

「有り得ないと思いたいが…」

「誰!?」

扉を蹴り破る勢いで開ける。しかしそこには誰も居なかったが少し離れた場所の窓が開いていた。

「っ!」

「大和行くな!」

窓に向かう大和を止めようとするが

「もしかしたら蒼嵐かもしれないんだ!行かないと!」

制止を聞かず窓から飛び降りた。同時に微かに反対側の通路から足音が聞こえ憐斗は物音を立てずに忍び寄り曲がり角の先の階段を見下ろす。

「これは…」

と床に落ちる1枚の紙を拾う。それを見た憐斗は

「一番聞かしたくない人に聞かれたか…」

そう呟き足早に引き返した。


(まさか…蒼嵐が…どうして…羽根も…理解できない!)

階段を駆け下り玖由は考えるが理解しなければいけない情報の多さに処理が追い付いていなかった。

とにかく冷静になれる場所を求めて咄嗟に生徒会に飛び込む。そこには帰宅する為の片付けをする京也と綾乃が居た。憐斗に持っていったはずの資料を持ったまま血相を変えて飛び込んできた玖由に驚き何があったのかを尋ねる。心配をかけたくない玖由だったが今の自分の状態を見て『何も無かった』では信じる事は絶対に無いと考えた玖由だったが

「驚かせてごめんなさい、憐斗が居なかったし早く帰りたかったから走って戻ってきたの」

と無理のある言い訳をする。案の定信じられないといった表情の京也と綾乃だったがこれ以上問いただしても無駄と思ったのかそれ以上無かった。

「ならはやく帰ろ、玖由の分も片付けておいたからさ」

「ありがとう…」

玖由は鞄を受け取り足早に学校を出る。すると玖由はいきなり止まり

「ごめん…急いで帰りたい理由があるから今日は別で帰るわね」

と、二人とは反対を向いて歩いていく。

「なぁ…綾乃?」

この後の綾乃の行動に察しがついた京也は恐る恐る尋ねる。

「お察しの通りよ」

「だよな…」

二人は玖由の後を追った。

「宛てはあるの?」

結晶の中から瑞鶴は玖由に尋ねるが返答はなかった。

「無いならむやみに探しても…」

「分かってる!それぐらい…けど!」

玖由には絶対に会うことの出来る自信があった。しかしそれが何処から湧き上がっているのかが分からない為、それを伝えなかったが、思考を一方的に感じることの出来る瑞鶴は

(これがクリークの嫌な所ね…)

そう思いため息をついた。

その時だった、男の悲鳴が響き渡り玖由は立ち止まる。

「っ!」

玖由は素早く声が聞こえた方角に向かった。

「ひ…ひっ!」

小太りの男性が振り返った先には包丁を持った男が立っていた。

「すまねぇなおっさん、誰でも良いんだけどさ人を殺したくてさぁ」

へらへらと笑いながらそう言い刃先を向ける。

「死んでくれない?」

「いいよ」

その時背後から言葉を承諾する返答が返ってくる。同時に包丁が地面に落下する。

「へっ?」

包丁を握ったまま右手が切り落とされていた。

「う…うぁぁぁぁぁあぁっ!?」

「ほら、殺りあお?」

次は立ち上がる力が無くなり地面に突っ伏した。両足を切り落とされていた。

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい」

「なんで謝るの誰でも殺したかったんでしょ?なら同じ考えの人とやり合わないと、それとも」

背中に手が当てられる。

「弱者をいじめたかっただけなのかな?」

背中の手がめり込み身体に侵入してくる。男はただただ悲鳴をあげるしか無かった。声がかすれ喉が潰れても悲鳴を上げた。そしてめり込む手は男の心臓を掴んだ。

「……ァ…」

次の瞬間心臓握り潰され最後に言葉にならない声を発し絶命する。

「ひぃっ!」

人影はフラフラと立ち上がりもう一人の男性を見る。そして腕を伸ばし手を向けた。

腰を抜かし倒れた男性の目の前に玖由が舞い降りる。すぐに瑞鶴が実体化し男性に早く逃げるように促す。

「っ…」

人影の横に散乱する遺体を見てしまった玖由は吐き気と頭痛に襲われ視線を外し口を抑えた。

(やっぱりまだ…慣れないか…)

「あなた、蒼嵐でしょ!?なんでこんな事するの?」

瑞鶴は人影に向かって尋ねた。

「分かってたのね」

陽のあたる場所に蒼嵐は歩み姿を見せる。髪を解き、返り血を浴びた姿の蒼嵐は今まで玖由達が知る蒼嵐では無かった。

「なんで…こんな事を…」

「私が全ての悪意を殺す、これは私の意思で誰に従っている訳でもないわ、全ては世界の破壊を止める為」

尋ねられる事を全て理解しているように蒼嵐は答える。

「なんで人を殺す事が世界を救うことになるの!?」

「悪意が悪魔を呼び覚ますから…」

蒼嵐はそう言い残しそのまま立ち去ろうとする。

「待って!」

顔色の悪いままの玖由が蒼嵐を止める。

「これ以上同じ事をするなら私が…止める!」

「どうやって?そんな状態で?」

玖由は踏み込み蒼嵐に拳を突き出す。

「はぁぁぁぁぁっ!」

続けて攻撃をするが本調子ではなく動揺したままの玖由の攻撃は単純で蒼嵐は容易に避ける事が出来た。

「私も生半可な覚悟で殺しているわけじゃない!」

吹っ飛んだ玖由を瑞鶴は受け止め

「蒼嵐の言う悪魔ってなに!?」

「それは…言えない」

蒼嵐は目を逸らしそう答えた。そして

「これ以上詮索しない方が良いわよ、私みたいになるかも知れないし」

血塗れの手を見ながら呟く。

「先輩!」

そこに武装を纏った京也と綾乃が二人の前に立ち目の前の敵に身構える。しかしその敵が蒼嵐だという事に理解するまで時間がかから無かった。

「何故…」

二人の姿を見た蒼嵐は僅かに微笑み

「さよならみんな」

そう言い残しその場から立ち去る。するとサイレンの鳴り響く音が玖由の耳に届きすぐに露達が駆け付けた。

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