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30話 MyPrince IV

「ふふっ…あはははっ!」

虎狼は笑い京也をみる。

「諦めない精神気に入ったよ!敬意を評して僕も全力で相手をしよう!」

「っ!」

京也は距離を詰め爆弾を手にする。それを見逃さなかった虎狼は手に持つ爆弾を狙う。しかし京也はその爆弾を握りつぶし自ら爆発を起こさせる。

「なにっ!?」

黒煙の中ビーニの武装を解除する。

「まさか…あれを…!」

ビーニは京也の行動を察し目を見開く。

「あぁ!」

首から掛けた結晶を手に握り突き出す。

「行けぇぇぇっ!」

紫の光の一線が京也手の中から飛び出し虎狼に突き進む。虎狼は装甲を展開し防ごうと試みるが光はそれを透過し胸部武装を貫く。

(かかった!)

虎狼は武装が強制的に解除される。何度も纏おうとするが武装そのものを奪われている為纏うことは出来ない。

光はそのまま曲線を描きながら方向を変え南帆にむけて突き進む。

「その光に当たったら駄目だ!」

「分かってます!」

光をギリギリまで引き寄せ南帆は身を捩り寸前でかわす。すると光は地に突き進み地中に潜る。

「潜った!?」

足元から飛び出すと予測した南帆は立ち止まらず動き続ける。南帆の予測した通り足元から光が突き出し、それを武装に接触しないように身体の正面を光にむけてかわす。しかし背後から光が更に飛び出す。

「分裂していたというのですか!?」

身を捩り回避をしようとするが右腕が光に貫かれる。

「っ!」

右腕の武装が奪われそのまま京也に突き刺さる。

「ぐっ…」

力に翻弄されそうになりながらも意地で抑え込み二つの武装を纏う。

「まじか…」

「こんな事が」

「京也…」

その場にいた綾乃と南帆、虎狼だけでなく試合を見ていた全員が京也の変化に目を奪われていた。

「はぁ…はぁ…」

纏うだけで体力の消耗が激しい為既に息が切れていた。短期決戦で決めないと負けると考えた南帆は素早く距離を詰める。

「負けない!」

南帆の武装が纏ってある右腕を突き出す。装甲を正面に展開し防ごうとするが一部の武装を奪われている為二つの武装を纏う京也の一撃は軽々と装甲を突き破り勢いを衰えること無く南帆を砲塔で殴り飛ばす。よろめきながら姿勢を直し虎狼に砲塔を向ける。

「っ!」

虎狼はその場から離れようとするがそれよりはやく京也は一斉射撃をする。

「倒させない!」

動いた虎狼と京也の間に出来た空間に南帆が割り込み剣を引き深く息を吸い目を見開く。

(見えた!)

「やぁっ!」

次の瞬間、砲弾が粉砕される。

(やっぱり手数がいるか…!)

「ビーニ!もう一度力を貸してくれ!」

「で…でもこれ以上重ねたら君の体が…」

「問題ない!」

「うっ…」

京也の一言に何故か頭痛を感じ頭を抑え

(なに…いまのは…)

我に返り京也を見る。

「分かった…君を信じるよ!」

光がビーニを貫き武装を奪い京也の力となる。

「ぐっ…」

武装の重さは纏う人には感じられない様になっているが全身が押し潰されるような感覚に襲われる。

「あぁぁぁぁぁっ!」

三つの武装を制御し南帆を睨む。

「はぁっ!」

爆弾を南帆にむけて放つ。

「同じ事を…」

刃先を爆弾に向ける。しかし刃先の届く間合いの直前で起爆し黒煙が南帆と虎狼を包む。

「まさか!」

黒煙を突き抜け砲弾が南帆の目の前に現れた。流石の南帆も不意の攻撃に対処が出来ず回避するしか手段が無かった。

(これを避けたら…)

後ろに居る虎狼を見る。

「会長…あとは任せました」

そう言い残し砲弾を全て引き受ける。

「副長!?」

南帆は戦闘不能判定となりその場に座り込んだ。

同時に京也の武装が強制的に解除される。

(息ができない…)

息をしようとすると心臓の締め付けられる様な痛みを感じ京也は心臓を押え呼吸をするのに精一杯で身動きが取れなかった。

武装が戻った虎狼は立ち上がり京也に砲口を向ける。

「武装を奪われた時は焦ったけどこれで終わりだね」

「マ…ダ……」

掠れた声で京也はまだ戦闘する意思を虎狼に向ける。

(その状態でなにが出来るんだ…まだなにか策があるのか…)

そう考えた虎狼は砲撃を躊躇う。

(それを…狙っていたんだ…!)

京也は右目を開眼させツクヨミの力を使う。


「っ!?」

「結彩…まさか京也君ツクヨミの力を!止めさせて!」

『本当に使う気なの!?』

『あぁ…じゃないと先輩を守れないんだ!結彩さんはそれでも良いのですか!?』

『だからといって京也君自身がどうなって良い理由にはならない!それに…』

結彩は京也を説得しようとするが京也は聞く耳を持たず意思が京也に引っ張られる。

「っ…ま…ずい…わ…」

結彩は暴走が抑えられず力が徐々に暴発を始める。

「結彩!力の発散がてら京也の元に連れて行って!」

返答する余裕の無い結彩は首を縦に振り玖由を抱き上げ部屋の窓から会場まで飛翔した。


「絶対…負けない…」

「次はなんなんだ」

折れた刀を手にし立ち上がる。すると刀に結晶が纏わり折れた部分が結晶に修復される。更に全身に結晶の鎧が形成される。

「君には驚かされっぱなしだよ、まさかそんな力があったなんてね…」

「っ!」

素早く距離を詰め刀を振り下ろす。虎狼は後ろに飛び直撃を回避したが衝撃波が結晶化し虎狼に突き進む。身体を回転させ結晶の衝撃波をかわす。地に足をつけた瞬間虎狼は違和感を感じすかさず後ろに飛ぶ。すると地面から結晶の槍が突き出される。

「あっぶな…」

地につけていた手を離しその手を虎狼に向ける。すると京也の周囲に結晶の刃が形成されそれを放つ。しかし虎狼はそれをかわさす体制をとらなかった。

「…?」

次の瞬間虎狼は今までのような大きな動きでは無く僅かな動作で刃をかわしそのうちの一本をすれ違いざまに掴み投げ返す。

「投げ返した!?」

しかし刃は鎧に砕かれ鎧には傷一つ無かった。

「今のは…」

「会長の才能です」

南帆が綾乃に歩み寄り手を差し出しながら答える。戸惑いながらもその手を掴み立ち上がる。

「私達の戦いは終わりました、これ以上敵意は見せなくても良いでしょう」

敵意の無い南帆は優しいお姉さんの様に綾乃には見えた。思わず見とれてしまっていた綾乃はハッとなり疑問を尋ねる。

「会長の才能とは一体…」

「瞬間的に集中力を極限まで引き上げる事ができるの」

(だから京也の刃を回避でき投げ返せたのか…)

「そうだったんですね」

「でも、あの子の力…話は聞いていたけど想像以上でした」

何気なく放った言葉に綾乃は首を傾げた。

「聞いていた…誰からですか?」

すると南帆はあっ…とした表情を浮かべ綾乃を見る。

「そう言えば秘密にするように言われてましたね…でももう良いでしょう」

そう判断した南帆は口を開いた。その頃京也と虎狼は激しい戦闘を繰り返していた。

京也は結晶の槍を空中に放つ。すると槍は分裂し虎狼にふりそそごうとする。

「一か八かかけるか…」

虎狼は体制を低くし京也との距離を詰める。距離を置くと読んでいた京也は不意をつかれ咄嗟に結晶の刃を放つ。

(狙い通り!)

結晶の刃をすれ違いざまに再び掴みそれを京也に向けて突き出す。それを京也は刀で弾くが京也自身も衝撃によりよろめく、しかし結晶の鎧の背中部分からから結晶を突き出しそれを支えにバランスを取り戻し体制の崩れた虎狼に斬り掛かる。

「これでとどめだぁっ!」

風を切り裂き刀が突き進む。

「そこまでよ!」

観客の声にかき消される事無くその声は京也の耳に届いた。

京也の刀は虎狼の寸前で止まり声のした方角を見る。そこには結彩に支えられた玖由の姿があった。再び玖由は結彩に抱かれ京也の位置まで飛ぶ。

「この試合私達の負けよ」

「どうして…ですか」

「この大会のルールとして参加者以外からの助力は失格、今の京也君の力は結彩と共有の力なのよ」

「そんな…」

落胆する京也に玖由は結彩の支え無しに歩み寄る。

「というのは建前で京也君が苦しんで傷つく姿を見たくない、それも私のせいで…」

巻かれた包帯を玖由は恨めしそうに睨み下ろす。よく見ると玖由の額には脂汗が滲み出ていた。表情には出さないようにしているがそれを悟られないように振る舞っていることに京也は気づき歯を食いしばった。

「でも…私の事を思ってこんな事までしてくれて、本当に嬉しかったわ、ありがとう」

その後試合は玖由の申告により失格、玖由は生徒会に入る事となった。

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