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29話 MyPrince Ⅲ

「さっきのは一体…」

「圧倒的な実力の差ってやつね」

松根と葵を一瞬で倒した南帆にモニター越しで見ていた結彩は言葉を失ったが反対に玖由は冷静な表情で結彩に答えた。そんな玖由を見た結彩にはまるでこの状況になる事を予想していたかのように見えた。

「あとは…京也くんと綾乃ね」

玖由は視線を京也達が映るモニターに目を移した。


「ぐっ…!」

「流石玖由君の弟子を名乗るだけあるね!」

ビーニの力を借り受け放たれる砲撃を最小限の動きでかわし再び爆弾をばら撒く。しかしそれは軽々とかわされる。

「そんなもの何度やっても同じさ!」

京也は虎狼の蹴りを受け止め綾乃のもとまで距離をとる。

「流石にあれは想定外だったが…」

虎狼の砲撃の寸前京也が割り込み砲塔を掴みあげ進路を逸らし綾乃を救出していた。そんな京也の予想外の行動を警戒していた虎狼だったがそのような行動はないと考え虎狼の動きが変わる。砲塔を二人の周囲に向け砲撃し逃げ場を無くす。唯一空けた場所から虎狼は突っ込み京也を抑え込む。

「君が倒されれば終わりだ!」

「させないっ!」

目の前で動きを止めた絶好の的に綾乃は砲口を向ける。「遅い!」

砲塔を抑え込まれ蹴り飛ばされる。

「あぁぁぁぁぁっ!」

力込め虎狼を持ち上げる。

「そんな力が!?」

京也を放し距離をとる。

(あんな力があるなんて…彼女への危害がトリガーなのかな)

そう考えた虎狼は標的を綾乃に変える。

「っ!」

自分が標的となったのを感じ防御をする身構える。

『良い?もし自分が標的になったら防ぐ防御はしない事、攻めに転じる為の防御をする事』

(そうだったわね…)

玖由のアドバイスを思い出しふっと笑みを浮かべ身構える体制を変える。

(…?)

身構える体制を変えた事に不信感を感じながらも虎狼は砲塔を突き出す。

(今っ!)

その砲口に合わせるように砲口を突き出しそれ同士を重ね合わせ甲高い金属に似た音が鳴り響く。

「なにっ!?」

既に砲撃をしてしまっていた虎狼にタイミングで綾乃も砲撃をする。互いの砲撃が砲塔の中で衝突し筒の中で抑えられなくなった衝撃が二人を吹き飛ばす。

「くっ…!?」

「かはっ…!」

互い壁に衝突する。

「京也ぁぁぁぁっ!」

「はぁぁぁぁっ!」

壁に衝突したダメージと砲撃の反動で身体が動かない虎狼に刃を向ける。

「あなたを倒せば終わるのはこちらも同じだ!」

「させない!」

佑が割り込み虎狼を守ろうとする。

「邪魔だぁぁぁっ!」

地に足をつけ身体の向きを変え佑に向けて爆弾をばら撒く。

「っ!駄目だ逃げろ!」

ばら撒いた爆弾を拳銃を撃ち抜く。撃ち抜かれた爆弾が爆発しそれに誘発され佑を巻き込むように大爆発を起こす。爆弾の衝撃と爆風で吹き飛ばされ叩き付けられたダメージで佑は戦闘不能になる。

「っ!」

再び地に足をつけ前を向き虎狼に瞳の刃を突きつけ刀を構える。

(くそっ…まだ動けない!)

目の前に突き出された刃先に為す術もなくやられようとしていた。

(やれる!)

「そうはさせません!」

横から突き出された刃に京也の刀は二つにへし折られ状況を理解される前に京也を転倒させる。

「刀が…!まさか!」

天地が反転している中横を見ると冷静な目付きで南帆が剣を横に突き出していた。

(全く衝撃を感じなかった…まさか最小限の力で刀の側面を突いたのか!?)

「大丈夫ですか?会長」

「助かったよ!流石が僕の副会長だ!」

「誰が『僕の』ですか、気持ち悪い、まず会長から倒しますよ」

若干虎狼の口調を真似た様に言い冷たい視線を向ける。

「さて」

南帆は綾乃と京也を見る。

「あなた達のチームメイト二人は戦闘不能になりました、残りはあなた達だけですよ」

「そんな…松根と葵が…」

南帆の言葉に綾乃は力無く呟く。

「流石副会長」

「黙っててもらえますか?」

虎狼を睨みつけ南帆は再び京也を見る。

「このまま大人しくやられますか?」

「ふざけるなっ…諦めたら先輩の約束が守れない」

「それは残念です」

南帆は再び京也に攻撃を仕掛けようとする。しかしその瞬間砲弾が南帆に向かって突き進む。細くレイピアに似た形状の剣を砲弾に向けて突き出す。見るからにへし折られそうな剣だったが砲弾に触れた瞬間砲弾が砕かれその場で崩れ落ちる。対して南帆の持つ剣は傷一つ無かった。

「砲弾も効かないの!?」

苦しそうな表情を滲ませながらも立ち上がった綾乃の元に素早く京也が寄り支える。バランスを取れるようになり「大丈夫」と伝え綾乃は一人で立つ。

「はぁっ!」

南帆は距離を詰め二人に攻撃を仕掛ける。全体的に細い形の南帆の剣は見る角度によっては認識する事が出来なかった。その角度は南帆は理解している為、独特な体制で攻撃を仕掛けてくる。

(間合いが分からない…)

「っ!」

間合いの分からない剣を直感でかがみ攻撃を避ける。

(どうしたら…)

「なるほどね…大体把握出来たわ」

動体視力の良い綾乃は先程の一瞬の攻撃で間合いの間隔が理解できていた。

南帆は間髪入れずに剣を突き出す。風を斬る音が耳に届く程のギリギリな回避だったが確実に回避ができていた。

「よそ見をしている場合じゃないよ!」

綾乃の復帰と同時に虎狼も立ち上がり京也に距離を詰め攻撃を仕掛けていた。折れた刀て虎狼の攻撃を防ぎ競り合う中虎狼は京也に話しかけた。

「驚いただろう?副会長の才能」

「才能…?」

「あぁ物の点を感じる才能さ」

「物の点?」

「物には必ず破壊出来る場所があるらしいんだ」

「らしい?」

曖昧な言葉に京也は聞き返す。

「僕も副会長から聞いただけではっきりとは分からないんだ、そしてその点を寸分違わず適した力で突く事で破壊できるみたいなんだ」

その時二人の間に細い剣が突き出され二人は距離をとる。

「会長、余計な事言わないで貰えますか」

「あまりアンフェアなのも良くないだろ?」

疲弊し息の荒い京也と綾乃に対し綾乃と同じダメージを受けているはずの虎狼と南帆は余裕な表情で会話をする。

「…どうするの…こんな事言うのもあれだけど無策だと勝てないわよ…」

「あぁ…」

(だけど…どうしたらいい…あんな化け物みたいな力の二人に勝てる案が思いつかない…)


「二人とも…ピンチね…」

「そうね」

負けると強制的に生徒会に入らされてしまうというのに冷静な表情で玖由は試合を見ていた。

「いいの?言ったら駄目なんだろうけどこのままだと負ける可能性があるのよ」

結彩ないつまでも冷静な玖由の考えていることが知りたく尋ねる。

「そうね、その時はその時で考えれば良いんじゃないかしら」

「そんな適当で…」

「良いの、それに京也くんなら逆転できる可能性があるわ」

と結彩を見上げた。


(あの力を使えば…でも…)

京也が迷う間にも生徒会の二人は攻めてくる。

綾乃と京也は背を合わせ攻撃を防ぐ。

(まずい…この防御のまわり方は…負ける!)

「綾乃飛べ!」

その言葉に反応し反射的に飛び上がる。

(負けられないんだ!)

靴の底を持ち上げ更に高く打ち上げる。虎狼と南帆は何かを仕掛けると考え綾乃に注意が向く。

(違うこれが狙いか!)

素早く京也を見るため視線を下に向ける。

「居ない!?」

「遅い!」

「いつの間に…!」

背中に何かを貼り付けられた感覚を感じる。

「爆弾っ!?」

気づくよりもはやく爆発を起こし二人を巻き込む。

「綾乃!副会長を狙え!」

「分かった!」

爆煙の中に居る南帆に向けて砲撃をする。黒煙の中に砲弾が突っ込む瞬間、砲弾が砕かれ南帆は綾乃に向けて飛び出す。

「しまった…!」

「はぁっ!」

刃先が突き刺さりそのまま落下、地面に突き落とされる。

「かはっ…」

気絶した綾乃は戦闘不能の判定となり京也は一人となる。

「君はこんな状況でも立ち向かうのかい?」

挑発でもなく京也という人物を理解しようとしているように虎狼は京也に問いかけた。

京也には二人が高い壁に見えたしかしこれを越えないと自分の目的、玖由の約束は果たせない。

(諦めるわけにはいかないんだ!)

「当たり前だ!」

京也の瞳を見て虎狼にも火がついた。

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