2話 Encounter Ⅱ
闇夜に街が寝静まるなかどれだけ音を殺しても響くような静けさの中、響き渡る警報音の中二つの影が素早く動いていた。
「ったく…何してるのよ…」
「あっ…綾乃のせいだと言いたいの?」
「あんな状況でまんまとトラップに引っかかるやつ綾乃ぐらいよ」
「玖由…あんたはいっつも!」
綾乃の愚痴を聞き流し玖由は綾乃の腕を引っ張り閉まりかける扉に向かわせる。玖由は裾からワイヤーを射出し巻きとる。二人は扉の閉まる直接をすり抜ける。
「文句はあと、今はここから脱出するのが先」
走り抜ける二人の前にロボットが落下してくる。対人用兵器ビークルだった。
「ちっ…綾乃」
「分かってるっ!」
くないに似た刃を両手に取り出し投げ放つ。ワイヤーに繋がれた刃はビークルに突き刺さるのを確認すると綾乃なワイヤーを引きビークルを引きずる。引きずられるビークルに絡まり更にビークルが横転する。
「そこっ」
ワイヤーに電流を流す。電流を流されたビークルはショートを起こし爆発を起こしそれに誘発され巻き込まれたビークルも爆発する。その時背後の隙をつかれビークルが刃を振り上げるが
「っ!」
二丁の銃を手に取り綾乃の左右を銃弾が掠めビークルを貫く。
「目的の物は手に入った、長居してる場合じゃないわね…」
「じゃあどうするのよ…」
玖由は無言で窓を見る。それを見た瞬間綾乃の玖由の言いたい事の察しはついた。
「馬鹿じゃないの?」
「あなたよりは賢いと思うけど」
皮肉を皮肉で返され言葉を詰まらせた綾乃は
「分かった分かった!行くわよ」
綾乃のあとを玖由は走りガラスを突き破る。宙を舞う二人を逃さない様にビークルが狙いを定め銃撃をする。
「っ…!」
玖由は綾乃を掴みワイヤーを伸ばし向かいの建物に引っ掛ける。大きく回転し建物の裏へ回り込む。
「どうすんのよぉぉぉっ!」
「うるさい」
地上が小さく見える高さからの落下に悲鳴を上げる綾乃を玖由は冷たく言い放ち突き放す。次の瞬間二人を受け止め建物の屋上に着地する。
「カチありがとうっ!」
カチと呼ばれた特三式内火艇はため息を付き瑞鶴に抱かれた玖由を見る。
「綾乃ってば…」
「やっぱり私が原因?」
無言で目を逸らしたカチを見て綾乃は謝まろうとした時
「別に謝らなくても良い、逃げ切れたんだから」
振り返ること無くそう言う。
「よくお分かりで…」
「大体は視線と癖で分かるから、覚えておくといいんじゃない」
と余計な知識を教えられムスッとする綾乃を尻目に
「あとは私がやっておくから、綾乃は休んで明日から学校でしょ」
そう言い玖由と瑞鶴は屋上から飛び降りた。柵にもたれかかり綾乃は地上を見下ろす。低いとは思えない高さに
「よくもまあ躊躇いもなく飛び降りれるわね…」
と呟いた。
翌日、いつもの目覚ましに起こされ寝ぼけながらも玖由は朝食を済ます。
「そろそろ玖由も学校に来るのよ」
「分かった」
蒼嵐の言葉に玖由は適当に答える。そんな玖由に蒼嵐は
「出席日数」
「うっ…」
玖由の動きが止まる。
「蒼嵐が伝家の宝刀を…」
「知らないわよ」
冷たく返され無言で玖由は立ち上がり渋々と制服を取り出す。
「別にそんな言葉で行くわけじゃないんだけど、気分的に今日は行こうかな」
そんな玖由を見て蒼嵐と流星はくすりと笑う。
「憐斗は?」
「もう行ったわよ」
「はぁ…行き先が同じだから一緒に行こうかと思ったんだけどね…」
「残念だったわね」
「先に行ってるわ」
「うん、行ってらっしゃい」
玄関を出た玖由は小さくため息を付きながらも屋根に飛び乗り屋根と屋根を飛び移りながら学校に向かう。これが玖由にとっての通学路だった。
「珍しいわね」
結晶状態の瑞鶴は玖由に語りかける。
「出席日数とか言われたらどうしようも無いから…それに、どんな新入生が来るのか気になるし」
「気になるなんて珍らしいわね…」
「なんとなくよ」
「てっきり男の子なら彼氏にしようとしてるのかと」
からかうように瑞鶴は言う。
「シャラップ」
「えー結構気になってる子居るみたいだけど…玖由綺麗なんだからさ」
「…っ」
動揺したのか踏み外し落下するが玖由は木の枝を掴み再び屋根の上に飛び乗る。
「そうなんだ」
関心が無いのを装いながら答え玖由は校門を越える。
「玖由あれ」
瑞鶴の声に木の上から地上を見下ろす。そこには一人を複数が囲んでいた。周りの人は巻き込まれたくないと見て見ぬ振りをしている。
「これだから…!」
玖由が止める前に一人を囲んでいた複数人は退散していく。
「大丈夫?」
玖由はその一人に手を差し出す。その子は戸惑いながら玖由を見ていた。その視線に戸惑いとは別の感情を含んでいると感じた玖由は
「何か気になる?」
と問いかける。
「いえ…どうして俺に話しかけたのかと思って…」
自分に関われば巻き込まれる、それを防ぐ為に気を使ってくれている。その言葉からそう感じた玖由は
「どうしてって言われても…助けたかったから、それ以外に理由っているの?」
そう答えた。
「あっ…いえ…」
更に戸惑いを見せる。予想通りの反応をする。しかし嘘は言っていないつもりだった。本当に助けて欲しいことは自分から求めれないという事は玖由自身嫌という程思い知らされていた。だから助けたそれだけだったのだ。その子の手を掴み立ち上がらせる。そして赤のネクタイを優しく持ち上げる。
「君は新入生ね、よろしくね」
どのような言葉を掛ければ良いか迷った結果の言葉を目の前の一人に掛ける。その子は何かを言いかけたがその時チャイムが鳴り響く。すると慌てながら
「また、お礼に伺います!」
と言い駆け出そうとする。その瞬間その子の首にかかる結晶が玖由の目に入る。
玖由はそれに目を奪われたが、我に返りその後ろ姿に
「そんなに急がなくても君の担任なら大丈夫よー」
と声を掛けたが
「って聞こえてないかな…それよりさっきのは…一応伝えた方が良さそうね」
そう呟きゆっくりと歩いていく。学園長室の前に来た玖由は扉を開ける。
「入るよ、憐斗」
「珍しいな今日は来たのか」
玖由は自分に声を掛けた人物、憐斗を見て口を開く。
「蒼嵐に脅されたから…出席日数って」
「そうか…それよりなにかあったのか?」
「そうね、早速虐めの現場を見た」
その言葉を聞いた憐斗はため息を付き
「止めに入ったのか?」
「入る必要も無かった強い子だったわ一人で複数を相手にしても臆して無かったから、あとその子の元にクリークが居た」
「クリーク…船型か?」
「首から掛けていたから恐らく…けど何となくだけど未知のクリークの気もする」
しばらく考えた憐斗は玖由に
「しばらくその子の監視を頼めるか?」
と問いかける。
「問題ない、私もその子に興味があるから」
「あとその子の名前だが」
「新入生だった、だから…」
と扉が開き蒼嵐が入って来る。
「丁度良かった、名簿見せて」
と蒼嵐の腕から勝手に名簿を引き抜く。
「この子かな木佐京也…」
「京也君がどうしたの?」
「話すと長くなるけど言いの?」
と時計を指さす。
「やばっ!?ま…またあとで聞く!」
と駆け出していく。開いたままの扉から玖由は出ていこうとする。
「しばらく京也君の様子を見てるから」
「あぁ頼んだ」
扉が閉まるのと同時に大和が実体化し憐斗に問いかける。
「未知のクリークか…どう思う?」
「手がかりになってくれれば有難いんだが、そう上手くはいかないだろうな…」
オリエンテーションが終わり下校する京也の様子を追跡していた玖由は京也の背後から石を投げようとする集団を見つける。
「また…」
小銃を構え集団の1人が石を京也に向けて投げるのと同時に静かに銃弾が放たれ石の軌道をずらす。気づいた京也は素早く動き石を避ける。すると今度は京也を掴み人気ない路地に連れられる。
「あいつら本当に気に食わないわね…」
怒りが爆発仕掛た玖由は屋上から飛び降り京也を掴む一人を踏付ける。更に見上げる二人の顎を突き上げ素早く足を絡ませ宙に浮かし両肘を二人に向けて振り下ろし地面に叩きつける。最後の一人は鉄パイプを手に向かってくるが、最低限の動きで鉄パイプを奪いそれに注意が向いた瞬間に膝蹴りを顔面に叩き込み歯を折る感覚と共に数メートル吹き飛ばし倒す。
「何やってるのよ…手加減ってものをしなさいよ…」
呆れた瑞鶴の声に
「手加減はしたわ、死んでないから」
そう答える。玖由からしたらまだ怒りの半分もぶつけていないのだった。
「それよりも…」
振り返り今朝と同じく手を差し出す。そして今朝と同じ反応をし
「また…助けたかったからですか…?」
と問いかけてきた。
「それもあるかな」
そう答え、更に
「君が気になったから」
と追加で答える。
「はぁ…」
呆れた瑞鶴のため息に玖由は不満そうに問いかける。
「何か間違った?」
「いきなり気になったって聞いたら混乱するでしょ…」
「そうなの?」
無言という答えに玖由は少し迷いながらも
「私は椎名玖由、よろしくね京也くん」
京也を立ち上がらせ玖由は自己紹介をし笑みを向けた。