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22話 Team Ⅴ

「お待たせ」

「遅いです!何があったのですか!?」

合流するや否や松根は綾乃に詰め寄る。

よほど気が気でなかったのかその表情に動揺を隠せずに居た。事情を説明する前に綾乃は既に試合が始まり戦う葵に視線を向け

「葵にはなるべく時間を稼ぐように言ってくれた?」

と尋ねる。

「一応伝えましたが…」

その返答を聞き綾乃は一安心をする。

「実は…」

そして綾乃は知っている事全てを松根に伝えた。

「玖由が危ない…それで今京也が救出に向かってると、でもそれが私達を負けさせるためのものなら私達だけで勝てば良いのでは?幸いにもこのルールならそれも可能じゃないかと」

試合ルールは毎回ランダムに選ばれ今回は5対5の3点先取というものだった。更に相手は奥田率いる部隊である為勝てば賭けもなくす事が出来るのだった。

「私もそう思ったけど京也が『もし俺達が勝つような事があれば先輩の身が更に危険にさらされるだけだ』って言われてさ」

(だからなるべく時間を稼ぐように…ですか…)

松根に盗聴器を忍ばせ二人の会話を聞いていた葵は自分を狙う攻撃を軽々と避ける。

(でも、難しいですね…この大会のルールとして消極的な行為と判断されたら即敗北…勝っても駄目負けても駄目、滅茶苦茶ですね)

手に持つミサイルを目の前に放ち相手を怯ませた。

綾乃は葵の試合から目を離しモニターを見る。『WINNER』という文字と共に小冬達が所属する部隊が映っていた。チームメイトは手を合わせて喜ぶ中浮かない顔をする小冬を見て綾乃は祈った。

ーーーーー

「お前はっ!?」

それ以上の言葉が出る前に京也は男を気絶させ鍵を奪い建物に侵入する。建物の構造を把握していない京也は手当り次第に開く扉を開けていく。その時前方の曲がり角から会話の声が聞こえ京也は辺りを見渡す。しかし今いる場所は直線の廊下が続き少し離れた場所に数ヶ所扉があるだけだった。

(どうしたらいい…ここの部屋はまだ捜索していない万が一飛び込もうとする部屋に鍵がかかっていたら…)

そこまで考え京也は自分の頭を抑え髪を乱す。

(考えてられない、もしもの事を考えるより今出来る最善策をすればいい!)

玖由の姿を見続け感じた事を実行し京也は最短の部屋の扉に手をかける。すると扉が開きその勢いのまま部屋に飛び込む。

「っ…!」

素早く扉を閉め近づく話し声と足音に耳を澄ます。徐々に遠ざかる音に京也は僅かに気を緩め暗闇の部屋を見渡す。手探りで部屋を探る中、その手に柔らかく生暖かい感覚が伝わる。

(なんだ…)

感触の正体を知るべくポケットの中にある小型の懐中電灯を取り出しそれに照らす。

「人…!?」

京也と同じぐらいの背丈の女性が気を失っていた。しかし明かりに起こされた女性はうっすらと目を開け京也を見る。しかし京也を人と認識した瞬間悲鳴のような掠れた声を上げ京也を突き飛ばす。女性の力は想像以上に強く部屋の端から端まで軽々と吹っ飛ぶ。

「なんだ!?」

その音に反応しやり過ごした筈の者達が戻ってくる。

「しまった…」

タイミングを合わせて飛び出そうと京也はドアノブに手をかけ身構える。

「ごめん…なさい…もう…許して…お願い……」

しかし、掠れた声で許しをこい怯える女性に視線が向き集中出来なかった。

「っ!」

有無を言わせる前に京也は女性を背負い上げ開きかける扉を蹴り開ける。唐突に加速し開く扉に対応出来ず扉を開けようとしていた者は顔面を強打し吹き飛ぶ。間髪入れずに京也は懐中電灯のダイヤルを回し光度を最大にしもう一人の男に向ける。眩しさに目がくらんだのを見て京也は走る。しかし背負いながら走ったために体力の消費がはやかった。

(もうかよ…!)

そう思った瞬間足がもつれ京也は前に倒れる。その瞬間首に掛けていた結晶が飛び出し背後にいた女性に触れる。強い光が結晶から放たれ女性を貫く。

「かはっ…!?」

その光は旋回し京也に直撃し拡散する。拡散した光一つ一つが武装の形となり京也に纏わる。

「これは…」

一瞬の出来事を理解しようとする京也に女性は手を伸ばす。

「まさかこれは君の…君は一体…」

背中に装備されている戦闘機に似た大きな翼を見て飛行型のクリークだと言うことは理解出来たが、兵器について詳しく無い京也にはこれ以上は分からず本人に尋ねる。

「び…B-29…」

と女性は自分の名を告げた。

「この力…俺に貸してくれないか?」

その言葉に拒絶する様な反応をする。しかしこの状況では武器が無いと玖由を助ける事も何も出来ないと考えクリークの力は状況を反転させる事が出来ると思っていた。それ以上に人を怯えるB-29が自身と重なり放っておけなかった。

「約束する…君も必ず助けるだからお願いだ、この力を貸してくれ!」

そんな京也の訴えに彼女はゆっくりと頷く。

「ありがとうB-29」

「ビーニ…でいい…」

「分かったビーニ」

再びビーニを背負い玖由の元に向かおうとする。その時

「探し人…居場所…分かるの」

ビーニから京也に語りかける。

その言葉を聞き京也の足がピタッと止まる。

「分からない」

その言葉に背中からため息が返ってくる。

「なんだよ…」

「探し人…10階の…隔離室かも…しれない…」

「どうして分かるんだ?」

ビーニは以前から数度脱出を図っていたらしく建物の構造は把握しているのだった。

「案内して貰えるか?」

その言葉にビーニは無言で人差し指を上に立てる。

「えっと…それは?」

理解できない京也に更に天井を強調するように指差す。

「ちょうと…この真上が…隔離室…私…爆撃機…爆弾なら…たくさん…」

「まさか…爆弾で天井を爆破していけと?」

その言葉にゆっくりと無言で頷く。

「最短…それに奇襲にもなる…」

「それ以外考えては居られないな」

ビーニの指示どうりに腰に取り付けられたケースを開き爆弾を手にし天井に向けて投げる。間髪入れずに機銃で爆弾を撃ち抜き爆発を起こす。天井に大穴が開き上階の天井が見える。

「行くぞ!」

京也はビーニに手を差し出し、ビーニはその手を掴んだ。

「…いまのは」

耳に響くような炸裂音と揺れで玖由は目を開けた。その事に奥田も違和感を感じ荒々しい声で無線から尋ねていた。

「おい!今のはなんだ!」

「わかりません!気をーーー」

徐々に大きくなる音と振動は遂に玖由達の部屋の床が爆発を起こす。

「先輩っ!」

黒煙の中武装を纏い女性を背負った京也が現れる。

「その姿…」

「ビーニの武装らしいです、おかげでここまで来れました」

「ビーニ…」

玖由の視線に恐怖を感じたのかビーニは京也の後ろに隠れた。

「はははっ!まさか本当に来るとはなぁ!」

奥田の猛々しい笑い声に京也は声の主を睨む。

「なんだァその顔は、たかが武装を纏えたぐらいで図に乗るなっ!」

そういい奥田は腕に砲塔のみ武装を纏う。

(どうして全身纏わない…?)

その事を考える暇を与えないように奥田は京也に接近し砲塔を向ける。すぐさま京也は爆弾をばら撒き機銃で撃ち抜く。誘爆を繰り返し奥田を巻き込むが黒煙の中から砲塔が突き出される。

「っ!?」

咄嗟に威力を高めた爆弾を突き出そうとするがそれを弾かれ手から爆弾が離れる。すかさず後ろに飛ぶが向けられた砲口から砲弾が向かってくる。間一髪の所で装甲の展開が間に合い直撃を免れるが衝撃には耐えられず吹き飛び壁に打ち付けられる。

「京也くんっ!」

椅子に拘束されている玖由は京也を助けに行こうともがくがびくともしなかった。

「黙って見ていろ、目の前でこいつを殺してやる」

叩きつけられたダメージで動けない京也に砲塔を向ける。

「駄目ぇぇぇぇぇっ!」

玖由のその叫びと共に玖由を中心にオーロラのように波打つ光が広がった事に京也のみが気づいた。

「はぁぁぁぁぁっ!」

同時に手元に奥田に飛ばされ冷たい筒に包まれた爆弾が転がっていた。京也はそれを掴み自身に向けられる砲口に突き刺す。

「なにっ!?」

砲口が火を噴くのと同時に爆弾が起爆し二人を容赦なく巻き込むように爆発を起こす。直前に装甲を展開した京也は爆発に直接巻き込まれる事はなかったが爆風と爆発の威力をもろに受けた奥田は玖由近くの壁まで吹き飛ぶ。

京也の纏う武装が徐々に掠れ消え、ビーニの元に戻る。

「時間切れか…ギリギリだったな…」

身を潜めていたビーニは心配そうに駆け寄ってきた。

「……」

「大丈夫だ…それより先輩を…」

起き上がろうとするが身体は言う事を聞かず動けなかった。

「はやくはあいつから…鍵を奪わないと…」

「させるかぁ!」

奥田は立ち上がり玖由の長い髪を掴む。

「…っ!」

「先輩っ!」

「少しでも動いてみろこいつがどうなっても知らないぞ」

「卑怯…者!」

我慢の限界だったのかビーニは飛び出し奥田に攻撃をしようと試みるが玖由を前方に出され咄嗟に攻撃を逸らす。その隙をねらい奥田の一撃がビーニを弾き飛ばす。

「よく見ていろ、京也っ!」

刃物を振り下ろし玖由の髪を切り裂く。

(やめろ…)

切り裂いた髪を嗅ぎ京也に向けて髪の束を投げる。

(やめろ…)

更に身動きの取れない玖由の衣類を一枚一枚京也に見せつけるように脱がし肌を露にさせる。

「やめろぉぉぉぉっ!」

右目が開き更に瞳が現れる。それを見た玖由はもがきながら手のひらを開閉する。

「お願い…攻撃しないで…」

その言葉に奥田は笑う。

「遂にこんなことを言い出したぞ!傑作だ!」

「知るかぁぁぁぁぁっ」

結晶の刃を創り出し奥田に向けて振り下ろす。

「なにっ!?」

京也の予想がの行動に動揺する奥田、その間にも刃の距離は縮まりタイミングよく玖由は頭を下げる。回転する刃は奥田を突き刺し壁に打ち付ける。さらに細い結晶を放ち拘束台を破壊し玖由を救出する。

「くそがァ!」

尚も襲いかかってくる奥田に身構えるが

『京也くん!今すぐ玖由を連れてそこから離れて!』

その言葉を聞き反射的に玖由を抱え後ろに飛ぶ。すると巨大な結晶の柱が壁を貫き奥田を押し進む。

「二人とも助けにきたよ」

柱の結晶が消滅しその奥に居た結彩は二人の元に近づきそう言った。

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