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14話 Memory IV

「お待たせしました」

「なにかあったのですか?」

玖由から呼び出された松根と葵は玖由達と合流し事情を聞く。

「ワースト…」

葵と松根の表情が強ばる。

「そいつらの拠点を叩くという訳ですか」

「もしかしたら…」

いつに無く感情の籠った松根の声が玖由の耳に届き

「松根?」

そう尋ねると

「あっ…いや!なんでもないですよ」

と玖由以外でも簡単に見破れそうな誤魔化し方をする。

「はぁ…まぁ良いわ案内してもらえるかしら小冬ちゃん」

「は…はい!」

初めて会う人しかも先輩である人達に緊張している小冬はぎこちない挙動で向かった。

ーーーーー

「ねぇ…京也くんはなんでそんなに力にこだわるの?」

残された結彩と京也だったが重い雰囲気に耐えきれず結彩が口を開いた。

「力が無いと何も出来ない…現にこうやって残されてる」

「なるほどね…玖由がなんで京也くんを置いていったかなんとなく分かったわ」

「理由…?」

「玖由は京也くんの実力を認めていないわけじゃなくてその力に自信を持っていないから置いていったんじゃないかな」

「自信…か…」

自分の手を見てそう呟く。

「初めてあの力を使った時この力はものはの剣…使いこなせないって…その事もあの人には見抜かれてたんだな」

「誰だって最初は自信なんて無いわ、そこで怖気付いたら何も変わらないけど変わろうと努力して変わった人を私は知っているから…」

と憐斗を思い浮かべた。

(なんで私…憐斗を…もしかしてこれが記憶の一部なの…)

「っ…」

我に返り京也を見る。

「変わろうとすれば…」

「うん…だからそうするなら私も手伝うわ」

「どうしてそこまで…」

「君が彼に似てるからかな」

「彼…」

「…っ!?」

突然目が紅く染まり玖由達の身に危険が迫っているという事を伝える様なイメージが頭に過ぎる。

「今のは…」

同じように片側の瞳が変化していた京也が頭を抑えながら呟く。

「京也くんも感じたんだね…」

「今のは…っ!?」

取り乱した京也は問いただすように詰め寄り尋ねる。

「私にもよく分からないけど…玖由達が危ないってのは分かったわね」

そう言い京也を見る。そして試すように

「どうする?」

と問いかけてみる。

「助けに行くしか無い…か」

「なら、行きましょう」

と手を引っ張り部屋から出る。

「あっ…ちょっと!?」

制止しようとするマチルダを振り切り店を出る。玖由達の居場所は分からなかったが進むべき道に確信を持ち直感を頼りに向かった。

「加奈!二人とも行っちゃったよ!」

慌てるマチルダを落ち着かせ加奈は

「本当…あの子はどこまで分かってたんやろうね…」

加奈は少し恐怖を感じているような声で呟くが、自身の頬を両手で叩き気合いを入れ直す。そして

「マチルダうちらも行くで」

と店を出た。

ーーーーー

「あ、きたきた」

「先輩ここです…」

小冬に案内をされたのは見るからに廃墟で人が立ち入るような場所では無かった。

「どうだった秋雲?」

「あの後ずっと監視してたけど人の出入りは無かった」

小冬と同じぐらいの背丈のクリーク秋雲が状況を説明する。

「ずっとこうしては居られないわね…」

「そうね…」

と玖由は躊躇い無く入り口まで歩いていく。

「ちょっ!?」

慌てる綾乃をよそに冷静な声で

「問題ないみたいね、行くわよ」

武装を纏った小冬達は玖由を追いかけた。入り口に入る瞬間一瞬何処かを見た事に気づいた綾乃だったが見渡してもなにも確認できず、置いていかれないように建物に侵入した。

その様子を見ていた全身を黒いマントで覆った人物が姿を表す。

「危ない姿を見られる所でした…やはりあの子には気をつけないといけませんね…」

そう呟き玖由達と同じ入り口から建物内に入った。

「なにも…見えませんね…」

明かりを付けるのは良くないという玖由の判断により暗闇の中を感覚頼りに進んでいた。すると目の前の扉が玖由達の道を阻んだ。

「ここを開けないと進めないみたいね」

両手に拳銃を手に音を立てないように扉を通れる最低限まで開け侵入する。するとそこは巨大な空間になっておりその中心で一人の人物を囲むように祈っていた。

「さあ、祈れ神々の災いから守って下さる事を!」

「神々の災い…?」

「やつら五神は人間を支配し自由を奪おうとしている、我々は奴らを殺し人間の自由を取り戻す、そこに居る方々もその為に来たのでは無いのか?」

「「!?」」

「バレてる!?」

「落ち着いて」

そう動揺する綾乃達を落ち着かせ玖由は集団の前に姿を見せる。

「申し訳無いけどあなた達の味方になる気は無いわ」

「そうでしたか…五神を宿すお方を連れてこられているのを見て差し出して頂けるものかと思いました」

「ふざけてるの?」

怒気の感じられた問いかけに臆すること無く

「ふざけてな通りませぬ、我々はただ神々を駆逐したいだけでございます」

と冷徹な口調で答え

「我々と敵対する異教徒には死んで頂きましょう」

と、銃を取り出し玖由に向けようとする。しかしその時には玖由の姿は目の前に迫っていた。

慌てて銃を突きつけようとするが玖由は腕に潜ませていたワイヤーを放ち銃を奪う。さらに腹部に拳を打ち込み吹き飛ばす。

「残念だけど死ぬのはあなた達」

と玖由は次々に自分の体格の倍以上ある者達を倒していく。

「見てられないわ!」

綾乃は飛び出し黒ずくめの者達を倒す。

「私は玖由みたいに甘くないですよ」

葵は銃口をそれらに向ける。そして銃を横に振りながら引き金を引き銃弾をばらまく。その銃弾は吸い込まれるように肩を撃ち抜いていく。

「すごい…」

「元々対人戦が主だったらしいですから」

「ほぇ……」

戦い慣れた玖由達を見て小冬は感嘆の声を出す。

黒ずくめの集団はそんな松根と小冬の元に襲いかかろうとしていたが

「甘いです!」

張り巡らしていたワイヤーが放たれ集団を捉える。そしてワイヤーに電気が流れ捉えられた者達は気絶する。

「なんだか…申し訳無いです…皆さんにこんなに手伝って貰って…」

「問題ないわ」

玖由は集団の最後の一人をあっさりと倒しながら答える。

「五神を殺そうとしているという事は必然的に憐斗達の身も危ないわ、だから利害が一緒だから」

と、玖由は残った教皇を見る。

「降参する?」

脅迫するような口調と鋭い視線を向けながら問いかける。

「降参?誰がするのですか?」

笑いながら答える教皇の姿に綾乃は

「あんた達の事!これ以上京也達に手出しするならここで倒す…いや殺す」

「良いでしょうなら私も全力で異教徒達を浄化して差し上げます」

「…っ!?」

玖由は全員を違う方向へ突き飛ばす。間髪入れずに玖由自身も大きく上に飛び上がり天井の鉄骨に向けてワイヤーを射出し巻き付ける。同時にワイヤーを巻き取り身体を更に上昇させる。すると玖由達が元いた場所から地面から巨大な尖った口が現れ地面を噛み砕き飲み込む。

「行け!ハザードアルマっ!」

「ハザードアルマ!?」

ハザードアルマと呼ばれた巨大な物体は地中から飛び出し地上に居る綾乃達に飛びかかる。

「っ!?」

「やらせないっ」

飛び降りつつバルキュリシステムを展開し強化された蹴りをハザードアルマに打ち込む。ハザードアルマは大口を開いたまま地面に叩きつけられる。しかしハザードアルマの身体から手が伸び玖由の足を掴む。

「しまった!?」

その手は玖由を軽々と振り回し壁に投げ飛ばした。壁に打ち付けられる直前に瑞鶴が装甲を玖由の背中に展開し直撃を防ぐがダメージまでは軽減が出来ず地面に倒れた玖由は起き上がる事が出来なかった。

「よくもっ…玖由を!」

真っ先に綾乃は飛び出し巨大なアルマに砲を向ける。そんな綾乃を捉え手は綾乃に襲いかかる。それを軽々とかわし距離を縮め

「不意打ちじゃなきゃ掴まれないわよ!」

手を貫き更に砲弾は勢いを衰えずにアルマの目を撃ち抜く。悲鳴の様な叫びを上げながら血のような黒い液体を撒き散らす。

「…っ!?」

その液体が武装に触れた瞬間、綾乃は身体が重くなるのを感じその場で膝を着いてしまう。

「なに…これ…」

更に息苦しさを感じるようになった瞬間、カチが武装を強制的に解除する。同時に苦しさが消え身体が楽になる。

「カチ大丈夫!?」

「大丈夫…だけど…この力は…」

「それがハザードアルマの最大の特徴!対アームズの為に作り出された呪いの力!」

「そういう事でしたか…わざわざ解説どうもありがとうございますっ!」

葵、松根、小冬はハザードアルマを囲むように立ち回り狙いを定められないように動く。

「せーのーっ!」

葵の合図と同時に3人はミサイル・魚雷をハザードアルマにめり込ませる。更に視線でタイミングを合わせ起爆させる。ハザードアルマは体制を崩し倒れる。しかし同時に3人の影から手が伸び武装を掴む。

「なっ…!?」

「しまった!」

「…なにこれっ!」

武装にヒビが入り破損する。更に3人は四方に投げ飛ばされる。

「なに…これ…」

起き上がりハザードアルマは葵に視点を向ける。

「私ですか!?」

狙いが自分と分かり起き上がろうとするがダメージが残る身体は思うように動かず迫り来る巨体を見上げる事しか出来なかった。

「…っ!」

死の宣告を目の前にし覚悟をした瞬間、光がハザードアルマの頭を貫き衝撃波が巨大を宙に浮かせた。

「まにあったわね…」

銃を構えた玖由は銃のレバーを引きながら呟く。

「その銃は…」

「前に侵入した場所で設計図を見つけたから作ったの陽電子銃よ、ただ…1発打つのに180秒チャージが必要なのが欠点ね」

と陽電子銃を仕舞い葵の元に駆け寄る。そして起き上がるアルマを見て玖由は小さく舌打ちをした。

「まだ倒せないなんて…今の状態だと3分も持つかな…」

「どうするのよ!」

玖由は打開策を考えようとするがその暇を与えないようにハザードアルマは攻撃しようと大口を開け飛びかかる。

「…っ!」

バルキュリーシステムを起動させ跳躍力を上げ葵を抱えながらかわす。しかし巨体をくねらせ軌道を変え壁を蹴り玖由を追撃する。

「そんな事が…!?」

空中では軌道を変えられない玖由は目の前から向かってくる口をかわす手段が無かった。葵は翼を広げ回避しようと試みるが破損した武装では思うような動きが取れずふらふらとした飛行をする。

「どうしよう玖由!?」

「に!?」

「回避まにあいそうに無いです!」

「分かってるわ!」

(こうなったら)

ツッコミを入れる玖由は腕のバルキュリーシステムを起動させ葵を投げ飛ばし葵を口の範囲から出す。しかし自身の犠牲は覚悟する。その時

頭上から結晶で形成された刃が次々にハザードアルマに突き刺さる。絶叫するアルマに構わず振り続ける刃は遂にハザードアルマを絶命させる。

「間に合った…で良いのかな」

姿を現した結彩はそう言い笑みを玖由達に向けた。

「あとは私達がなんとかするわ」

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