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13話 Memory Ⅲ

「で、なんでうちなの?」

4人は加奈の営む喫茶店の一室に居た。そしてそこの店主である加奈が不満そうな声で問いかけた。

「安全だからね」

「そうなの?」

全身の血を拭い玖由に質問をする。

「ここは完全に防音だしそれにマチルダも居るからね」

(あの子か…)

マチルダが誰かはすぐ理解出来た。血を拭く用のタオル等、全て準備をしてくれたので印象に残っていたのだった。

「話を戻しましょうか、京也くんその右目はいつから?」

「…一昨日の夜ぐらいです」

「一昨日の夜って!」

「私達が結彩と出会った日と一緒ね…流石に偶然か通じるような事じゃないというわけか…」

(あの子の異変が私と同時…そしてあの目と力…)

「「まさか!」」

玖由と声が重なる。恐らく考えは同じだと感じ玖由に譲る。

「長く言うのは好きじゃないから結論から言うけど、恐らく二人の力は元々一つだったんじゃないかな」

やはり同じ考えをしていた玖由は京也を見た。

「何か心当たり無い?」

「…特には思い当たらないです」

玖由は一瞬険しい表情をしたように見えたがすぐに

「まぁ良いわ、色々理解したから」

先程の一連の会話で何を理解したのか分からなかったが、その気持ちを代弁するように綾乃が

「理解って…何を?」

と玖由に問いかけた。しかし玖由は

「色々…」

と言う言葉のみでそれ以上なにも言わなかった。

玖由は部屋から出ようとドアの取っ手に手をかけるがなにかを感じたのかそのまま止まる。そう思った瞬間玖由は後ろに素早く下がる。同時に扉が勢い良く開き1人の少女が姿を見せる。

「居た!兄さん!」

京也を見つけた少女は飛びつく。

「こ…小冬!?」

「小冬ちゃん!?」

結彩と京也は少女の名前を呼び驚いた声を出した。

「束縛プレイでもされていやらし…痛い目にあってるのかと思ってこうふ…心配したんだから!」

短めの髪におっとりとした雰囲気の可愛らしい美少女から放たれる隠しきれていない言葉に困惑しながらも

「こ…この子は?」

「あ、あぁ…この子は」

木佐(きさ)小冬(こふゆ)です、よろしくお願いします」

ぺこりとお辞儀をする。

「小冬ちゃん…よくここが分かったわね…」

「家に帰ったら荒らされてて兄さんの姿が無かったので、防犯カメラをハッキングして兄さんの後を付けてたらここに辿り着きました、あとは匂いですね!兄さんの独特の匂いです!」

「そんな人が臭うみたいな言い方するなよ…」

京也が呆れた表情で呟く。

「ねぇ…ちょっと待って聞き捨てならないことが聞こえたんだけど防犯カメラをハッキングした…って言ったかしら…?」

「え?、言いましたよ?」

玖由の質問に当たり前のように答える小冬。その様子に玖由は『まじか…』と言いたげな表情で頭を抑える。

「えっと…あなたは確か椎名玖由先輩ですよね?」

玖由は無言で頷く。

「よろしくお願いします先輩、先輩は私と同じ雰囲気がします、仲良くなれそうです!」

「えっ!?…あぁ…よろしくね」

『同じ雰囲気とは…』と思いながらも玖由は小冬にそう言った。

「兄さんも見つけた事だし後はあんな事をしてくれた奴らに制裁を与えないと…」

「奴らって?」

京也は小冬の発言に疑問を持ち尋ねる。

「家に襲ってきた奴らだよ、ワーストっていう集団らしい」

「「ワースト!?」」

綾乃と玖由はその名前を聞き小冬に詰め寄る。

「今、ワーストって言ったよね!?」

「詳しく教えて貰えるかな?」

二人に詰め寄られ小冬は慌てた表情をするがすぐに顔を赤らめ。

「同性に攻められるのも悪くないですね」

と両頬に両手を当て身体をくねらせらる。その様子を見て京也が小冬の頭を軽く叩く。スイッチの入っていた小冬は我に返りコホンと一息を付き口を開く。

「兄さんを探すしていた時に防犯カメラに写っていたのでついでに後を追っていたら…」

「見つけたのね…」

「でもそれがどうしてワーストだって分かったの?」

「ワーストの紋章って知ってますか?」

と鞄からスケッチブックと鉛筆を取り出す。

「なんでそんなものを…」

「スケブど鉛筆は常備です」

そう答えながら紋章を描く。

女性が剣のような物に突き刺され炎が包みこもうとしているような紋章だった。

絵の上手い小冬の絵は妙にリアルで生々しいものだった。

「これを手首に刺青をしてるんです、実際に確認したので間違いないです」

「実際にって…」

「ワーストの人を一人とっ捕まえてちょっと脅したらすぐに色自白してくれました」

「ちょっと…なのか?」

京也は小冬に尋ねた。

「うん、ちょっとトラウマレベルの事をしただけだよ」

この事を平然と話す小冬に少し恐怖を感じたがその恐怖が消える様な笑顔を見せる。

「小冬ちゃんって…MなのSなの?」

ずっと気になっていたのか玖由は綾乃に尋ねた。

「えっと…」

「両刀ですっ!」

回答に困っていた綾乃の代わりに小冬本人が自信満々に答える。

「はぁ…」

呆れているのが伝わってくる京也のため息を聞き苦笑いを浮かべた。

「それで…小冬ちゃんは襲撃に行くのよね?」

「はい、兄さんを襲うなんて…仕返ししないと気が済みません!」

「なら私も行くわ、戦力は少しでも多い方が良いでしょ?」

「本当ですか!?」

「ね?」

と玖由は綾乃を見る。

「やっぱり私もよね…」

「俺も行く」

「駄目よ!」

玖由が即答で反対する。

「俺のせいでみんなを巻き込んで自分は何もしないなんて出来ない!」

「それでも武装を持たない君を戦場に連れて行けない!無駄死にしたいの!?」

玖由は厳しい言葉を京也に突きつける。その言葉に京也は言い返す言葉を無くす。

当然玖由も自分の放った言葉がどれだけ京也を傷つけたか理解していた。それでも京也を戦わせない為には仕方ないと考えていた。

「……っ」

「行くわよ…」

玖由は綾乃と小冬を連れて部屋を出ていく。

去り際に加奈とすれ違った玖由は何かを渡し店を出た。

店を出て綾乃は玖由に

「さっきのは…ちょっと言い過ぎじゃないの?」

と言う。

「大丈夫よ、あの子なら」

と玖由は答え笑みを浮かべる。その意味が理解出来なった二人はお互い顔を見合わせた。

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