表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/73

12話 Memory Ⅱ

「ここは…」

目が覚めても広がる暗闇の中に私は居た。

「こわい…いや…だれか…だれかっ…」

逃げようとするがなにかに拘束され身動きが取れない

「いや…おねがい…いやっ…」

ーーーーー

「っ……!?」

悪夢から覚め起き上がり額の汗を拭い、周りを見る。そして隣で寝る少女…玖由が視界に写る。

「ん…?」

袖を掴まれていることに気付いた。

「ゆあ…行かないで…」

「ねごと…やっぱり私のしらない私がいるんだね…」

不安な感覚に襲われたが玖由が結彩の手を握る。

「!?」

「結彩は1人じゃないから…」

うっすらと目を開け寝ぼけながらも玖由は結彩にそう語りかけ再び眠る。

「玖由…ありがとうね」

結彩は玖由の頭を優しく撫で再び横になり眠る。

『全く…玖由ってばいつもは隠してるのに本当は甘えたがりやなんだから…それが可愛いんだけど』

結晶の中から2人をみていた瑞鶴は微笑ましそうに呟いた。

ー翌朝ー

瑞鶴から昨夜玖由がした事を聞き恥ずかしくなり顔を赤らめていた。

「私が…そんな事を…!?」

「可愛かったわよ」

「そんな事いわないでよ!」

「2人とも…おはよう」

目を覚ました結彩は2人に声を掛ける。

「ねぇ!結彩!昨夜何があったか覚えてる?」

「えっと…」

顔を赤らめ必死に問い詰める玖由の姿を見て戸惑いながら

「お…おぼえてない…かな」

と誤魔化すが当然玖由にあっさりと見破られ

「あーっ…やっぱり覚えてるよね」

布団に突っ伏す玖由を見て結彩は慌てる。

「朝から賑やかなんだから」

と部屋の扉を開けた蒼嵐は玖由と結彩の様子を見て驚いた表情をするが安心したように笑みを浮かべた。

「よかった…」

ーーーーー

「絶対言わないでよ」

「はいはい」

玖由と二人で憐斗の基地の中を案内すれば記憶を取り戻す手掛かりになるかも知れないという提案により基地内を回っていた。これで記憶が戻るとは思えないが憐斗や玖由達がどんな事をしてでも助けようとしてくれていることが嬉しく感じた。

「まずは、工廠かな」

「工…廠…?」

「えぇ、対アルマ用装備や兵器の製造をしてるの」

「あら玖由じゃない」

声をかけられた玖由は声の主を見る。

露と相棒のクリーク、明石だった。

「今日はどうしたの?」

「上井さんこんにちは、今日は結彩に基地を案内してるんです」

「結彩…本当にあの結彩ですか!?」

「あの…と言われてもこのわたししかしらなくて…」

戸惑いながら玖由に助けを求める。その視線を見て

「結彩…今までの記憶がなくて…」

代わりに玖由がそう答えてくれた。

「そうなんだ…私達に出来ることがあれば言ってね」

「この人は工廠の責任者の上井(かみい)葉月(はづき)さんそして相棒の明石」

「よ、よろしくお願いします」

2人にそう挨拶する。すると明石は玖由に小声で囁く。

「ありがとう」

そう答えて工廠を出ていく。

「次は…ドッグね」

「ドッグ?」

「以前は結彩ドッグの常連だったんだから」

「あら!玖由じゃなーい!」

後ろから抱きつかれた玖由はいつもの事のように

「やめて下さい!千陽さん…って」

そう言い千陽を振り返るが、その姿に驚く。

「どうしたんですか!?その姿」

「いやぁ、最近のアルマやたら強くてやられちゃった…」

「やられちゃったで済むような傷じゃないでしょ…」

「あなた達もドッグに行くんでしょ?私も一緒に行くわ」

「あの方は?」

小声で玖由に尋ねる。

「この基地での大隊長の月島千陽さんと…」

そこまで言い玖由は千陽に尋ねる。

「そう言えばあの人は?」

「あぁ…先にドッグに居るんじゃないかな」

「あの人?」

「千陽さんの相棒『オイ』っていうんだけどあまり姿を見る事が無いの」

「気難しいからね~まぁ見かけたらよろしくね~」

千陽との会話の間にドッグの入り口まで到着した。

「じゃあまたね~」

と再び玖由に抱きつく。

「傷が痛みますよ!早く行ってください!」

追い払うように玖由は言い医務室に連れて行った。

「お待たせ…」

「大変ね」

「日常茶飯事だから慣れっこよ」

「日常…そうね」

玖由に連れられ歩いて行くと側面がガラス張りの通路に出る。

「ここで…」

と言いかけた瞬間に全身に締め付けられるような激しい痛みと苦しさを感じた。

「結彩…!」

「近づ…かないでっ!」

少しでも気を抜けば玖由を傷つけてしまうと思い近づかないように叫ぶ。

「でも…」

「っ…あぁっ…ぐぁ…っ」

この場に居ては不味いと感じドッグを飛び出し森の中に飛び込む。

「あぐっ…かはっ…っ!」

血を吐き出し自分の身の状態を理解する。血液が膨張し皮膚を切り流れていた。頭から紅色に染まった左目だけで無く両目から、口から、両腕から、胸部から、腹部から、両足から、次々に出血をしていた。

痛い…痛い…痛い痛い痛い。身体の内側から引き裂かれる激痛。少しでも気を抜けば飲み込まれてしまう苦しさ。

(ま…ずい…わ…ね…一か…八か…)

耐えきれなくなる苦痛に命の危険を感じ賭けに出た。溢れる力を右手に集中させる。すると紅い塊が創造される。塊が大きくなるに連れ自我を保つ力が安定する。その瞬間を見計らい塊を地面に埋め込むように押し付けた。

「はぁぁぁっ!」

衝撃で塊は砕け中に固まっていたエネルギーが衝撃波として地面に広がる。すると自身を中心に大きな穴が広がり周りの木々をなぎ倒す。エネルギーの放出が止まり安堵のため息と共に地面に座り込んだ。

「何とか…なったわね…」

激しい痛みも苦しさも消え出血も止まっていた。

「すっきりした…みたいに身体が楽…」

「結彩っ!」

追いついた玖由が血相を変えて結彩に飛びつく。

「大丈夫!?痛いところ無い!?」

華奢な身体の割に力の強い玖由に

「うーん…玖由の力がいたい…かな」

そう言うと慌てて離す。

「ありがと、心配してくれて、でももう大丈夫よどこも痛くないから」

「何があったの…?」

玖由は自身の身に起きた事に説明を求めてくる。しかし、何が起きたのか分からなかった。

「ごめん…私にも分からないの…」

「そうなのね」

「……っ!?」

気配を感じ咄嗟に暴走した力を使い目の前に結晶の盾を創り出す。同時にその盾を貫通し鋭く尖った結晶が突き刺さる。

「あの子!待って結彩!」

反撃しようとするのを制し玖由は盾の外に出る。

すると攻撃を仕掛けた人物だけでなくその隣に居た少女も驚いた声で玖由の名前を呼んだ。

「玖由先輩…」

「あなた達何してるのよ…」

「それは…こっちの台詞なんだけど玖由…」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ