失敗
焔は、職員室へときていた。
「貴方が辰巳焔君ね?私は、貴方の担任になる伊吹 龍可よ。」
どうやらこの女性が焔の担任になるらしい。20歳前後ほどのショートボブの女性だ。
「はい。今日からこの学園に編入する辰巳焔です。宜しくお願いします!」
最初の挨拶が肝心と、丁寧にお辞儀をする。
「元気でよろしい!早速教室へ行きましょうか。」
龍可に連れられ焔は、教室へと案内される。しかし焔はどうしても聞きたいことがあり、移動中に龍可へと疑問を問いかける。
「あの〜ここに来る途中に、由良君っていう同学年の生徒に会ったんですけど、彼ってどんな人物なんですかね?。」
「え?どうしてそんなことを聞くの?」
「いやぁここに来る最中道に迷ってしまって…その時に案内してもらったので。」
怪しまれたか?
心の中で内心焦ったが、なるべく表情に出ないように心がける。
「そっかー。やっぱり彼は出来た人間だねー。」
出来た人間?
「それってどうゆう?」
「彼はこの学園の中でもとても有名だからねー。文武両道、才色兼備、おまけに聖人のような人の良さ学園の皆んなが認める完璧人間。まさに我が校の期待の星ってところかな。」
「なるほど。」
そんな完璧な人間なんているものか?いたとしてもそれは…
『普通に考えればそんな完璧な人間なんて存在するはずがない。しかもあれほど匂いが強くなってると来たもんだ相当のストレスだろうよ。』
そうなるよなぁ。とりあえず本人にも色々と聞かないとな。
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「ふぅ。これで資料のまとめは終わりっと。」
心は、机の上にあった大量の資料を片付け終え一息ついていた。
どう見ても一人でこなすような仕事量ではないことから、学園の希望と呼ばれる所以なのだろう。
そもそも学級委員と、生徒会役員を同時にこなすような役職でも無いのだが主席での入学、助っ人で入ったサッカー部、テニス部の2つを全国大会出場にまでの仕上げたこと更には学園の先生方からの絶大な信頼を得ていた心は、出来て当然とゆう認識で大体の面倒ごとを押し付けられる様になっていた。
実際生徒会役員に推薦されられていなければ、更に部活を兼任されられていたことだろう。
まったく。何故、こうも俺ばかりに仕事が押し付けられるんだ。
実際生徒会でまともに仕事をするのなんて僕と会長ぐらいじゃないか。
みんな自分の期待を押し付けるだけで何もしないし、何も知らない癖に…
胸にチクリとした痛みがはしる。
痛っ。
またか…最近ずっとだ。病院に行くついでに僕も検診を受けた方がいいのかもしれないな。ここのところ部活や、生徒会の仕事、それに自分の勉強時間も取らないといけないから睡眠時間も減って来てるし。
「っと。そろそろホームルームが始まるな。」
まとめた資料を棚へと戻し自分のクラスへと向かう。
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「えーっと。ホームルーム始めまーす。まずは転校生の紹介からでーす。はいってきていいよー。」
教室内がざわつく。
「転校生だってさー。可愛い子かな?」
「イケメンだといいなぁ〜」
転校生っていうと今朝にあったやつかうちのクラスとは。
それにしても他の奴らは転校生に何を期待してるんだ?
どうせ一週間もすれば飽きる癖に。まぁどうでもいいけど。
龍可に呼ばれて赤髪の生徒が教室へと入ってくる。
「今日からこの学園に転校してきました、辰巳焔です。好きな食べ物はラーメン、得意なことはスポーツ全般。趣味はキーホルダー集めです。気軽にホムホムとかたっつーとか好きな風に呼んでね♪」
教室が静まり返る。
「なんだよ男じゃん。」
「え?何今の、寒っ!」
…勇気あると言うか、馬鹿と言うかまぁこの自己紹介が通るのは中学生ぐらいだろう。
こうして辰巳焔は、転校初日にして灰色の学園生活が約束されたのだった。
「あれ?」