転生と乙女ゲーム
可愛いは正義というならば、性別の垣根すら越えて見せよ!
と思い立ったが吉日。恋愛モノなんて書いたことないし、練習ついでに書いて見よう。後先考えずに。
結果生まれた我が小説。続くか知らぬが興味のある方は是非に。
(因みに作者は乙女ゲームをやったことはない。)
「恋愛美麗譚」
それは日本の文化「和」と中世をごっちゃ混ぜにした割と適当な世界観を舞台にした乙女ゲームだ。基本的に男を魅せるためにキャラにこそ力を入れているがその分、背景が雑な作りのゲーム。恋愛メインでたまにシリアス。女性をときめかせるためだけに生み出されたようなその代物はしかし女性に大いに受けた。何せ、キャラには力を入れているという言葉を裏切らないほどに有名ライターにキャラを書かせ、イケメン声優と話題の男性声優の方々に声を吹き込ませたそれはもう大変な人気を博した。
かくいう俺の姉もものの見事に嵌り込み、パシリの俺はその姉の命令で今まさに「恋愛美麗譚」のファンディスクとやらを買いに秋葉原に来ていた。命令に対して自分で買えよと言い返したものの、そこは弟。姉弟なら分かるだろうが、基本的に弟は姉に逆らえないのである。
「乙女ゲー発売日に態々並んで買わされるとは……お蔭でその手の趣味の人に間違いられるわ、からかわれるわ……女なんてギャルゲーで十分だ、ホントに」
綺麗な少女など所詮、空想上の存在なのか。年上の乙女ゲーを買いに来ていた方々に散々弄られた俺はものの見事に荒んでいた。つーか、俺を勝手に腐らせるな。百歩譲って男の娘はセーフかもしれないが、美男子、アレは無い。現実にあんな台詞を言う男はいねえ。ある意味ギャルゲー以上に美化しすぎている。てか生理的に受け付けない。
「イケメン死すべき慈悲は無い」
そんなネタのような言葉を口にした瞬間、オタクやそれを見学しに来た外国人で賑わう秋葉に悲鳴が響き渡った。交通制限のされた道路に突っ込む一台の車両、止めようと手を振る警備員、近くに居た歩行者、道路で記念撮影中の外国人、道路のガードレールで屯って「戦利品」を見せ合うオタクたち。それらを一切問わず平等に吹き飛ばし、撥ねながら暴走を続ける車両……それは、
「……俺、イケメンじゃないと思うんだが」
信号待ちをしていた俺に迫る黒塗りのワゴン車。最早距離は僅か十メートルで、回避しようにも暴走するワゴン車の速度は人の足を大きく凌駕する。まあ、なんだ、とどのつまり。もう逃げようがないということである。悲鳴を上げるには遅く、ならば涙を流すには死へ向かっている実感が余りにも薄い。だからこそ最後の瞬間まで俺は冷静に俺に死を齎すワゴン車を見ていることが出来たのだろうか。
ふと、ワゴン車を運転する運転手と目が合う。その目は充血しており、とても正気には見えない。硝子越しゆえ見難いが顔色が悪いようにも思える。恐らく麻薬か何かをやってラリっているのだろう。ああ、ならばこの暴走劇にも納得がいく。
「……せっかく買ったのに。勿体無いことしたな」
先ほど手に入れた乙女ゲームの入った袋を見下ろして俺はため息を一つ。最後に痛くないといいなと思いながら俺は全身を貫く衝撃と身体の心から冷えていく感覚の中、闇へと落ちていった。
☆
―――そして……
「あ……ぅ、す、好きですっ!」
言葉に託した思いが先行したせいか、若干の裏声気味に目の前の生徒は俺・福島祐樹あらため、フィート・クラウゼル=シックザールに胸に秘めた思いの丈を告白する。
背丈の差で俺を見上げる形になっている相手は問答無用に美人であった。腰まで伸びる黒髪に裏返った声での告白に後悔しているのか見上げる赤い綺麗な瞳は若干潤んでいる。白磁の如き白い染み一つ無い肌は一世一代の告白に高揚した彼女を表すように紅く火照っている。
百人が百人、口を揃えて言うだろう。美少女であると……だが、それは事情を知らぬものが抱く感想である。対する俺は口をヒクつかせ、頭痛を覚え、背に冷たい汗を流している。
何故か、愚問である。目の前の超が着くような大和撫子の如き美人の性別は、見た目に反して「男」である。つまり、同姓。女の子のような男……それを俺が半分身を浸した業界では「男の娘」と言う。
―――乙女ゲームに転生して十六年。俺氏、男の娘に告られた件。