初めての森
昼ごはんを食べ終えてから森に出る準備をすすめる。
そういえば解体用のナイフとかは残ってるけど剣とか買うの忘れてた。
「まあそれなら野草とかだけでも採ってくればいいかしらね」
なんか本当にあたしって計画性ないな。本当に勇者だったのか自分で不安になってきた。
準備を終わらせて外にでると言っておいたとおりにリリアちゃんが待機してる。
「本当に行くの? この森を?」
「この森ってそんなにやばいの?」
「いや、私もこのあの街で育ったわけじゃないからしらないけど。あきらかに魔力が濃いことくらいはわかるわよ。ここで暮らしていこうと思うのがまず驚きなんだからね」
「そうだったんだ」
女神様はあたしとそんな場所に転生させたんだ。まあ、多分人と頻繁に会わなくてもいいようにって配慮かもしれないし深くは考えないでおこう。
「まあ大丈夫よ! あたしはここで長年暮らしてるんだからね!」
「長年って言っても年齢だけで見れば私より数個上ってくらいよね?」
そういえば、あたしのこと全く教えてなかった。でも、まあ年寄り扱いされたり今以上に警戒させるくらいなら誤解したままでいいのかも。
「まあ、とにかく大丈夫なのよ!」
あたしはそう言ってとりあえず残ってた護身に使えそうな武器と野草を入れられる袋と手渡す。
「それじゃあ、いくわよ」
「わかったわよ。置いてかないでねっ」
「そんなことしないから安心しなさい」
あたしが先導しながら家を出発して森の中へと出発した。
****
この森の中に生息している生物で目立つのは鹿と熊に小動物が数種類だ。ただ、たまに妙に凶暴化したり変異種がいたりもしたけど、魔力が濃いって皆言ってるしそれが原因だろう。
今まで全くそんなこと知らないで対処していた。
その他に魔物がちらほら見受けられる時がある。
あたしが見たことがあるのは小型のスライムと角が頭についたウサギの見た目のホーンラビットなどだ。こっちも現状は対処できている。
そして手に入れられるのは野草と木の実だ。たまに熊が家の近くに出て処理した時に巣を見つけて何処かからとってきたであろうものを頂いたりするときもある。
ただ、今回はリリアちゃんもいるし武器もないから野草と木の実に絞って集めていこう。それのついでに森に慣れていってくれればいいな。
あたしはひとまず森の中を進んでいって野草が固まっている場所までやってきた。
リリアちゃんもここまではどうにかついてこれている。
「えっと、これが毒がないからリリアちゃんは集めて。この辺にいっぱいあるから」
「わかったわ」
「あと、あたしが見える範囲に絶対いてね」
「わ、わかった」
さすがに視線の外に行かれると、あたしも対処できなくなる。
あたしはリリアちゃんにはわかりやすくて形の似てる毒草もない食べられる野草を集めてもらう。
そしてあたしは、ちょっとわかりにくかったり毒草と間違えそうだけど美味しい野草を集める。
「んー!」
あたしが色々と移動しながら集めていると後ろで可愛い声が聞こえて振り返って見てみる。
そこには畑の時と同じように尻もちついてるリリアちゃん。
「根っこ全部引っこ抜かなくても大丈夫よ。食べるの茎と葉っぱだから」
「えっ、そうなの!?」
「うん」
最初に教えなかったのが悪かったけど、わからなかったか。
教えるとさすがに尻もちつくようなことはなくなったみたいだけれど、慣れない作業を午前からしてたのもあって腰は痛そうだ。たまに背伸びをして体を伸ばす事が増えた。
あたしも最初はそうだった。
リリアちゃんの行動をみて少し懐かしさがこみ上げながら作業を続けていく。
少ししてある程度野草をとった所で場所を変える。
「リリアちゃーん! 次の所行くわよ」
「まだ残ってるけど」
「全部取ったら育たなくなるから。まあそれはそこら中に生えてるけどね。次は木の実取りに行くわ」
あたしの説明で納得してくれて特に事故もなく移動できた。
森の更に奥にいくと、自然なのか誰かが植えたのかはわからないけれど木の実が取れる木が集まってる場所がある。
甘みの強い木の実と酸っぱさの強い木の実があるから、結構お世話になっている。
「この時期だと、赤い実のほうはまだ育ってないの。だから、黄緑の実は取らないようにして。それで、黄色の実は今は旬の木の実だからとっていいわ」
「こっちは、とっちゃっていいの?」
「種は実の中にはいってるから、あとで植えてあげればいいわ」
「わかった!」
木の実の収穫はさすがにできるらしい。高い位置の場合に木に登るのに苦戦してたけどどうにかなった。
ただ、これは梯子を作ってあげるのも必要かな。
確認すると2人で食べるには十分な量の食材が袋に中を埋めてくれている。
「それじゃあ、リリアちゃん。帰ろっか」
「いつのまにか日落ちてるのね」
「そうね。そろそろ動物も活発になる子が多いから離れないでね」
「う、うん」
空がオレンジ色に染まった頃、あたしたちは家に向かって再び移動し始めた。