ギルドと軍
他には特に用事はなかった。
ただ、気づけばあたしはギルドの前に立っている。
もはや、癖みたいになってるわね。依頼を受けるわけでもないのに、ギルドに来ること結構多いのよね。
「アンジュさん、入口前に突っ立ってどうしたんだ?」
あたしが中に理由もなく入るか悩んでいると、後ろから最近は聞き慣れた声でそうやって声をかけられる。
後ろを振り向くとハンツが立っていた。依頼帰りといった感じだ。
「いや、特に今日は待ち合わせも無いのに来ちゃったから、どうしようか悩んでたのよ」
「わけわかんねえな。別に依頼受けなくてもここで飯だけとかだべりにきてる奴らも多いぞ」
「まあそうなんだけど……そうね」
あたしはハンツに言われて納得して中へと足を踏み入れた。
中に入るといつもどおりの賑わいを見せていたが、受付に珍しい人たちを見つける。
「あれって、軍の鎧よね?」
「だな。ギルドに軍からの依頼ってのはかなり久しぶりだが」
「そもそも、軍からギルドへの依頼ってどんなのがあるの?」
勇者時代は勇者だからという理由で頼まれごとだのも多かったせいで、ギルドの手続きと軍の関係は詳しくない。大陸も違うからなおさらわからない。
「まあ、戦争だの激しい戦いだとか魔物だのが大繁殖しただので人手不足のときは、細かい依頼だとか、魔物退治をギルドに依頼して冒険者に任せるみたいなことはあるな。だが、最近は特にそういう事は聞かないからさっぱり予想がつかねえ」
「たしかに、そんな大きい戦いは起きてないものね」
軍の人たちは依頼を終えたのかあたし達とすれ違うようにしてギルドから出て行った。
「とりあえず、オレは依頼の報告いってくる」
「うん。あたしは……ちょっとさっきのことでも聞いてみようかしらね」
一度ハンツと別れて、さっき軍の人たちが話をしていた受付の女性に話しかけてみる。
「ちょっと、いい?」
「はい。依頼の受注ですか?」
「違うんだけど、さっき軍の人がきてたから。新しい依頼とか何かあったのかなって気になってね」
「依頼ですね。街の中での一部地域の調査です」
「街の中?」
「はい。数箇所あるので」
「そうなのね」
街中の調査なんてそれこそ軍が主導でやったほうが、信頼とかもあってやりやすいと思うけど、ギルドに頼むってことはなにかあるのかしら。
「ちなみに日数は?」
「1日から可能です。ただ、1日の場合は夜の受付業務が終わるまでに報告をいただくことになります」
「そうなのね……ありがとう」
「いえいえ」
あたしは受付を後にして入口付近に戻る。ハンツも報告を終えたみたいで、立っていた。
「なにかわかったか?」
「新しい依頼みたいだけど。なんか、不思議な依頼ね」
「へぇ……暇なら聞かせてくれねえか? 飯でも食べながら」
「……お昼時だしそうね。それじゃあそうしましょうか」
あたしはハンツと一緒に慣れたように2階へと移動した。




